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2016年07月02日12:05

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美しい心には、共感されるもの。


【美しい心には、共感されるもの。】

ある日、六歳の少年が目を覚まし、自分が遅刻してしまったことに気がついて、飛び起きた。
歯磨きする時間も、顔を洗う時間もなかったので、着替えてすぐに家を飛び出す。

走って学校まで行くと、一限目前にある自習の時間だった。
他の生徒が自習している中、少年は静かに影を薄めて抜き足、差し足、忍び足といった様子で自分の席に座った。

担任に見つからずに済んだとホッと息をついた瞬間、
「○○!お前入学式に遅刻したのか!罰として廊下に立ってろ!」
と、担任が怒鳴ってきて、ついでに一発軽くも重くもない拳で頬を殴られた。

未だに怒鳴ってくる担任を横目に、少年は頬っぺたを真っ赤に腫らしながらも、席から微動だにしなかった。

そんな態度にキレたのか、怒鳴り散らし殴る準備をした担任に少年が身構えたところで、
突然目の前に、大量の水が。

びっくりした少年は、前髪から滴る水で「水を頭から被った事」を漸く認識した。
辺りを見回すと、少年の隣の席の少女が、申し訳なさそうにしていた。


それから十数年後、六歳だった少年はつい先日成人し、青年は企業家となり、あの時の少女はその会社で受付嬢をしていた。

偶然もう一度巡り会った二人は、お互いに恋をし相思相愛となった後、すぐにではないがこれから先の人生を共に歩んでいくことを、二人は心に決めていた。
小学校が同じでクラスメイトだった人が、大人になったあと結婚することは少ない。

結婚式で新郎が挨拶をした際、こう言った。

「私が小学生の時、既に妻の事を愛していました。
だからいくつになってもずっと妻の印象が深く残っていたんです。
突然隣の方から大量の水をぶっ掛けられたあの日のことを…。
そういえばあれ、初対面でしたね。」

席に座って静かに新郎の言葉を聞いていた人達の方から、楽しそうな小さな笑い声がする。
そんな中、新郎の横に座っていた新婦がマイクを取った。

「今日は、私がとても長い間心の内に仕舞っていた秘密を打ち明けます。
実はあの日彼に水をかけてしまったのは、不注意なんかじゃなくて。
本当は、わざとだったんです。」

先程まで小さく笑っていた人達も、皆驚いた様子で新婦の方を凝視していた。
新郎が続いて口を開く。

「妻は隣に座っていたから気づいていたんですよ。
あの時実は、私が急に怒鳴ってきた担任にびっくりして少し漏らしてしまっていたことに。」

新郎は新婦の顔を見て優しく微笑む。

「あの時から、君が私の世界で一番優しく思いやりに溢れた、私の愛おしい人なんだ。」

新郎がそう言い切ると、結婚式場は盛大な拍手と歓声に包まれた。

もしも新婦の言葉だけだったら、ただ故意に水をかけた酷い人だと思う人は多くいただろう。新郎が水をかけられた理由を言ったから、式場の多くの人が彼が彼女は優しい人だということに納得し、彼に共感したのだ。

人は共感して動くことが多い。

共感する人が一人だけだととても微量な力でしかないが、
多くの人が共感することで、社会で驚く程の力を発揮することがある。

だからこそ、人の話は最後まで聞き、
状況を把握した上で客観的に考えて、慎重に答えを出さなくてはならない。

(画像:YAHOOより)
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