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2015年11月20日12:32

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パリ同時多発テロが起きるほどにIS膨張を許した戦犯は誰か?

 下記は、2015.11.20 付のダイヤモンド・オンライン 北野幸伯 氏の論考です。

                    記

 11月13日、世界は「9.11」以来の衝撃に襲われた。パリで「同時多発テロ」が起こり、129人が犠牲になったからだ。イスラム国(IS)による犯行と見られるこの事件によって、世界はどう変わっていくのだろうか?

 突如現れて広大な地域を占領したIS米国は過去に彼らを支援していた

 今回のテロについて、フランスのオランド大統領は、即座にISの犯行と断定。そして、IS自身、「犯行声明」を出している。

 2014年に「どこからともなく」現れ、いきなりイラクとシリアにまたがる広大な地域を占領したIS。日本人には、「唐突に」登場したように見える。

 しかし、ある集団が強い勢力を持つには、「金」と「武器」が必要だ。彼らは、どこでそれらを得たのだろうか?まず、ここから話をはじめよう。

 以下は、AFP-時事2013年9月21日付からの引用。「シリアの反体制派同士が、ケンカし、戦闘になったが和解した」という内容である(太線筆者、以下同じ)。

 <シリア北部の町占拠、反体制派とアルカイダ系勢力 対立の背景トルコとの国境沿いにあるシリア北部アレッポ(Aleppo)県の町、アザズ(Azaz)で18日に戦闘になったシリア反体制派「自由シリア軍(Free Syrian Army、FSA)」と国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)系武装勢力「イラク・レバントのイスラム国(ISlamic?State of Iraq and the Levant、ISIS)」が停戦に合意したと、イギリスを拠点とするNGO「シリア人権監視団(Syrian Observatoryfor Human Rights)」が20日、明らかにした。>([AFP=時事])

 短いが、ISに関する「2つの重要な事実」(知らない人にとっては衝撃的な)を含んでいる。まず、ISは、13年9月時点で「アルカイダ系」であった。(その後、アルカイダから独立)。2つ目は、この時点で、ISはシリアのアサド政権と戦う「反体制派」(=反アサド派)に属していた。

 これがなぜ「衝撃的」なのか?「アルカイダ」については、説明する必要もないだろう。米国で01年9月11日「同時多発テロ」を起こしたとされるテロ組織だ。「米国最大の敵」とされた。ISは「アルカイダ系」なので、「米国の敵」なのはわかる。しかし…。11年にシリアで内戦が起こった時、米国はアサド現政権ではなく、「反アサド派」を支援した。その時のことを思い出していただきたい。

 米国は、「悪の独裁者アサド」「民主主義を求める善の反アサド派」という構図を、全世界で宣伝した。ところが、その「善の反アサド派」の中に、「アルカイダ系」の「IS」も入っていたのだ。つまり米国政府は、「最大の敵であるはずのアルカイダ系ISを含む勢力を、『善』と偽って支援していた」ことになる。

 ISを含む「反アサド派」に6000億円もの支援をしたのは誰か?

 もう少し詳しく、ISのルーツを見てみよう。ベストセラー「イスラーム国の衝撃」(池内恵著)にISの組織と名称の変遷が記されている(65〜68p)。

 1999〜2004年10月:「タウヒードとジハード団」 2004年10月〜2006年1月:「イラクのアルカイダ」 (この時点では、はっきり「アルカイダ」を名乗っている) 2006年1月〜10月:「イラク・ムジャーヒディーン諮問評議会」 2006年4月〜2013年4月、:「イラク・イスラム国」 (ここで、「イスラム国」という名に変わった) 2013年4月〜2014年6月、:「イラクとシャームのイスラム国」 2014年6月〜、:「イスラム国」 

 次に、ISが急速に勢力を拡大できた理由を見てみよう。既述のように11年、シリアで内戦がはじまった。ロシアとイランは、アサド現政権を支持、支援した。  一方、欧米は「反アサド派」を支援した。さらに、トルコ、サウジアラビア、ヨルダン、エジプト、アラブ首長国連邦、カタールも「反アサド派」を支持、支援した。これらは「スンニ派」の国々である。アサドは「シーア派」の一派である「アラフィー派」。彼らは、アサドを政権から追放して「スンニ派政権」 をつくりたいのだ。

 ところで、一言で「反アサド派」といっても、さまざまな勢力がある。そこで12年11月、「反アサド諸勢力」を統括する組織として、「シリア国民連合」がつくられた。著名なアラブ人ジャーナリスト・アトワーン氏の著書「イスラーム国」には「どの国が、反アサドを支援したのか」に関して、こんな記述がある。

 <サウディアラビアとカタールが革命勢力に資金、武器支援を行った。『ニューヨーク・タイムス』は、二○一二年一月、カタールが武器を貨物機に載せてトルコに運び、革命勢力に供与していたと報じた。サウディアラビアも軍用機でミサイルや迫撃砲、機関銃、自動小銃をヨルダン、トルコに運び、シリア国内に送り込んでいた。非公式の情報に基づけば、サウディアラビアは五○億USドル(約六一五○億円)を、武器支援などのシリア反体制派支援に費やしたという。>(203〜204p)

 アトワーン氏は「非公式の情報」と断っているが、6000億円以上の金、武器が「反アサド派」に提供され、その一部が(反アサド派にいた)ISに流れたとすれば、彼らが突然「勃興した理由」もわかる。

 ここまでで分かるように「シリア内戦」は欧米vsロシア、そして、スンニ派諸国vsシーア派の「代理戦争」と化した。そして、欧米や、サウジアラビアなどスンニ派諸国からの支援こそが、ISを短期間で一大勢力に成長させたのだ。  ちなみにオバマは13年8月、「アサド軍が化学兵器を使った」ことを理由に、「シリアを攻撃する」と宣言。しかし翌月には、「やはり攻撃はやめた」と戦争を「ドタキャン」して世界を驚かせた。この頃からISは「反アサド派」や「アルカイダ」の枠を超え、独自の動きをするようになっていく(アルカイダは14年2月、ISに「絶縁宣言」をした)。

 やる気のない欧米の空爆を尻目に勢力を拡大プーチンの本気の攻撃でピンチに

 独自勢力になったISは、次々に支配地域を拡大し、さらなる金と武器を手にしていく。14年6月10日には、イラク第2の都市モスルを陥落させた。ここには大油田があり、ISは重要な「資金源」を得ることに成功する。同年6月29日、ISのリーダー、アブー・バクル・アル=バグダーディーは「カリフ宣言」を行った。つまり彼は「全イスラム教徒の最高指導者である」と宣言したのだ。

 ISの現在の資金や武器は、どうなっているのだろうか?前述の本「イスラーム国」によると、資金源は以下の通りである。

 ・イラク中央銀行から、5億ドルを強奪した。 ・石油販売で、1日200万ドルの収入を得ている。

 ・支配地域の住民約1000万人から税金を徴収している。

 武器については、

 ・イラクとシリア両国政府軍拠点を制圧し、米国製、ロシア製の武器を大量に奪った。 ・2700を超える、戦車、装甲車、軍用車両を所有している。

 さて、米国は14年8月、「ISへの空爆を開始する」と発表した。同年9月には、今回テロが起こったフランスが空爆を開始。その後、「有志連合」の数は増えていった。しかし、米国を中心とする空爆は、あまり成果がなく、ISはその後も支配領域を拡大していった。

 米国を中心とする空爆に「やる気」が感じられないことについてロシアは、「ISを使ってアサド政権を倒したいからだ」と見ている。  15年9月30日、状況を大きく変える出来事が起こる。ロシアが、シリア領内のIS空爆を開始したのだ。ロシアの動機は、親ロ・アサド政権を守ること。そのため空爆も「真剣」である。1ヵ月半の空爆の結果、シリアのISは大打撃を受け、アサド政権は息を吹き返した。

 アサド軍は現在、着実に失地を回復している。追いつめられたISのメンバーが、難民に紛れ込み、欧州に逃亡を図っている可能性は高い。こんな状況下で11月13日、「パリ同時多発テロ」が起こったのだ。

 「パリ同時多発テロ」で世界情勢はどう変わるか?

 次に、「パリ同時多発テロ」で「世界はどう変わるのか?」を考えてみよう。 <フランス> まず、テロが起こったフランスは、ISに復讐しなければならない。ここで空爆を止めれば、「テロに屈した」ことになるからだ。実際、テロ翌々日の11月15日、フランス軍は、ISが「首都」と称するシリア北部の都市ラッカを空爆した。これは、今までで最大規模の攻撃だった。また、フランスは、原子力空母「シャルル・ド・ゴール」をペルシャ湾に派遣し、4ヵ月間駐留させることを決めている。オランド大統領は、今回のテロを「戦争行為」と断じ、最後まで戦い抜く決意を示した。

 <欧州全体> 欧州全体を見ると、今後難民に対する姿勢が硬化するだろう。難民の中にISメンバーが多数含まれている可能性は高い。とすれば、欧州は、「便衣兵」(敵を欺くために私服を来ている兵士)を大量に受け入れていることになる。規制が強まるのは、やむをえない措置といえるだろう。

 <ロシア>  不謹慎な言い方だが、事実として、「楽になる」のがロシアである。1年8ヵ月前、「クリミア併合」を決断したプーチンは、「ヒトラーの再来」「世界の孤児」と呼ばれていた。しかし、現在、「クリミア」「ウクライナ」のことを思い出す人は、ほとんどいない。それどころか、プーチンは、欧米にとって「対IS戦争の同志」になりつつある。

 ロシアが空爆をはじめた当初、欧米は、「『IS』ではなく、『反アサド派』を攻撃している」と批判した。ところが1ヵ月半の空爆で、実際にISは著しく弱体化している。オバマとプーチンは11月16日、G20が開かれていたトルコ・アンタルヤで会談。そこで、オバマは、ロシアの空爆に理解を示した。

 <<米露首脳会談>「シリア和平必要」…露IS空爆に米が理解米国のオバマ大統領とロシアのプーチン大統領が15日、主要20カ国・地域(G20)首脳会議が開催中のトルコ・アンタルヤで会談し、シリア内戦の終結に向け、国連の仲介によるアサド政権と反体制派の交渉や停戦が必要だとの認識で一致した。? オバマ氏はロシア軍が9月末にシリアで始めた過激派組織「イスラム国」(IS)への空爆にも一定の理解を示した。>(毎日新聞11月16日(月)12時28分配信)

 さらに、オランド大統領は11月17日、米国だけでなく、「ロシアと協力して」「イスラム国」と戦う意志を明確にしている。

 <仏米ロ、シリア北部のIS空爆 軍事的連携を強化へフランス、米国の空軍は17日、過激派組織「イスラム国」(IS)が首都と称するシリア北部ラッカを空爆した。パリの同時多発テロ後、仏空軍による空爆は2度目。これとは別に、ロシア空軍もラッカを空爆した。仏ロ関係はウクライナ紛争で冷え込んだが、オランド仏大統領は16日の演説で、対ISで従来の米国に加えてロシアとの軍事的連携も強化すると述べた。>(朝日新聞デジタル11月18日(水)2時0分配信)

 自称“国家”のISは消滅するがテロは今後も続く

 <米国> 米国は、今までの「ダラダラ空爆」を改めざるを得なくなるだろう。このままロシア軍がISを征伐してしまえば、超大国の威信は失墜する。これから米国は、「有志連合軍」を率い、真剣にISと戦うことになる。

 ちなみに、「反IS」で欧米ロが一体化することは、米国に「もっと大きな利益」をもたらすことになる。現在、米国最大の問題は、「中国の影響力が米国に迫っていること」である。実際、57もの国々が、中国主導「AIIB」への参加を決めた。その中には、英国、ドイツ、フランス、イタリア、イスラエル、オーストラリア、韓国など、「親米国家群」も含まれる(彼らは、米国の制止を無視して参加を決めた)。

 特に、伝統的に「親米」だった欧州が、「米中の間で揺れていること」は、非常に問題だ。米国は、ISとの戦いを主導することで、欧州との関係「再構築」をはかるだろう。そして、「中国と対抗するためにロシアと和解する」のは、筆者が4月28日の記事で予想したとおりである(記事はこちら)。つまり、「パリ同時多発テロ」がなくても、両国は和解に向かっただろう。しかし、テロはそのプロセスを速めた。 <IS> では、「パリ同時多発テロ」を起こしたとされるISはどうなるのだろうか?欧米ロが一体となって、全力をあげて攻撃をしかけるのだから、どう考えても勝ち目はない。結局彼らは、支配地域を失い、欧州、ロシア、旧ソ連諸国などに散らばっていくだろう。支配地域を持たない古巣のアルカイダ同様、世界のさまざまな地域でテロ行為を続ける。

 ISという、自称“国家”は消滅するが、そのメンバーは、これからも世界各地でテロを行い、民衆を恐怖させるだろう。

 http://www.msn.com/ja-jp/news/opinion/%e3%83%91%e3%83%aa%e5%90%8c%e6%99%82%e5%a4%9a%e7%99%ba%e3%83%86%e3%83%ad%e3%81%8c%e8%b5%b7%e3%81%8d%e3%82%8b%e3%81%bb%e3%81%a9%e3%81%ab%ef%bd%89%ef%bd%93%e8%86%a8%e5%bc%b5%e3%82%92%e8%a8%b1%e3%81%97%e3%81%9f%e6%88%a6%e7%8a%af%e3%81%af%e8%aa%b0%e3%81%8b%ef%bc%9f/ar-BBndIEb?ocid=LENDHP#page=1
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