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2016年01月31日14:51

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独裁者と小さな孫(The President)


 クーデターで地位を追われた独裁者と幼い孫の逃亡の旅を描いたヒューマンドラマ。「カンダハール」などの巨匠モフセン・マフマルバフ監督が平和への想いや未来への希望を込めて撮りあげた。独裁政権が支配する国でクーデターが起きた。これまで国民から搾取した金で贅沢な暮らしを送り、政権維持のため多くの罪なき人々を処刑してきた老齢の独裁者は、幼い孫と共に逃亡生活を送ることに。羊飼いや旅芸人に変装して正体を隠しつつ海を目指す彼らは、その道中で驚くべき光景を目撃する。2014年・第15回東京フィルメックスにて「プレジデント」のタイトルで上映され、観客賞を受賞。(映画.comより)







この映画、独裁者のお話なんですが、時代・国は設定せずに「ある国」とだけ表示され、映画が始まります。華やかに電飾された首都。しかしバックに流れる放送は「我々の今日(こんにち)の幸せは大統領さまのおかげ」という意味のもので、不穏さを感じさせるものとなってます。そして豪華な宮殿(?)では年配の大統領と幼い孫息子が一緒に話しています。「やがてはお前の国となる。なんでも思い通りに動かせるのだ。見ていろ」そう言った大統領は「町の灯りをすべて消せ」と命じ、明るかった町が一瞬で真っ暗に。「ともせ」の一言で元通りに。たった3歳のぼうやには善悪がわからず、ただ興奮します。「おまえもやってみろ」その一言で孫にも同じことを命令させる大統領。ところが今度は元には戻りません。「閣下、すぐにお逃げください」・・・とうとうクーデターが起きてしまったのです。

ともかく、家族だけは先に外国に逃し、自分は残る大統領。離れなかった孫も一緒です。この時点では、大統領一家に危機感はそれほどなく、本人もそのうち収まる、くらいに思っています。

しかし、事態はもっと深刻たっだのですね。革命が起き、今までの元首には勝ち目(?)がないと思った途端の人心の離れるのが早いこと。取り巻きはあっという間にいなくなります。そして、大統領は幼い孫を連れ、たった一人で身分を隠したまま逃亡することになります。今まで孫にも「大統領」と呼ばせていたものを呼称から変えなければならず、孫は大統領の言うことがわからず、泣き出してしまうことも。かわいそうに。

ともかく、行く先々で自分に対する批判・罵声を聞きながらの逃亡。さすがの大統領も、無意識だった蛮行を認識するようになりながら、また折れそうになりながらも孫のため、必死に庶民に紛れ込みます。体も小さくなく、また案外器用だったのですね。皆を乗せた車を運転したり、政治犯を背負って歩いたりします。この過程で、大統領の息子夫婦もまた、殺されていたこともわかります。自分たちに原因があるとは言え、彼も辛い思いをしていたのですね。

しかし、政治犯が受けた拷問の痕はいかにも痛々しく、かの国がいかに非情だったかも想像させます。

そんななかでも、やはり「暴力の連鎖」を恐れ、「相手に報復すれば終わるものではない」と唱える人もいて、最終的に追い詰められた大統領たちの運命は揺れ動きます。(いくらなんでも3歳の孫に罪はないだろう、と思うのは日本にいる私の奢りでしょうか。)

観客に考えさせる映画になっています。どこの国にも起こり得て、どこの国にも起こり得ないことかもしれません。それでもやはり、「暴力の連鎖」を止めることは重要なことなのかな、と思います。

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