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2016年03月28日00:18

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今週の科学ニュース-3月27日

 皆様、こんばんは。南関東では、桜の開花宣言が出てから数日がたちますが、気温が低い日が続いているためか、とても見頃とは思えない開花状況が続いています。その分、楽しみは後に取っておけますが、今週後半は暖かいという天気予報ですので、次の週末あたりが花見の見頃になるのかもしれません。

Microsoftの人工知能Tay、悪い言葉を覚えて休眠中
 個人的には、今週最も注目したニュースでした。米Microsoft社が開発したAI(19歳の女性という設定のTayというAI)を、教育目的でツイッターにつなげたら、24時間しないうちに人種差別主義者になったというお話です。あまりに無垢に過ぎたのかもしれませんが、開発者の問題発言を除去するフィルターが甘かったのではないかという指摘もあるようです。TwitterにつなげてからのTayの変化の様子をこちらでレポートしていますが、ずいぶんAIって素直なんだなという感じです。ただ、個人的には、現時点ではAIは、数人の悪意ある存在と綿密な(対AI)教育プログラムがあれば、わずか数時間で狂わすことができることがはっきりしたことの方が重要と思われます。これでは、まだ重要な仕事にAIを就かせることはできないと考えます。故伊藤計劃氏の「虐殺器官」では、「文法」が出てきます(詳細は「虐殺器官」をご覧ください。オススメ)が、はからずも今回はAIにそのような「文法」が存在することが露呈してしまったように思います。
Microsoft TayのHPはこちら。3月27日23時の時点では、まだ「休憩中」です。
Tayの日本版の「りんな」の記事はこちら。今のところ、Tayのようにはなっていないようです。(だけど、花粉症ですって…。)

世界最大の鳥の巣、建造に「厳しい監督」が貢献(米コーネル大学他)
 アメリカCornell大学他の研究チームは、木の枝に実に重さ1t、500羽が住める巨大な巣(集合住宅?)を作る習性があるアフリカ南部に生息するシャカイハタドリの生態について研究発表を行いました。それによると、巣の建設に際して、公共部の建設に従事しないで個室の建築にばかり従事している個体を腕尽くで追放する役目を持つ、監督官に相当する個体の存在を確認したそうです。ナショジオの記事によると、この見解にはいくつか疑問点が挙げられていますが、人間以外に集団作業の監督が存在している動物がいたことを発見したのは重要と思われます。もっとも、そういう存在がないと、きちんとあんな大きな巣は作れないという言い方も出来ると思います。しかし、集団作業をすることで知られているアリやシロアリには、監督官の存在は確認されていないようです。アリやシロアリは、個人的な用事を優先させようと考えることができないほどバカと言うことなのでしょうか。なお、追放されたシャカイハタドリ個体は、後できちんとかえってこれるそうです。記事にもあるとおり、そういう点だけは、一度追放されると帰ることができない場合が多い人間の方が非合理的ですね。
PLOS Oneの該当論文はこちら

歯の汚れが古代人の暮らしを解き明かす(米オクラホマ大学他)
 アメリカUniversity of Oklahomaなどの研究チームは、700年前の先住アメリカ人(平たく言えばアメリカインディアン)の骨の歯垢・歯石をとって調べたところ、多種多様なDNAが採取でき、それを解析したところ、6体の人骨からそれぞれヒトの完全なミトコンドリアDNAを検出することに成功したと発表しました。当然、他のDNAからは、当時の原住民が食べていた植物や動物のDNAが検出できるはずで、先住アメリカ人の食生活を調査する手がかりになるとしています。「ジュラシック・パーク」の元ネタでは1億年前のDNAを復元する話が出ていますので、700年くらいではどうと言うことはないのかもしれませんが、それが歯垢・歯石から採取できる(しかも、記事によると、解析しきれないほど採取できる)というのは新しい発見です。個人的には、口内細菌のDNAばかりかと思ったのですが、そうでもないようです。
American Journal of Physical Anthropology誌の該当論文のAbstractはこちら。(論文にもアクセスできます)

28年ぶり新種のチョウ見つかる、アラスカ(米フロリダ大学他)
 アメリカUniversity of Floridaなどの研究チームは、28年前に採集された蝶の標本を調べていたら、新種のチョウを見つけてしまったと発表しました。記事によると、まだ生きた個体を捕まえた事実はないようですが、DNAの型などから新種に間違いないとのことです。しかし、見ただけで、「これは違う」と見破れるのですがら、やっぱり専門家というのはすごいものです。日本でも、新種の昆虫が人知れず違う名前をつけられてどこかに保存されているのかもしれません。
Journal of Research on the Lepidoptera誌の該当論文はこちら

最小限のゲノムを持つ細菌を作製、ヒトゲノム解読の米科学者ら(米クレイグ・ベンダー研究所他)
 アメリカJ.Craig Venter研究所などの研究チームは、独自に機能・自己複製するために不可欠な遺伝子だけしか含まない最小限のゲノム(全遺伝情報)を持った細菌を人工的に作ることに成功したと発表しました。後は、これに必要な機能(例えば、特定の薬剤を合成するための機能)をDNAで組み込めば、ノーベル賞間違いなしです。個人的には、もっと単純な構成のウィルスを人工的に合成する成果の方が先かと思ったのですが、きちんとできたかどうかの確認がウィルスの方が難しいので、細菌(バクテリア)が先になったのかもと思っています。ちなみに、ウィリアム・ギブスンの短編「ニュー・ローズ・ホテル」に、今回の成果を先取りするネタが書かれています。(「燃えている!燃えている!」)
Science誌の該当論文はこちら。PDFファイルへのアクセスもできます。

では、今週はこの辺で。
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