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2016年10月29日14:23

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遺伝子オンの生き方2・デイサイエンスとナイトサイエンス


10月28日の日記に続き「遺伝子オンの生き方」の2回目です。
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1956414885&owner_id=5089039

環境が私を大変身させた
私は40数年前、アメリカの大学に行きました。それまで研究者になることは自分で決めていましたが、周囲で期待されるほど優秀ではなく、日本ではむしろ先輩にバカだ、バカだと言われていました。しかしアメリカに行って環境が変わったことで私は変身したのです。

遺伝子がオンになった
まず給料が10倍になりました。それだけ認められたということが嬉しくて、自信につながりました。

ある環境に巡り合うと、それまで眠っていた遺伝子が「待っていました」と活発に働きだす。それが働きだすと急に人が変わるということがあるものです。よく「心を入れ替える」といいますが、心の変化が、今までとは違った遺伝子を目覚めさせ活性化するのです。スイッチがオンになったのです。

ただ英語は全くだめで、10年後には英語で講義ができるまでにはなりましたが、アメリカの大学では学期が終わると生徒が先生の採点をするのです。生徒の評判が悪いと一流の大学には残れません。私はアメリカ人並みにジョークも言えないし、対抗するにはいい研究をするしかありませんでした。

幸いなことに、ある先生に出会ったことで、高血圧という研究テーマを得、生き返ったのです。

コーエン先生との出会い
それはコーエンという先生で、86年にはノーベル賞も受賞していました。
私はその時、こんなおっさんでもノーベル賞がとれるのか、おれたちでも運がついたらひょっとするととれるぞと夢と希望を与えられました。

今、遺伝子暗号の解明が進み、ノーベル賞を取るような人も一般のおじさんも遺伝子暗号はほとんど変わらないことが分ってきました。1万個に1個くらいしか変わらない。

この1個の遺伝子のスイッチがオンかオフかの違いで、オンにさえできれば、人間の可能性は大きく広がるのです。ではどうしたらスイッチをオンにできるのか、これが主題です。

レニンの遺伝子解読に世界で始めて成功

私はアメリカに10年いたことによって、スイッチがオンになり、生涯の研究テーマとして高血圧の遺伝子を追っかけ始めたのであります。

私はその遺伝子に高血圧の黒幕というあだ名をつけました。なぜ黒幕か。本人は直接手を下さない。ホルモンという手下を使うんです。

後ろであやつっている酵素の正体、これがレニンです。レニンはもともと腎臓にあるのですが、どうも脳にもあるらしい。

ドクター3万5000頭
帰国し筑波大学に赴任した私は、脳レニンの正体を解明するため食肉センターに頼み込み、3万5000頭の牛の脳下垂体を手に入れることができました。

★レニンは血圧を上げる物質として、その存在が知られていました。腎臓がおかしくなると血圧が上がる。腎臓の中にそれをおこす物質があるに違いない、ということで、腎臓をすりつぶし上澄みをとって血管に注射したら、はたして血圧が上がった。そこからその物質は、「腎臓」を意味するレニンと命名されたのです。

★脳には脳下垂体というホルモンなどがいっぱい詰まった袋があります。そこにレニンが多く存在しているとの推定で、牛の脳から取り出すことにしたのです。
研究材料としてレニンは、1ミリグラムは欲しい。そこから逆算するとなんと牛が
3〜4万頭もいるのです。気の遠くなる話で、果たしてそれだけの数が集まるかどうか不安でしたが、ともかくやるしかないという気持ちでした。

★脳下垂体には薄い膜がついています。私たちはまず3万5000頭分の脳下垂体の皮むきから始めました。世界に誇れる仕事ができるからと言って、学生たちに朝早く登校して皮むきを手伝うよう頼んだのです。私の家内も手伝ったのは勿論ですが、このおかげで私はドクター3万5000頭というニックネームをちょうだいすることになりました。本当に世界に誇れる成果が出るかどうかはわからない。しかし私はできると信じていました。

デイサイエンスとナイトサイエンス
科学は客観、理性、理屈の世界といわれます。しかしそれだけではないのです。その結果を出すまでの、過程とか方法といったプロセスが非常に大きな部分を占めているのです。プロセスですから間違いがあったり、不思議な体験があったり、いわば感性とか直感の世界です。

科学にはこのように二つの面があるのです。この論理的な面を昼の(デイ)サイエンス、感性的な面を夜(ナイト)サイエンと呼んでいます。

科学には面白い裏話がいっぱいあって、それが大発見や大発明につながっています。
2002年にノーベル化学賞を受賞した田中耕一さんも、実験中にマトリックス材の金粉にうっかりグリセリンをこぼしてしまったことから新しい発見をしました。捨てるのが惜しいと思い、試しにそれでやってみたところ、思いがけずうまくいったというのです。

江崎玲於奈先生(ノーベル物理学賞受賞者)も大発見や新理論の芽には、全部ナイト・サイエンスがあるといわれています。

昼の科学は結果なんです。この結果が出るまでには、理屈の世界だけではないのです。あるとき誰かに会ったとか、偶然とか、直感としかいえないようなもののひらめきがあったとか、いわば夜の面が必ずといってあるのです。

科学者はまず、ナイト・サイエンスについては語りません。しかし科学にはコインの表裏のように、論理の世界というか、教科書に書いてあるような世界と、表面には出ないが理屈をこえた世界があるのです。

レニンも私は必ずつかまえられると直感し、心を定めました。
その結果、3万5000頭の牛の脳下垂体から、ついに我々はレニンがあるという決定的な証拠を握りました。

当時の筑波大学は世界では名もない大学です。それが世界で初めて脳レニンの純化に成功したのです。」

しかし、3万5000頭から取れたのは僅か0.5�咫�これでは正体の説明はできません。最低でも50�咾呂曚靴い里任后� 大きな壁にぶつかりました。

ちょうどその時です。すごいニュースが飛び込んできたのです。
「大腸菌を使って人のホルモンや酵素を大量に生産できるようになった」というビッグニュースなのです。遺伝子工学の幕開けであります。
 
私は直感的に、人のレニンを大腸菌でつくろうと思い立ちました。遺伝子のことはほとんど知りませんでした。知らないからかえって良かったのです。知っていたら怖くて手を出せなかったでしょう。

しかし、しばらくすると、とんでもないことに手を出したということが分ってきました。
人の酵素を大腸菌でつくるためには、人の遺伝子をとってこなければならなかったんです。これが難しい。そこで、まずネズミのレニンの遺伝子をとることから始め、これに成功しました。遺伝子がとれたということはゴールが見えたということです。私たちは興奮し暗号解読に乗り出しました。
(続く)


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