ノーベル文学賞受賞にあたり、何か書こうと思ったがあまりにも荷が重かったので、ディランが初来日した際のコンサートに行った時の感想を書いてみようと思います。
注）手元に何も資料が無く、記憶だけが頼りです。なるべく当時の印象を忠実に再現するつもりですが、不正確だったり記憶を上書きしてしまったりしている点もあると思います。あらかじめご了承ください。
高校2年の3学期。ネットで検索したら、チケット代は4,500円だったようだ。当時としては高かった部類だと思う。おそらく、お年玉から捻出したのでしょう。
コンサートの印象を端的に言えば、とにかく冷え冷えとしたものだったという事。ステージと客席との距離感をあんなに感じたライブは、後にも先にも皆無。距離感などと言うよりも断絶という言葉の方がふさわしいかもしれない。同じ武道館で見たライブで例えるならば、2階席から見たPerfumeはほんの１０�兩茲砲い襪茲Δ粉兇犬世辰燭里紡个掘▲▲蝓璽覆�ら見たディランははるか1km先にいるような感じだった。
白い上下の衣装に薄化粧。今にして思えば、あのいでたちが内容を象徴していたのかもしれない。過去の代表曲を並べたディランによる歌謡ショー、今ならそう位置づけられる。
バックはローリング・サンダー・レビューでの面々を中心に、女性のパーカショニストや女性コーラスを配置。サックス（時にフルート）やバイオリンなども彩りを加える。ドラムはキング・クリムゾンにいた事もあるイアン・ウォレス。当然、ほとんどの曲でアレンジががらっと変えられ、ディランが歌い出してしばらくしてから「あ、この曲か」とわかる事もしばしば。リズムを強調した曲や、ちょっとオリエンタル調なアレンジなどもあったように思うけれども、正直なところ演奏からはあまりダイナミズムは感じなかった。後からライブ盤で聞くと、そんなに悪い演奏ではなかったと思うのだけれど、当日の会場全体の雰囲気がそう感じさせたのかもしれない。「風に吹かれて」や「ライク・ア・ローリング・ストーン」などの代表曲もあっさりと消化されていく。特に後者での凡庸なギターソロなどは、聞いていて顔が青ざめていくような気分だった。
ディランの歌い方からも、あまり気合が感じられなかった。感じたのはナイフのような冷たさ。どうしても、最新作だったライブ盤「激しい雨」や、ザ・バンドとのライブ盤のような歌唱を期待していた自分であるが、そんな勝手な思い入れや甘い期待感など粉々に打ち砕かれた。そういう意味ではディランらしかったとも言える。まるで物見遊山的な感覚で見に来た観客に、歌というナイフを突き出していたかのよう。曲によってはギターも持たずにマイクスタンドに向かっていたが、こんなディランは珍しかったのではないだろうか。
アンコールで「時代は変わる」を歌ったのは、何か意味があるのだろうか。あるのかもしれないし、無いのかもしれない。
ライブが終わってまず思ったのは「とにかくディランを見たんだ」という当たり前の事実。そして、それを消化できないまま戸惑い、取り残された自分。
口が裂けても「良いライブだった」と言えるようなものではなかったけれども、行かなければ良かったとは思わない。いまだに強烈な印象だけは残っている。やっぱり、あの時に体験できて良かったのだと思う。
あれ以来、僕はディランと距離を置いたまま今日に至っている。ダメだね。
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