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2015年10月22日09:25

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「南シナ」で後れとれば米は失墜

 下記は、2015.10.21 付の【湯浅博の世界読解】です。

                      記

 米海軍の艦船と航空機はいつ、中国がつくる南シナ海の人工島周辺12カイリ以内に入るのか。今月9日付の英紙フィナンシャル・タイムズが、米艦船は中国が領有権を主張している海域に「2週間以内に入る」と報じて以来、沿岸国の緊張が続いている。

 ちょうど先週末からは、インド洋で日米印の3カ国海軍が軍事演習を展開した。3カ国は19日まで、艦艇や航空機を使って敵の潜水艦を追跡する訓練を行った。3カ国の海軍幹部は記者団に、特定の国名を避けながら「世界中で『航行の自由』を確保するのが狙いだ」と説明した。

 米国による南シナ海への兵力投入は、文字通り「航行の自由」作戦と呼ばれ、幹部らの発言は中国が念頭にあることを示す。中国は南シナ海でいくつもの岩礁を埋め立て、3千メートル級の滑走路を持つ人工島を出現させている。

 南シナ海は資源が豊富な上に、世界の海上貿易の半分が通過する。習近平国家主席は中国が南シナ海を一度も支配したことがないのに、先の米中首脳会談で「南シナ海の島々は古代から中国の領土だった」と他国の関与を退けた。

 中国は南シナ海から中東湾岸へ抜けるインド洋でも、脅威を振りまく。インドのモディ政権は、中国が沿岸国に「一帯一路」を名目に、経済援助で近隣国に影響力を増していることに不満を抱く。中国からの投資は歓迎でも、ユーラシア地域で彼らが突出することは望まない。

 フィナンシャル・タイムズ紙は、「インドにとって、中国の欧州に向けたシルクロード再開や、インド洋への進出はインド包囲網に感じられる」のだと指摘する。

 すでに中印は1962年に軍事衝突しており、昨年はヒマラヤの国境付近で2千人の陸軍兵力が対峙(たいじ)した。にらみ合いは、習近平主席の訪印とほぼ同時に発生している。モディ首相が昨年、日本を訪れた際に、暗に中国を指して「拡張主義的な志向」を非難したのもうなずける。

 中国の地域的な野望が、モディ政権をして「インド太平洋戦略」へと押しやり「対米軸足移動」につながっているという。さらに、非同盟国家だったインドは、日豪やベトナム、フィリピン、インドネシアなどとの新たな関係強化も模索している。

 オバマ米大統領は米中衝突を過度に恐れるあまり、口で「アジア回帰」を語りながら、沿岸国の期待に応えてこなかった。中国にためらうあまり、常態の航行であるべき「航行の自由」を議論の的にしてしまった。米国内には、日本とオーストラリア、フィリピン、ベトナム、シンガポールからなる合同海洋パトロールをすべきだとの声があがる。これにインドが参加する可能性もでてきた。

 しかし、オバマ政権はそれを待つことなく現状の決定を実行すべきであろう。とかく弱腰を非難される同政権は、ウクライナやシリアへの対処でも後れをとった。習主席訪米前に「サイバー乱用で中国に制裁する」と言ったがやらず、相互に企業秘密を搾取しないとの合意にとどまった。

 南シナ海で「航行の自由」作戦が不発に終われば、中国やロシアが一挙に拡張主義を加速させ、逆にアジア沿岸国の失望が重なる。米国の失墜は世界に拡散して、世界は指導国のない「Gゼロ」のまま新しい冷戦を迎えよう。(東京特派員)

 http://www.sankei.com/world/news/151021/wor1510210027-n1.html
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