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2016年10月18日00:37

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カルト映画監督の話

 昨日、シネマヴェーラ渋谷にて和田嘉訓監督の『脱出』という映画を観た。

 12時間後にブラジルに渡航をすいようとしている日系黒人青年がちょっとしたはずみで白人を殺害してしまう。
 逃走中に出会ったガールフレンド、週刊誌の記者、歌手志望の青年、正体を隠している過激派学生らが、警察に見つからないように船に乗れるように手助けをするのであった。
 黒人青年が船に無事に乗れるのかというのを話の核にし、それに過激派による爆発騒動、立て籠もった社長宅での社長殺人という要素でサスペンス要素でいい感じで、映画全体に盛り上がりがあった。
 また話の展開のテンポも良く、質のいい作品であった。

 ところがこの映画、クランクアップ直前で、公開が中止になってしまう。
 その理由が、当時、過激派がおこなった浅間山荘事件を連想させるというのが理由であった。
 それが理由だからか、和田嘉訓監督は映画監督をやめてしまうのであった。


 この和田嘉訓監督は、黒澤明監督の三十郎シリーズの二本と、クレージー映画の助監督をし、何人もの先輩助監督を抜いて監督になった人である。
 そのデビュー作『自動車泥棒』は黒沢明監督の『赤ひげ』で余ったフィルムで作られたという変わった経緯があった。
 この『自動車泥棒』は日系黒人のアウトローな青春を描いた異色作であった。
 ただし、この映画はお客様があまり入らず、シナリオや企画を出したが採用されることなく、3年間、監督の機会に恵まれることがなかった。ちなみに、企画した脚本の一本に寺山修司の『ああ、荒野』があった。

 しかし、昔の流れからか、クレージーキャッツの映画の数分間のコントシーンの演出をしたのが良かったのか、タイガース、ドリフターズの映画の監督を撮り、興行成績が良かったからか、コンスタントに監督をしていく。
 デビュー作とは正反対の娯楽映画を撮り続けるが、ジョージ秋山の問題作『銭ゲバ』を唐十郎で撮るというデビュー時のような意欲的な作品を撮り、その次が『脱出』であった。


 オイラは、和田嘉訓監督の作品は『自動車泥棒』、タイガースの『世界はボクらを待っている』、ドリフターズの三本、『銭ゲバ』を見ている。
 『自動車泥棒』と『銭ゲバ』。ドリフターズとタイガースの映画。前者のグループと後者のグループは明らかに対処的で、和田監督的には前者が意欲的だったかもしれない。
 ところが、オイラは意欲的な前者よりも、ドリフやタイガースの方が好きなのである。その理由はドリフとタイガース映画の方が観ていて楽しかったからである。
 『自動車泥棒』は斬新な演出、特殊な若者の屈折した青春像で、新たな映画を作ろうとしているのだが、どうもそれらが外れているという感じがあった。
 一方、ドリフとタイガース映画はテレビの人気者の個性をうまく出し、それが娯楽作品としての質をいい方向に導いたからである。それはやはり助監督でクレージー映画など喜劇系の映画に着いたからだろう。
 だから、和田監督はもっと喜劇色の強い作品をメインにしていけば、映画監督していい方向にいったのではないだろうかと考えてしまうのであった。

 だから、当初、『脱出』は『自動車泥棒』のような感じになるのかと思ったら、エンターティメント性が重視された質の高い娯楽映画に仕上がっていたので驚いた。
 これからもわかるように、この監督はエンターテインメントの監督だったのである。
 それだけに、『脱出』がオクラ入りされたのが、残念な出来事である。


 最後に『脱出』の主役俳優ピート・マックス・ジュニアとは、誰や? と思い調べる。
 そしたら、『ルパン三世』の第二シリーズで主題歌♪真っ赤なバラは〜♪を歌っていた人と同一人物だと知る。

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