【現代語訳】
晴れわたった青空も、たちまち変って雷が鳴り稲妻が走ることもあれば、はげしい風雨も、たちまちやんで、名月のかがやく晴れ空に変ることもある。そのように、天地自然のはたらきには、なんのこだわりもない。人の心も、かくありたいものでる。
【原文】
霽日(せいじつ)・青天も、、たちまち変じて迅雷震電となり、疾風怒雨、たちまち変じて朗月の晴空となる。気機何なんぞ常あらんも、一毫の凝滞なり。太虚何ぞ常あらんも、一毫の障塞なり。人心の体も、またまさにかくの如ごとくなるべし 。
【解説】
人間は自然の恩恵のなかに生きる。空気があるから呼吸ができ、雨が降るから水が飲める。もし、自然がなかったら、そもそも人間は存在しない。ここからわれわれ祖先は「大自然の懐にいだかれて生きる」という正しい生活態度をあみだした。そして素直に自然から学ぼうとした。
――澄みきった青空も、たちまちのうちに雷鳴がとどろき、稲妻の走る後天に変ることもある。そうかと思うと、暴風雨の荒れ狂う陰惨な天気も、たちまちのうえにさやかな月の照る夜空に変ることもある。こうした変化を、自然は極めておおらかに、なんのこだわりもなくやってのける。
人間にとって、喜怒哀楽の情はつきものだ。心の底から喜ぶがいい、怒るがいい、哀しむがいい、楽しむがいい。しかし、喜んだ後、怒った後は、あの自然のおおらかさにならって、もはやそれらにこだわることなく、さっぱりしよう。
・・・・以上、野口定男「世俗の価値を越えて 菜根譚」より。
自然の大きさから見れば、人間界の変化など小さい小さい。細かいことなど見るな、聞くな、気にするなということ。
ログインしてコメントを確認・投稿する