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2016年11月25日16:19

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12・15長門会談で歴史的決着なるか? その前に幾重もの罠が… 合意阻むプーチン「取り巻き」

 下記は、2016.11.24 付の【北方領土 屈辱の交渉史(1)】です。

                      記

 択捉(えとろふ)島、国後(くなしり)島、色丹(しこたん)島、歯舞(はぼまい)群島の島々からなる北方領土は、日本固有の領土でありながら、旧ソ連時代を含め、戦後71年間にわたり、ロシアの実効支配を許してきた。

 「領土問題を解決し、戦後71年を経ても平和条約のない異常な状態に終止符を打ち、日露協力の大きな可能性を開花させる。首脳同士のリーダーシップで交渉を前進させます」

 北方領土問題の解決を「政治家の使命」と公言する首相、安倍晋三は、9月26日の所信表明演説で強い意気込みを示した。

 領土問題は首脳間で解決するしかない。それならば、大統領のウラジーミル・プーチンが強大な政治権力を掌握する今は最大のチャンスだといえる。しかも原油安でロシア経済は低迷しており、ウクライナ問題などで悪化した欧米との関係に改善の兆しは見えない。安倍の目には「千載一遇の好機」だと映った。

 十分なアメは用意した。資源・エネルギー開発、原子力、IT、生産技術−。日本政府が示す8項目の協力プランは、極東開発をロシア発展の中核に据えるプーチンの国家戦略に配慮した豪華なメニューが並ぶ。

 安倍は12月15日に予定される山口県長門市での日露首脳会談で一気に事態を打開したい考えだが、ロシアは一筋縄でいく相手ではない。北方領土をめぐる日露交渉史は、幾度も裏切られ、煮え湯を飲まされてきた歴史でもある。今回の交渉の裏には幾重もの罠(わな)が仕掛けられている。

 ペルーの首都リマで開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)に合わせて、11月19日に行われた15回目は、国際会議中の会談としては異例の1時間10分に及んだ。このうち35分間は安倍、プーチンだけで部屋に籠もった。会談後、安倍は「2人きりで平和条約について腹蔵ない意見交換を行うことができた」と胸を張った。

 ところが、翌20日にいきなり冷や水を浴びせられた。リマで記者会見したプーチンは「北方領土で共同の経済・人道面の活動ができるか、日本側と協議した」と説明した。ロシアの管轄下で共同経済活動を行えば、ロシアの主権を認めることになり、領土問題は棚上げになる。とても日本側がのめる話ではない。

 それだけではない。色丹島、歯舞群島の2島引き渡しを明記した昭和31(1956)年の日ソ共同宣言についても、プーチンは「どのような根拠で、誰の主権の下に置かれ、どのような条件で引き渡すか書かれていない」と言い放った。

 22日にはインタファクス通信が、択捉島と国後島に露軍が地対艦ミサイル「バル」と「バスチオン」を配備したことを報じた。

 このような動きは、プーチンの背後に「決して領土問題で妥協しない」という強硬な勢力がいることを物語る。安倍は自分に言い聞かせるようにこう語った。

 「平和条約は70年間できなかった。そう簡単な課題ではない。道筋は見えてきているが、一歩一歩山を越えていかねばならない。着実に一歩一歩…」

 安倍がなお北方領土問題解決を諦めていないのは、会談を重ねる中で「プーチンには問題を解決したいという思いがある」と確信しているからだ。

 その契機となったのは、5月6日に露ソチで開かれた13回目の首脳会談だった。当時、欧州連合(EU)はウクライナ問題をめぐる対露経済制裁延長を検討しており、安倍の訪露は、欧米の意向に背く行為だった。安倍の誠意と熱意を感じ取ったプーチンは大いに喜び、会談は夕食会を含めると3時間を超えた。

 「領土問題については今までの交渉の停滞を打破し、2人で解決しよう。2国間の視点だけではなく、グローバルな視点を考慮に入れた新しいアプローチが必要ではないか。ぜひこの後は2人きりで話をしようじゃないですか」

 領土問題について安倍がこう切り出すと、プーチンの表情がにわかに険しくなった。日露の同席者は一斉に退席しようと立ち上がった。露外相のセルゲイ・ラブロフだけは強引に居座ろうとしたが、プーチンが手を払い、引き下がらせた。

 安倍、プーチンの膝詰めの会談は35分間。その中身は明かされていないが、会談を終えた2人の表情は晴れやかだった。

 会談に際し、安倍はプーチンに日本製双眼鏡を贈った。「お互いに日露の遠い将来を見渡そう」という思いを込めた。プーチンは「次に会うときは、これでシンゾーを見つけよう」と笑顔で応じた。

 ロシアには領土問題で一切の妥協を許さぬ勢力が少なからずある。外務省と軍はその代表格だといえる。

 中でも外務省は、旧ソ連の独裁者、ヨシフ・スターリンの下で薫陶を受け、30年近く外相を務めたアンドレイ・グロムイコが育て上げた機関だ。国連で拒否権を連発し、「ミスター・ニエット(=NO)」の異名をはせたグロムイコは「領土問題を提案するなら日本に行かない」と言い放ち、北方領土問題でも拒否権を発動し続けた。

 12年にわたり、露外相を務めるラブロフは「グロムイコ学校」の最後の門下生。12月の長門会談についても、ラブロフ率いる露外務省は、領土問題で安倍に主導権を握られぬようさまざまな策謀を巡らしてきた。

 まず、12月16日に都内で開かれる経済フォーラムへのプーチンの出席を早々と決めた。首脳会談は東京で仕切り直し、経済協力を主要テーマに差し替える算段だという。

 これらの日程は日露間で調整中だったにもかかわらず、駐米大使も務めた外務省出身の露大統領補佐官、ユーリー・ウシャコフが11月17日に一方的に発表した。何としても長門での決着を避けたいようだ。

 15日には、経済協力に関するロシア側窓口を務める経済発展相、アレクセイ・ウリュカエフが露当局に巨額収賄容疑で刑事訴追された。プーチンは即座に「信頼の喪失」を理由にウリュカエフを解任した。

 プーチン政権では、対外強硬派のシロビキ(軍や治安・特務機関の出身者など武闘派)がなお主導権を握っており、既得権益を手放すまいと抵抗している。前大統領で現首相のドミートリー・メドベージェフとプーチンの確執も取り沙汰される。これらの権力闘争が複雑に絡み合い、交渉を揺さぶっているのだ。

 プーチンの言葉のブレがこれを如実に物語る。10月27日、プーチンはソチで開かれた国際会議で北方領土交渉について質問を受けるとこう語った。

 「平和条約締結に期限を設けてはならない。それは不可能であり、有害ですらある」

 続けて中国との国境確定に40年を要した例を挙げ、「それは露中が特権的な戦略パートナーと呼べる水準の協力関係を築けたからだ。日露はそのような域に達していない」と語った。

 額面通り受け取れば、長門会談のゼロ回答を事前通告したに等しい。日本側の期待値を下げようとしたのか。それともこちらが本音なのか−。

 北方領土返還交渉は、日露トップ間の合意をロシア側の「取り巻き」に妨害された歴史でもある。

 「あの時、大統領報道官のセルゲイ・ヤストルジェムスキーが隣にいなかったら、あるいは違った展開になっていたのではないか、と今でも思うことがある。惜しい瞬間であった」

 元駐露大使の丹波実(10月7日死去)は、平成10年4月に静岡県伊東市の川奈ホテルで行われた首相(当時)の橋本龍太郎と露初代大統領、ボリス・エリツィンの会談について著書「日露外交秘話」にこう記した。

 会談で橋本は「もし日露の国境線がウルップ島と択捉島の中間線にあることを平和条約に明記するならば、別途合意するまでの当面の間、ロシアの四島支配を認める」と提案した。エリツィンは「おもしろい提案だ」と半ば身を乗り出したが、ここでヤストルジェムスキーが何やら耳打ちするとエリツィンは「持ち帰って検討する」と押し黙ってしまい、その後、提案を拒否してしまった。

 同じようなエピソードは枚挙に暇(いとま)がない。

 平成12年4月29日、首相(当時)の森喜朗は、露サンクトペテルブルクのロシア美術館で、次期大統領への就任を決めていたプーチンと2人きりで会談した。予定の30分を超えると、側近が「時間です」と伝えにきたが、プーチンは「いいと言うまで入ってくるな」と追い返した。

 森の訪露はプーチンの来日を決めることが主眼だったが、続く全体会談でも日程調整は不調に終わった。

 ロシア側は、森が帰国するまでに回答すると約束したが、その後の共同記者会見でプーチンは「訪日時期は両国外務省で決める」と語った。直前に差し出された露外務省のメモをそのまま読み上げたのだ。

 その夜、森とプーチンはアイスホッケーの世界選手権を一緒に観戦した。森は試合の休憩中にプーチンをつかまえ、来日日程を確約させようとしたが、その度に誰かが割り込み、動きを封じられた。

 「どいてくれ、僕はウラジーミルと話があるんだ」。森は見知らぬロシア人を半ば恫喝(どうかつ)してプーチンに近づき、こう言った。

 「あなたは本当は日本に来たいんだけど周りが許さないんだろう。それじゃあ昔のソ連のやり方だ。今はロシアじゃないか。それではいけない」

 森の直談判を受け、プーチンは、9月の訪米前後に訪日したいという考えを明かし、「それでは失礼にならないか」と逆に尋ねてきた。森は「それは一向に構わない」と笑顔で応じた。

 果たしてプーチンは9月3日、大統領専用機で羽田空港に降り立ち、出迎えた森と握手を交わした。その後もプーチンと親交を深めてきた森はこう断じる。

 「プーチンは昔かたぎの日本人のようだ。柔道をやっているからなのかな。気難しいところもあるが、約束を守る男だ」(敬称略)
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 http://www.sankei.com/premium/news/161124/prm1611240005-n1.html
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