mixiユーザー(id:5089039)

2016年02月07日11:11

493 view

哲学者カントへの名医の注射



以下、佐々木将人「中村天風先生 一言時に 一生を救う」(大和出版)を参考にしました。


中村天風先生は、講演でよくドイツの哲学者イマヌエル・カントの話をされました。
カントは生まれながらひどい佝僂病で背中が丸く、胸の乳と乳の間は2.5インチ(6.4センチ)、それに重い喘息で、毎日、苦しいと、のた打ち回っていました。
そのカントが7歳のとき、町医者に診てもらいましたが、この医者が偉かった。
注射は腕や尻に打つだけではない。言葉の注射もあるのです。

「お前はひどい体だな、それに喘息持ちか」
「・・・・・・」
「同じ人間に生まれながら、気の毒だなァ」
「・・・・・・」
カントは無言のままだった。

「しかし、気の毒だなァと言うのは、体を見ただけでのことだよ。よく考えてごらん、体はなるほど気の毒だなとは、誰が見ててもわかるが、心はどうでもないだろう」
と言った。

カントは、冗談じゃないよ、何で俺だけがこんな体に生まれたんだと、辛い思いをしているのに、心はなんともないだろう・・・・。俺の身になってみろ! と心に思いました。

「世の中には、心で勝手に悩みを作っては悩んでいる人が多い。心には形と言うものがないのに、勝手に作っては悩む。悩むのは、どこだい?
足が悩んだりお尻が悲しんだりはしないだろう。
悩むのは心だよ。その証拠に、寝ている時は、悩みも悲しみも貧乏もないじゃないか」。

・・・・・・・なるほど、悩みは心でつくるだけだなァ―と、今度は思いました。
「しかし、心に形はないと言っても、昼間起きている時は、何かを考えているのが人間というものだ」。

・・・・・・・そりゃそうだ! とカントは身を乗り出しました。
「いいかい!ここが大切だよ!」
と医者は言いながら、

「どうせ考えるならば、善い方へ善い方へと考えることだ。苦しくとも悲しくとも、何事も神が与えた試練だと、苦しみや悲しみを喜びと感謝におきかえて、心を明るく朗らかにすることだ。
そうすると自然に運が開くように、この宇宙の法則はできている。君には難しい言葉であるが、それを自然治癒力というのだ」。

カントは医者の言葉をかみしめた。
「苦しい苦しいと思っても、お前の体は治らないよ。それを言うたびに、そばにいるお父さんやお母さんの心を痛めさせるだけだ」。

カントは頷いた。
「人はこの世に生まれる自由はない。男女の別、貧富の別、親を選ぶこともできない。お父さんやお母さんは、可愛い自分の子供を、なんで佝僂病に生むと思うか。生まれた時から今までどれ程、お父さんやお母さんが、君の体を見ては心を痛めてきたことか、わかるだろう」。

この言葉でカントは胸を熱くした。
「人はみなそれぞれの使命を持ってこの世に生まれ、神はその人に必要あるものを与えたまう。
そして又、人は誰でも一日に一度の眠り、一生に一度の永眠を神から公平に与えられている。
だから体は神様からの借り物だと言う。朝借りて夜は返す、夜は持ち主の神様が修理や掃除をしてくれる」
「・・・・・・」
「正直言うと、君の命はこのままだと、あと2年しかもたないよ。せめて、今まで仕事しないで育ててもらったお礼に、人の前では苦しい顔をしないで、嘘でもいいから笑顔でいてごらん。苦しい顔をしたり言葉に出したりすると、側にいる人が迷惑するだけで何もならない。体はとにかく、丈夫な心のお陰で死なずに生きてきたんだから、その形のない心を心で感謝しなさい。
人は一つでも人のために役立つことが必要だが、その体では何もできない。今君がやれることは、お父さんやお母さんの前で苦しい顔や、苦しいという言葉を言わないこと。これが親孝行だ。わかったかい。君に効く薬はないよ」。


17歳のカントは、医者の言葉を何度も何度もかみしめた。
今まで自分で自分の心を痛めつけていた。こんな体になったのは親のせいだと責めてばかりいて、育ってもらったことに感謝したことは、一度もなかった。
これからは、何事にも喜びと感謝を忘れないようにしようと、心を入れ替えることを心に誓った。
その時から、カントは苦しい顔や苦しいという言葉を吐かなくなった。

そして1年後、あのひどかった喘息は見事に治っていた。

心を明るくして喘息が治ったとすると、心と体と、どちらがほんとうの俺なのか。お医者さんは、一つでも人の役に立つような人間になれとおっしゃたが、2年たった9歳でも死ぬどころか、佝僂病であっても体は丈夫になった・・・・。
お医者さんは人間は心だと教えてくれた、見れば五体満足でも、形のない心で、不幸だ、やりきれないと、二度とない人生を暗くしている人がなるほど多い。僕は心を明るくし、喜びと感謝に心を入れ替えたら元気になった。
よし! この体では労働はできないが、心とはいったい、何だろうとの心の問題を研究して人の役に立つ人間になろう・・・・。


医者の一言で志を立て、学問の道に進み、哲学者として不滅の名を残し、あと2年の命を言われながらも、カントは80歳の天寿を全うした。




4 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2016年02月>
日 月 火 水 木 金 土
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
2829