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2016年08月06日11:03

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生きている間、あなたは何を重要視しますか?

【生きている間、あなたは何を重要視しますか?】

父が、長い時間をかけて少しずつ貯めたお金で、ぴっかぴかの新車を買った。
彼はこの車を毎日きちんと洗車して、とても大切にしていた。
彼の五歳の息子は父がこの車に愛を注いでいるのを見ては、興奮しながら父と一緒に洗車した。父は息子のこの反応を見て、非常に満足そうだった。
息子は本当に父を尊重し、気にかけてくれていた。

ところがある日、今日もまた父を手伝おうと車の前まできたはいいが、いつも洗車している時に使っている布巾が見当たらなかった。
仕方なく、台所に行ったら、母がいつも使っているたわしを見つけた。
そして母が掃除のときに、このたわしで力強く擦ったら汚れが沢山落ちて綺麗になっていたことを思い出した。このたわしを使えば、父の車ももっと綺麗になって、父ももっと喜んでくれるかもしれない。そう思い、たわしを持って車のところへ向かう。

そしてたわしで泡立っている車の表面をごしごしと力強く擦り、汚れを落とす。
頑張って全て擦り、水で泡を流すと…車は傷だらけだった。

「あぁ…!?」

信じられないものを見るかのように傷だらけになった車を見つめながら、震える指先で傷のついた車を触り、見開いた瞳からはぽろぽろと涙が零れ落ちた。なんで、どうして…。父が大事にしていた車に沢山傷がついてしまった。

その事実はより一層涙を溢れさせたが、泣きながら父の所へと向かう為に駆け出す。
父はすぐに見つかった。リビングにいる父を見つけた瞬間叫んだ。

「父さん!ごめんなさい!早く見にきて…!」

息子の必死な様に驚きながらも、息子についていくと、彼は小さく悲鳴を上げた。

「…お、俺のく、車が…!」

無残な姿になった彼の車をみて、彼は怒りのあまり息子に声を掛けずに家の中へ消える。
家の中にある仏壇の前で、彼は拳を強く握りしめた。

「神よ、教えてくれ、俺はどうしたらいい?
あれは俺が漸く貯まった金で買った新車だった。
買ってから、まだ一ヶ月も経ってないんだ。
なのにあんな…。
なぁ、教えてくれ。俺は一体息子をどう罰せばいい…?」

怒りに身を震わせている彼に、ある声が聞こえてきた。

≪人間とは表面ばかり見て、
その裏にある思いや心には耳を傾けようともしないのだな。≫

その声が聞こえた瞬間、彼は目が醒めたかのようだった。

怒りに身を任せ、結果しか見ていなかった。
一体何故、車がああなってしまったのか。
そこに気が付いた彼は、静かに玄関まで行き、息子の所へ向かう。

車の前で、息子は俯きながら肩を震わせていた。息子は微動だにせずそこに佇み、息子の瞳から止め止めなく溢れ出る涙は、地へと零れ落ちる。
泣いている息子の両頬を両手で優しく包み込み、顔を上げさせると、未だに涙を流している息子の目と、目が合った。

「ありがとう。父さんの車、洗ってくれたんだろう?
父さんはね、お前を愛しているんだよ。この車よりも。」

そういって彼は、彼のことを想ってくれた息子に優しく微笑んだ。

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