mixiユーザー(id:8306745)

2015年11月26日21:39

1004 view

後藤隊長(CV:大林隆介)で再生される。

『恋は雨上がりのように』第一巻 眉月じゅん著 読了。

17歳の女子高生に45歳の冴えないファミレス店長の
おっさんが恋される、というざっくり云うと
掃いて捨てる程ある中年おっさん慰撫の為の
濫造漫画か、と思ってしまうが。

実に素晴らしかった。

スピリッツ掲載作品なのだが、
何とも在りし日のスピリッツ、を感じさせてくれる。

丁寧に描かれた背景、そこに漂う空気、風。
降る雨の質感や、夕暮れの何処か暖かい空。

そう云った諸々が、見事に登場人物の感情や
人物像を物語ってくれる。

最近、こういういい意味での「言葉少ない」作品って
減ってきたなぁ、としみじみと読了後思ってしまった。

クロスして飛び交うモノローグ、心情をエグい程描き出す
暗転やエフェクトの数々は、それらは無論作劇の要請で
描かれた「効果」であり、それを必要としてそれぞれの
作品を産み出している作者達は描いているのであるが。

なんだか、ちょっと疲れていたらしい。

作風は全く違うが、初期『じゃりん子チエ』を思い出したりした。
恐らくではあるが、この作者は映画好きなのではないかと思う。
横を広く取った画面構成で左右に流れる人や車を効果的に
使ったり、奥行きの深い正面からの切り返しなど、
「映画的」な手法が随所に見られた。こういうのも、
少なくなってきたよなぁ、と。
「漫画好きが描く漫画」も無論素晴らしいものは
素晴らしいのだが、こうした「ここでカメラがパンして、
ここで寄るからこの人物の内面の思いがクローズアップされて云々」
とか読み解きながら読む漫画、というのはまた格別に
良いものだと個人的には思う。

内容も、ざっくり云うと「それだけの話」でしかないのだが、
それを美しく透明な物語に仕上げているのは、そうした
「演出手腕」に拠る処が大きいだろう。

恐らく、この物語は小品として終わる。
だが、時々そうした「技巧を凝らした物語的にはなんて事ない作品」が
長い年月を掛けて一大スペクタクル巨編に仕上げた作品より、
心に強く残ったりする。個人的な代表例は吉田秋生の『ラヴァーズ・キス』か。

そのような時々思い出して棚の奥から引っ張り出したくなるような
そんな作品に仕上がってくれる事を、半ば確信しながらも、願う。

やっぱ、ワンピとかだと大変じゃん(笑)?
「ちょっと再読しよっかな」って思ってもさ。

最後にどうでもいい蛇足。

主人公に恋される冴えない店長の造型が、どう見ても
『パトレイバー』の後藤隊長にしか見えないのが
これまた個人的な高ポイントだったり。
もう、普通に大林ヴォイスで店長の台詞は再生されます。
これがまた似合うんだわ。

そんな、自分にとっての「好きなもん」で溢れ返ってる
作品なんだもん、「刺さらない」訳ないよなぁ、と。

ん?

いや。

いやいやいやいや、違うよ、違いますよ、君ぃ。
誰も17歳女子高生に恋されたいなどと思っては(ry


2 0

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する