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2016年01月19日23:12

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北朝鮮崩壊のカウントダウン〜あえて核実験をやらせた米中の狙い=高島康司

 下記は、2016年1月19日付のMag2ニュースの記事です。

                      記

 米政府筋「中長期的に北朝鮮の崩壊はプラス面が大きい」

 北朝鮮崩壊のシナリオが選択された可能性

 今回のテーマは、アメリカが北朝鮮の崩壊を誘導するシナリオを選択した可能性についてである。

 1月1日に配信した前々回の第361回の記事では、リチャード・アーミテージやジョセフ・ナイなどのジャパン・ハンドラーが結集するシンクタンク「戦略国際問題研究所(CSIS)」が2014年10月に出したレポート「安倍の危険な愛国主義」を参照しながら、韓国と関係を改善するため「従軍慰安婦問題」に決着をつけるように、アメリカが安倍政権に強く圧力をかけた状況を見た。

 このレポートが出された直後の2014年10月21日、安倍政権は早速韓国に特使を派遣し、関係改善の糸口を探った。その後、両国の外務大臣の高いレベルの対話が繰り返され、2015年11月には日中韓の首脳会談が実現した。

 また、12月28日の日韓両政府による「従軍慰安婦問題」の不可逆的な解決に向けての合意も、12月20日にアメリカの外交政策の奥の院とも呼ばれる「外交問題評議会(CFR)」が出した「日本と韓国の緊張を管理する」というレポートがもとになっている可能性が大きい。

 これは、「日米韓の同盟を早急に強化すべきときに日韓関係が悪化していることは、アメリカにとってあまりに損失が大きいので、日韓が主体的に関係改善しないのであればアメリカが介入する」としていた。

 昨年末までに「従軍慰安婦問題」の不可逆的解決に向けて日韓が急いだ背景には、アメリカのこのような圧力があったと見て良いだろう。

 このように、日韓関係の改善はアメリカからの強い圧力によって実現した可能性が極めて高い。しかし、なぜアメリカは2015年のうちに関係改善するように圧力をかけたのだろうか?

 前々回の記事では、アメリカは北朝鮮を崩壊させる選択をした可能性があることを指摘した。

 どのようなシナリオになるのかはまだ分からないが、もしアメリカがそうした選択をしたのであれば、日韓関係の改善を早急に行い日米韓の同盟を強化することは、北朝鮮崩壊に向けた準備であると見ることもできる。すると、2014年10月から始まったアメリカの圧力も十分に説明がつくかもしれない。

 いつもの「瀬戸際外交」とは異なる水爆実験

 そのようななか、1月6日、北朝鮮は水爆実験の成功を発表した。通常の核実験は4年ぶり3回目だが、原爆の数百倍から1000倍の威力の水爆は今回が初めての実験である。

 これまでの北朝鮮の核実験は、アメリカや日本を恫喝して目的を実現する瀬戸際外交の手段としての特徴が強かった。そのため北朝鮮は、核実験実施の数週間から数日前にこれを予告し、欲しいものを要求する傾向が強かった。いわば過去3回の北朝鮮の核実験には明確なメッセージがあり、意図が分かりやすかった。

 しかし6日に実施された水爆実験は、友好国とされている中国に対してさえ実験の30分前に通知しただけで、他の国々には予告なく突然と実施された実験だった。

 そのためこの水爆実験は国際的に大きな驚きを呼び、北朝鮮の意図を巡って議論が起こった。国民に約束した経済成長を達成できなかったので、キム・ジョンウンの支配体制を固める必要から実施したという見方から、キム・ジョンウンが訪中して首脳会談を実現させるために行ったとする見方まで、さまざまな議論が出た。

 だが、10日の北朝鮮労働党の「労働新聞」には、「核の廃棄を迫る6カ国協議の交渉は拒否するが、もし北朝鮮を核保有国として認めるのであれば、アメリカを和解し、平和条約を締結する用意がある」とする社説を発表した。このことから、今回の水爆実験の目的は、北朝鮮を核保有国としてアメリカに認めさせることにあったと見てよい。

 米中は事前に察知しながら北朝鮮にあえて核実験をやらせた

 今回の核実験は水爆ではなく、規模から見て通常の原爆ではないのかという見方が出ているが、おそらくそうであろう。

 だが、それはあまり重要ではない。日本では今回の水爆実験をアメリカ、中国、日本、韓国、ロシアなどの国々がまったく知らなかったと報道されているようだが、むしろ重要なのは、少なくとも高性能の軍事衛星を保有するアメリカ、中国、ロシアは北朝鮮の動きを早くから察知しており、実験の実施時期も知っていた可能性が高い事実だ。

 事実、米NBCは米軍はすでに2週間前から核実験に向けての動きを察知していたと報じている。間違いなく中国やロシアも察知していたであろう。

 例えば、2013年2月に実施された第3回の核実験と比べると、各国の対応には大きな違いあることが分かる。2013年には1カ月以上も前からアメリカも中国も核実験の実施を察知しており、情報を公表することで北朝鮮が核実験を実施しないように強い圧力をかけていた。

 しかし、今回はそうした情報を知りながらも、アメリカも中国も北朝鮮に事前に圧力をかけた形跡がない。おそらく米中は、今回の水爆実験のみならず、水爆開発に向かう北朝鮮の長期的な動きを数年前から察知していたと考えてよいだろう。

 そのような推察が成り立つとするなら、米中は北朝鮮にあえて水爆実験をやらせたと考えてよいのではないだろうか。

 北朝鮮封じ込めと崩壊論、2つの落しどころ

 そのように見ると、2014年から突然と始まった日韓関係改善に向けてのアメリカからの圧力や、こじりにこじれた「従軍慰安婦問題」の昨年末までの不可逆的な解決を求める圧力などの動きは、1月6日の水爆実験を予期した動きであると見た方がつじつまが合う。

 前々回の記事で紹介した昨年末までの日韓合意を促すきっかけになった「外交問題評議会」のレポートには次のようにある。

 もちろん、日韓関係の難局に(アメリカが)直接介入することはリスクとなるが、すでに北東アジアの国際関係の変化は、日本と韓国というアメリカにとってもっとも重要な同盟国の関係悪化のコスト高く引き上げている。

 つまりこれは、北東アジアでは、日韓関係の悪化を容認できるような悠長な状況ではないという判断だ。これは昨年の12月20日に出たレポートだが、水爆実験が年初に実施されることを予期した上で書かれたとするなら、十分に納得できる内容だ。

 このように、アメリカと中国が北朝鮮の処遇の長期的な目標を持っているとするなら、その最終目標がもっとも気になるところである。

 さまざまなメディアの記事や、シンクタンクが出している有料レポートなどを見ると、最終目標に関しては2つの異なった見方があることが分かる。

(1)北朝鮮封じ込め論

 核武装した北朝鮮に対しては軍事的なオプションは使えない。北朝鮮が妥協できる選択を残しつつ、北朝鮮を6カ国協議に引っ張り出し、北朝鮮を封じ込める方法を模索するしかない。それは、北朝鮮を核保有国として認めた上で、これを管理する国際的な枠組みである6カ国協議に参加させ、管理することだ。

(2)北朝鮮崩壊論

 実は軍事的なオプションを使わないでも、キム・ジョンウン体制は崩壊の瀬戸際である可能性が高い。アメリカ、中国、韓国、日本、ロシアなどの関係各国は、難民の大量発生や北朝鮮軍暴走のリスクを恐れ、キム・ジョンウン体制を崩壊させることを極力回避してきた。

 だが、北朝鮮崩壊のリスクは関係各国が協調して対応できる程度であり、中長期的に見ると北朝鮮を韓国に吸収させ、統一朝鮮の形成に向けて動いた方が、メリットは大きい。

 従来の見方「だれも望まない北朝鮮の崩壊」は本当か?

 アメリカの外交誌などを読むとこの2つの見方があるようだが、日本ではもっぱら(1)の「封じ込め論」だけが報道されている。これは従来からある北朝鮮論を踏襲した見方だ。

 ここで簡単に、従来の北朝鮮論を確認しておいた方がよいだろう。北朝鮮は人権無視の残虐な軍事独裁国家で、北東アジア最大の脅威であることは間違いない。しかし、北朝鮮が崩壊し韓国に吸収されることをアメリカ、中国、韓国、日本が支持することは困難だ。

 それというのも、北朝鮮崩壊によって膨大な数の難民が、いまのヨーロッパに殺到するシリア難民のように日中韓の3カ国に押し寄せる可能性が高いが、どの国もこれに十分に対処することは不可能だからである。

 どんなに独裁的な軍事国家であっても、北朝鮮の体制を温存したほうが混乱のリスクはずっと少ない。

 また中国から見ると、徹底的に反米の北朝鮮という国家の存在は、中国の安全保障にとってとても重要である。北が韓国に吸収される形で朝鮮半島が統一されると、米軍基地が中国の東北部近辺に設置される恐れがあり、中国にとって大きな脅威となる。北朝鮮の存在は、中国にとっては米軍から守ってくれる緩衝地帯の役割を果たしている。

 さらにアメリカから見ても、北朝鮮は便利な存在である。ちょっと刺激すると北朝鮮は過剰に反応して、ミサイル発射などの軍事的な行動に出るので、北東アジアの緊張を簡単に高めることができる。

 この緊張の存在は、日本や韓国などに米軍を駐留させるためのよい口実になる。北が脅威である以上、米軍は日本と韓国に駐留しなければならないというわけだ。これは、米軍産複合体の利益となる。

 このように、どの国から見ても北朝鮮が国家として存続したほうが、都合がよい。しかし、北朝鮮が軍事的に暴発するとリスクは高まるので、北を存続させながら、軍事的な脅威を管理する体制が必要になった。それが、米中韓日ロの5カ国が北朝鮮と協議する6カ国協議である。

 これが、北朝鮮に関する従来の共通した認識であった。1月10日、1990年代にクリントン政権の国防長官であったウィリアム・ペリーが「どのように北朝鮮を封じ込めるか」という論文を発表し、(1)北にこれ以上の核兵器を作らせない、(2)いま以上の高性能な核兵器を作らせない、(3)核兵器を他国に輸出させないという「3つのノー」を順守させるならば、北朝鮮を核保有国として認めてやり、平和条約を締結してもよいのではないかという主張を展開した。

 これまでアメリカは、6カ国協議の目的は北朝鮮に核兵器を廃棄させることだと強く主張していたので、かつての政府高官が北の核保有を容認したことは、これからアメリカがこの方向へと政策転換する予兆なのではないかと見られている。

 ということでは、北朝鮮問題の落しどころは、北を核保有国として認めた前提で成立する北東アジアの新しい秩序だということになる。

 たしかにこれは、核兵器廃棄を強く求めたアメリカの方針からは大きな転換である。しかし、北朝鮮の国家としての存続を前提にしていることでは、従来の北朝鮮に対する見方と大差はないように見える。

 少なくとも2014年10月から始まり、昨年末までに「従軍慰安婦問題」の不可逆的な解決を迫る強い圧力をかけてきたアメリカの態度を見ると、北朝鮮を核保有国として認めるという方向がアメリカの真意とは考えにくい。

 米国の狙いはどこにあるか?テリー博士の北朝鮮崩壊推進論

 「従軍慰安婦問題」のような複雑な問題を昨年末までに最終決着させ、日米韓同盟を強化せよという切迫した圧力の裏には、もっと違う意図があると見たほうが自然なのではないだろうか。

 そのような視点から調べると、最近スー・ミー・テリー博士という人物が書いた北朝鮮崩壊推進論が注目を集めているのを発見した。

 スー・ミー・テリー博士は小学校まで韓国で育った在米韓国人で、CIAの元上級分析官だった人だ。そしてなんと、ブッシュ、オバマ両政権で米政府の外交政策の中枢である「国家安全保障会議」の「韓国、日本、海洋問題部門」の部長として、ホワイトハウスの北朝鮮を含む北東アジアの基本政策の立案を担当していた人物だ。現在はコロンビア大学に席を置いている。

 オバマ政権が安倍政権に露骨に圧力をかける3カ月前の2014年7月、スー・ミー・テリー博士は、米外交政策立案の奥の院である「外交問題評議会(CFR)」が発行する外交誌、「フォーリン・アフェアーズ」に「自由な統一朝鮮:朝鮮半島の統一はなぜ悪くはないのか」という論文を発表した。ここでスー・ミー・テリー博士は次のように主張している。

 北朝鮮が崩壊し朝鮮半島が統一するには次の3つのシナリオがある。(1)北朝鮮が中国の経済モデルを採用して発展し、韓国との経済格差を縮めた上で韓国が平和理に北朝鮮を吸収するというソフトランディング、(2)キム・ジョンウン体制が内部から自壊し、韓国が北を吸収するというハードランディング、(3)北朝鮮、韓国、日本、アメリカが全面的な戦争になる戦争のシナリオの3つだ。

 このうち、(1)と(3)はほとんど現実性はない。一方(2)は十分な現実性がある。キム・ジョンウン体制は国内問題の収拾がつかなくなり、自壊する可能性は大きい。

 これまでは北朝鮮の崩壊は、アメリカと周辺諸国に対して大きな脅威となると見るのが一般的であったが、そのような認識に捕らわれずに現実を見ると、中長期的には北朝鮮の崩壊にはプラス面がとても大きいことに気づく。

 たしかに崩壊直後の時期にはリスクが伴うだろう。しかしそうしたリスクは、関係国の協調で十分に解決できる範囲だ。統一のメリットから見れば小さい。我々はキム・ジョンウン体制の崩壊を恐れるべきではない。

 このような主張だ。この論文に対して、韓国の専門家から反論が寄せられたが、スー・ミー・テリー博士は反論に応えながらも北朝鮮自壊論を強く主張した。

 その後2015年4月には、アメリカがイランに妥協したように北朝鮮を容認する姿勢をとるならば、核兵器を保有する北朝鮮の脅威は逆に高まる結果になる。だから、キム・ジョンウン体制を追い詰める手をゆるめてはならないとする論文をやはり「フォーリン・アフェアーズ誌」に書いている。

 無視できないテリー博士の分析とオバマ政権の真意

 もしこのような見方が市井の分析者から出たものであれば、簡単に無視することができる。しかしこれが、ブッシュ、オバマ両政権の「国家安全保障委員会」で北東アジアの外交政策を立案していた人物の意見であるとしたら話は違ってくる。

 スー・ミー・テリー博士はもともとCIA出身の分析官である。とするなら、情報分野にも相当に知見があり、キム・ジョンウン体制の自壊か、または自壊を誘導するアメリカの工作が存在ことを十分に知った上でこれを書いている可能性もある。

 そのように見ると、水爆実験の動きを察知しながらも、北を止めるどころか、あえて実験をやらせたオバマ政権の真意も見えてくる。

 つまり、水爆実験という脅威を口実にしながら、関係国との協調と結束を強化し、将来的に統一朝鮮を実現すべく、キム・ジョンウン体制が自壊する方向に誘導するということだ。もしこれが事実だとすれば、これはアメリカの北朝鮮政策の根本的な転換ということになる――

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 あり得ない状況をあえて想像する〜2003年イラク侵略戦争との類似性

 北朝鮮崩壊が実現する4つの条件〜それはすでに進展しつつある

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