太い足で
いつも前に進んでいた
前に進むつもりで
交互に足踏みしていた
ひとりぼっちで
時には鎖につながれて
足の裏に感じるのは
コンクリートの床ではなく
きっと豊かな故郷の土の記憶
奥深な瞳に映るのは
いつか見た巨大な夕焼けの記憶
あなたが一生に踏んだその数だけ
前に前に進めていたなら
いつか生まれ故郷に到達していただろうか
天に帰った今
その歩数もあなたに帰っていればと思う
仲間には会えた?
鼻で挨拶できた?
あなたに手を振った回数
名前を呼んだ回数
お弁当を食べながら見つめた回数
かわいいねえといった回数だけ
ごめんなさい
あなたが見えなくなった今
その魂がはるかな故郷の
紅に染まる風景の中にあることを願う
(2016年5月26日に死んだ井の頭自然文化園の象のはな子に捧げます)
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