佐藤芳直「船井幸雄がこの世に遺してくれた魔法の言葉」より。
行政でよく問題視されることに、つかいきり予算があります。その年度の部署予算を使い切らないと、翌年度、その部署の予算が減額されるという慣例です。そのために、年度末になると予算消化の目的だけで無駄が発生すると指摘されています。
中田宏氏は横浜市長時代、予算の完全消化ではなく、その節約を奨励したといいます。そして、翌年度はその節約分を上乗せさせることも考慮し、節約した事実を評価に反映することによって予算の適正化を進めました。評価の基準という仕組みを革新することによって役人の行動を変えた一例です。
この中田流の成果は、横浜市役所の役人に一つの成長をもたらしたはずです。よりマクロに行政の仕事をとらえる。これは一人の役人にとって大きな成長でしょう。省利、部門利ばかりを追求する時代からみれば考えられない変化です。
成果とは何か?
人間の成長にとって大切なことは、成果の定義にあるのです。
何を成果とするか?
そのベクトルによって、人間の成長の方向性はまったく異なるものになります。船井先生は、いつも一つの成果への道筋を示されていたように感じます。
“人間の完成“ ―― もちろん、完成するはずはないのですが、生まれた以上、人間として完成を目指して生きなさいと常に導かれていたのです。
征韓論に敗れた西郷隆盛は、故郷・鹿児島に隠遁します。そして、西郷を慕って集まってきた若者たちのために私学校を設立します。明治7(1874)年、私学校の代表役にと決めていた篠原国幹が西郷に一つの質問をしました。
「私学校の校則を定めたいが、どうしましょうか?」。
その問いに、西郷は有名な言葉を返すのです。
「貴君が規則になりたまえ」。
つまり、篠原自身が、日々の立ち居振る舞いで生きた校則となり、人間としてのありようを示せと伝えたのです。
同様、船井先生は常に人間性のありようを言葉ではなく、生きる姿で示してくださっていました。
人間にとっての一生の成果とは、人間性を高めつづけるべく生きたという一点にあるのでしょう。そして、仕事は人間を完成させるべく私たちの前にあります。
いまをいかに生きるかは、何にも増しても大切なことです。しかし、その道筋は常に人間の完成、人間性の向上へと向いていなければならないのだと思います。
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