皆さんこんにちは。
今日は老樹の死という記事をご紹介したいと思います。
「老樹の死」
老樹が、高原にある森の中で生きていました。
そこは年の終わりに雪の降るとても寒い所でした。
ある日、遠くから飛んできた一羽の小鳥がこの森を訪れました。
小鳥は、疲れた体を休めるために見かけた老樹の枝に止まり、羽を休めていました。
「やあ、君はとても遠い所から来たのかい?」
「そうだよ。僕はとっても遠い所から飛んで来たんだ。」
「そうか。その遠いところは、綺麗なところかい?」
「綺麗なところだよ。
あそこには花が沢山咲いていて、湖には太陽の光が反射していて、とても美しいんだ。
僕の友だちもそこに沢山いてね、魚君や兎さん、リス君達皆でそこに住んでいるんだ。
毎日僕達は楽しく生活していて、寂しいとかそんなの全然ないんだ。
…そう、あそこはね、とっても暖かい場所なんだ。
ここみたいに寒くて冷え込んではいないよ。」
「そうなのかい。君はとても幸福者だね。
ここは暖かさとは無縁でね、寒くてとても冷え込む場所なんだ。
私はここから離れた事がなくてね。
友だちもいないから、私はとても孤独なのかもしれないね。」
「え、そんなの不孝すぎるよ!
あなたはこんなに孤独に生きていて、暖かさとかを何も感じることが出来ないなんて...。」
小鳥は嘆いていた。
あの老樹の彼が、孤独に生き孤独に死ぬ事を。
小鳥が悲しみながら飛んでいると、人間を見かけました。
その人間達は言います。
「よし、燃やせるだけ燃やそう。」
それを聞いた小鳥はハッとする。
その人間達の歩く道の先に先程まで話していた老樹の木がある事に気がついたのだ。
そして人間達の手に握られた斧。
それを見た小鳥は血相を変え、慌てて老樹の木のいる場所まで飛んで行き、老樹の木の枝に止まります。
そうしてすぐに、雪の白色に炎の赤色が紛れ始めました。
人間達が火を放ったのです。
今までとても寒く冷え込んでいた森が火によってどんどん暖かくなっていきます。
周りの木々たちは少し微笑んでいました。
「これでもう、寒くない。」そう言いながら森にいた木々達は燃えていきました。
そして人間達は老樹の木の元まで辿りつき、斧を振り上げ、老樹の木を倒し始める。
「かわいそう過ぎるよ…。
孤独に生きて、こんな寒くて偽りの温かさの中で死んでいくなんて...。」
そう嘆く小鳥を見て老火の海の中倒された老樹の木は微笑み、
「悲しまなくていい。
確かに私は孤独に生きてきたけれど、少なくとも私に暖かさをくれた人はいる。
それに、誰かが私を思って悲しみ涙してくれるのなら、私は少なくとも不幸だとは思わないよ。
何より唯一の友人に看取ってもらいながら静かに死んでいけるのだから、私は幸せだよ。
...ありがとう。」
(文章閱讀網より)
いかがでしたか?
たった一人でも自分のことを思ってくれる人がいれば、
そしてその存在に気づいてさえいれば、自分が孤独だと思う事はないのです。
「自分は孤独なんじゃないか」
そう思っていたとしても誰か一人と繋がりがある限り、本当に孤独になる事はありません。
孤独だと思っているのであれば、ただその事に気づいていないだけ。
これはそんなお話です。
(画像:YAHOOより)
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