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2016年08月07日17:25

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ネチネチ

「てめえは誰よりも頭が切れて偉いんだということを、罪人をあぶり出して虐めては、確かめているのかもしれませんな」
平四郎はひょっこりと、思ったことを口に出した。「頭が切れると何か良いことがあるもんだろうかね?」
「は?」と、政五郎は首をかしげた。
「そもそも、頭が切れるってことと、他人にあいつは頭が切れると思われるってことは、まあ、別物だよなあ?」
「ああ。それはそうでございますね」政五郎は膝を打つ。
「どんなに頭が切れても、それが他人にわからなければ、頭が切れるってことにはならねえわけだ。逆に、実はなまくらな頭でも、よく切れるように見せかけることさえできれば、それは頭が切れるってことになるわけだな…ああでも、なまくらを切れるように見せかけるなんてことは、やっぱり頭が切れなきゃできねえか」
「それは頭が切れなくたってできますよ。狡ければいいんです」と政五郎は大真面目に受けた。
「旦那は良いことをおっしゃる」
「やめてくれよ。俺の口から出ることなんざ、益体もねえことばっかりだ」平四郎はへらへら笑った。(宮部みゆき「ぼんくら」より)

また宮部みゆきの「ぼんくら」を再読している。宮部みゆきは本当に好きな作家だけれど、特にこの「ぼんくら」シリーズは一番好きかもしれない。読むたびにキープしておきたいセリフが増えてゆく。

頭が切れるということを、鼻にかけて自慢するというか、周りの人間がバカに見えて仕方がない。頭はいいが人望のない人間の常で、相手が一番言われたら嫌だと思っていることを言って責めたてたり、理詰めばかりで叱ったりするものだから、実はひどく嫌われ怖がられている。

なんていう人間を、今まで何人か見てきた。端で見ている分には、関わり合いにならないように注意していればいいんだけどね。

なんて言う自分も、ややその傾向はある。実際、自分なんて全然たいしたことはない。本当に頭のいい人間なら何人も見てきたし、もし自分がそうならばこの現在地点はどうなのよってつい自嘲しちゃうくらいなんだけど、そういう自嘲自体が不愉快に感じる人間ってのはいるんだよな。

またそういう人間に限って、どうも粘着質というか、こっちがとっくにさっぱりしちゃっているところを、よくもまあそれだけ執念深く根に持ち続けれるもんだと感心しちゃうんだけどね、いや今度はそれが直属の上司だったりすると、もう悲惨だね。

最近、自分で思い当たって反省したのは、人を操るのって面白い、なんて有頂天になっていた時期があったこと。自分はあくまでも発言せず、他の人間に自発的に(ここがミソ)発言させることで、自分の思っている地点に問題点を着地させるという高等技術だな。それでみんながちょぴっと幸せになってるんだからいいじゃない、別に自分は何も得していないんだからって思っていたけど、ああ、実はあんなところで恨みを買っていたのかなんて思い当たることがあって。

そういえば、せっかく苦労して改善したことが、今になって思えば全て元の木阿弥に戻されている。実はかなり意図的に逆戻りさせられているのか、そういえば今の上司の嫌味な行動もその作業終了とともに新たに開始、なんて思うと時期的に一致するし。

しかし、そんなことで本当に恨みに思うかね。ほんと、ネチネチした男って最悪。これは本格的に逃げるしかないな〜って思っている。

今週の映画は「岸辺の旅」(監督:黒沢清/出演:深津絵里、浅野忠信)を観ました。3年前に夫の優介が失踪した妻の瑞希は、その喪失感を経て、ようやくピアノを人に教える仕事を再開した。ある日、突然帰ってきた優介は「俺、死んだよ」と瑞希に告げる。

全然怖くないホラー映画?という感じで。深津絵里好きなんですが、この映画は私にはダメでした。

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