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2015年12月12日15:43

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世界最大の原発・柏崎刈羽原発はなぜ再稼働できないのか? 新型フィルターなど安全設備も続々と整備したが…

 下記は、2015.12.12 付の産経ニュースの【原発潜入取材】記事です。

                     記

 世界最大の発電量を持つ東京電力柏崎刈羽原発(新潟県)がなかなか動かない。再稼働に向けた原子力規制委員会の審査に申請してからはや2年。何がネックになっているのか。取材班はこの原発の単独取材を許され、重要な安全設備や機器を確認した。しかしその直後、新たな安全上の問題が浮上する。柏崎刈羽の再稼働は、東電の経営の命運を握るとされるが、自ら首を絞める形となった。福島第1原発事故を起こした東電には、その反省と教訓を胸に、徹底的な安全対策が求められている。(原子力取材班)

 7000人の作業員が従事

 新潟県柏崎市と刈羽村にまたがる原発の敷地は広大だ。東京ドーム90個分にも当たる約420万平方メートルの敷地に、合計出力821万2千キロワットになる計7基の原子炉がある。1カ所の原発としては、世界最大規模の発電量を誇る。

 構内では現在、廃炉作業の進む福島第1原発とほぼ同じ、約7000人が働いているという。厳重に警備された入構ゲートを抜けると、トラックやワゴンなどの作業車両が頻繁に行き来していた。

 原子炉建屋の海側に設置された海抜高さ15メートルの防潮堤は、1〜4号機側は鉄筋コンクリート、5〜7号機側は土にコンクリートを混ぜて強化した改良土で、平成25年6月に完成した。

 柏崎刈羽で想定される津波の高さは最大約6メートルだが、東日本大震災で福島第1原発に押し寄せた13・1メートルの津波にも耐えられる設計だ。間近に見上げると、かなりの迫力だ。

 柏崎刈羽の原子炉は福島第1原発と同じ沸騰水型軽水炉で、原発の新規制基準で放射性物質の拡散を防ぐ「フィルター付きベント設備」の設置が義務づけられている。

 先行して審査を申請した6、7号機では、26年7月までに粒子状の放射性物質を1000分の1に低減するフィルター装置の設置と性能試験が完了した。

 さらに今年10月には、規制では義務づけられていないガス状の有機ヨウ素を98%除去する「ヨウ素フィルター」の設置工事も始まった。敷地内の展望台から眺めると、原子炉建屋周辺にはクレーンがいくつも並び、工事が進行している様子が見て取れた。

 海抜35メートルの高台には、消防車42台、電源確保のためのガスタービン発電機車、原子炉の冷却に用いる代替海水熱交換器設備など、非常時に備えて配備した特殊車両がずらりと並んでいた。

 東電によると、現在こうした車両を運転する職員の資格取得を進めており、9月末現在で約160人が大型免許を取得、約90人が大型特殊免許を取得済みという。敷地内では、実際に職員が重機に乗り込み、がれきを撤去する訓練も行われていた。

 停止中も訓練で運転技術を維持

 取材班は、6号機の原子炉格納容器の中にも入った。核燃料を納める直径約7メートルの原子炉圧力容器を中心に、ドーナツ状に広がる空間には、核分裂反応による熱で発生した蒸気をタービンに送る巨大な配管や、圧力容器を減圧するための安全弁、蒸気を遮断する隔離弁などの装置が並ぶ。非常時にはこうした装置が作動し、炉心の損傷や容器の破損を防ぐ。

 原子炉内の核分裂反応を制御する中央制御室の前には、この日の「当直班」を紹介する写真が掲示されていた。地元出身の若者や、女性も含めて1班18人の運転員の顔が並ぶ。

 現在は5班が交代で勤務し、非番の日には、シミュレーターを使って運転に必要な技術や感覚を維持しているという。敷地内にある訓練施設では、若い運転員がベテランの指導を受けながら、真剣な表情で技術を学んでいた。24年3月に運転を停止して以降も、こうした訓練が日々続いているという。

 迅速な対応

 こうした柏崎刈羽の安全対策については、国際原子力機関(IAEA)の運転安全評価チームが7月に視察し、「過酷事故時の防護施設は良好」と一定程度評価した。

 東電の原子力部門改革を検討する第三者委員会「原子力改革検討会」(デール・クライン委員長)も11月19日に視察したが、「満足する良好なレベルにある」と太鼓判を押している。

 柏崎刈羽6、7号機は、規制委から審査を集中的に行う「優先原発」に選ばれている。

 背景には、両基が福島第1と同じ沸騰水型軽水炉(BWR)の中でも、設計上安全性の高い「改良型」(ABWR)であることに加え、東電が自主的な安全対策に早くから取り組み、規制委の指摘にも迅速に対応してきたからだ。

 審査会合は現在、週2回程度のペースで開かれており、規制委としても、優先原発の審査を終えて「ひな型」をつくることで、後に控えるほかのBWRの審査を効率化しようというねらいがある。

 重要ケーブルで不備が発覚

 ところが今年9月、6号機の中央制御室などで、通信用のケーブルに不備が見つかった。本来なら分離すべき安全上重要なケーブルとほかのケーブルが混在していたり、分離のための板が壊れていたりしたもので、11月末の東電の報告では、1000本以上のケーブルで不備が明らかになった。

 規制委は「基本的に審査には影響ない」としているが、田中俊一委員長は記者会見で、「極めて遺憾。幸いにして今は運転が止まっているからいいが、きちんと是正をしていただくことが必要だ」と厳しく指摘。今後、定例会合で東電の対応状況について議論する予定だ。

 また、おおむね順調に進んできた審査会合でも、新たな課題が浮上しつつある。

 敷地内の防潮堤などの下を通る「F5破砕帯(断層)」について、東電が行った掘削調査で、過去に地層がずれた痕跡が見つかったことが12月2日の審査会合で明らかになった。

 東電は他の地質データなどから総合的に見て、「活断層ではない」と結論づけたが、規制委は受け入れず、データの追加提出などを求めた。仮に活断層と判定されれば、安全対策の見直しが必要になり、再稼働は大幅に遅れることになる。

 再稼働に向けた最も高いハードルとなっているのが、「地元の同意」だ。

 新潟県の泉田裕彦知事は、福島第1原発事故をめぐる東電の対応について、「事故の責任をとらない企業が再稼働を申請するのは、自治体との信頼関係を壊す行為」と痛烈に批判してきた。

 東電や協力企業で働く住民の多い地元の柏崎市議会は今年6月、再稼働の請願を採択したが、泉田知事は「(福島の)事故の検証がなされない限り、再稼働については議論しない」と協議のテーブルにつくことすら拒否している。規制委の審査をクリアしても、道のりは険しそうだ。

 http://www.sankei.com/premium/news/151212/prm1512120027-n1.html
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