木村耕一「まっすぐな生き方」(1万堂書店)より。
「人間として成長し、信用を得るために大切な心掛けが、一つある。
身分、立場、年齢に関係なく、大事なことだ。それは何か、知っているか」。
武田信玄が、家臣たちに尋ねた。
夕食の後、皆でくつろいでいる時だったらしい。
武芸か、学問か、正直か、礼節か・・・・。
ざわざわと声がするが、誰もハッキリ返事ができない。「一つ」といわれると、決めかねるのだ。
信玄の言葉は、
「自分のしたいことより、嫌なことを先にせよ」
であった。続けて、
「この心構えさえあれば、道の途中で挫折したり、身を滅ぼすようなことはないはずだ」
と戒めている。
人間は、自分の心に任せると、「寝たい、食べたい、楽がしたい」というような方向へ流されてしまう。
例えば、
★朝早く起きて勉強しようと思っても、ついつい寝坊をしてしまう。
★掃除や整理整頓が大事だと教えられても、なかなか続かない。
★食べ過ぎや、夜食・間食は、体に悪いと思っても、やめられない。
★手間のかかる仕事は、つい後回しにしてしまう。
★人目につかないこと、陰の苦労は手抜きをしてしまう・・・・など。
この心の流れに逆らい、
「まず、自分のしたいことよりも、嫌なことを先にしよう」
と心掛けていれば、目に見えぬ信用や徳となって、やった人の身に備わっていく。それは、お金では買えない心の財産である。
豊臣時代の知将・小早川隆景も常に、
「自分の心に合うことは、皆、体の毒になると思え。自分の心に逆らうことは、皆、薬になると思え」
と戒めていた。
武士道の精神を説いた『葉隠(はがくれ)』にも、
「自分の気に入らぬことが、
自分のためになるものだ」
と記されている。
人間形成に大切なことは、やはり共通しているようだ。
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