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2015年10月14日09:53

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菜根譚前集72項 心の暖かい人



【現代語訳】
天地の気候は、暖かいと万物を生成させ、寒いと万物を枯れ死にさせてしまう。だから人間も、性格が冷たい人は、天から受ける幸せも薄い。ただ、なごやかで熱心な心の持ち主だけが、その幸せも厚く、恩恵も長く続くのである。

【原文】
天地の気、暖なれば則ち生じ、寒なれば則ち殺(さい)す。故に性気の清冷なる者は、受享(じゅきょう)も亦た凉薄(りょうはく)なり。ただ、気が和らかく、心熱つき人のみ、其の福もまた厚く、その沢もまた長し。

【解説】
天人相関の考え方がある。頑張れば、いつかは天がそれに報いてくれる。また悪事には必ず天罰が下る、という素朴な信仰である。そして通常は、「天」の具体的な現れとして春秋秋冬の四季のめぐりが重視された。また、それぞれの季節に応じた適切な人事があると考えられていた。

春は万物を生じさせる季節。夏はものを成長させる季節。秋はものを収束させ、採り入れる季節。冬は、ものをしぼませ、殺してしまう季節。これに応じて、人間界では、春に種をまき、夏に育て、秋に収穫を行い、冬にしまっておく。恩賞を与えるのは夏、刑罰を執行するのは冬、といった具合である。時節を違えた人事は天の怒りを招き、世界の混乱につながるとするのである。これを「四時説」という。

一日の中にも、この四時あり、朝は政治を執り行ない、昼は外出訪問し、夕方は政令を整え、夜は静かにわが身を安じる、と説かれる(『春秋左氏伝』昭公元年)。

論語に、「四時行なわれて、百物生ず」(陽貨篇)とあるように、四つの季節があってこそ、時はめぐり、万物は精子を繰り返す、どの季節が尊いということはない。

だが、人間の心は、やはりおだやかで温かい春のようなあり方を理想とする。それでいてはじめて、天から得られる幸福も厚いものとなり、恩恵も久しく続くのである。儒家の思想でも、春夏秋冬は一年を構成する四つの季節として重視されながらも、どちらかと言えば、暖かい春と夏がより尊く、冷たい冬はそれに次ぐ、と考えれるようになっていた。人間も温・冷の両面を持っているが、より大切なのは温かさであると考えたのである。

冷たい心の持ち主は、死の季節を生きている。天から与えられる幸せも、はかなく薄いものとなる。中国哲学の根幹をなす天人相関の考え方は、おのずからこうした人間観を導くのである。


※「菜根譚」はおおよそ400年ほど前に、中国・明代の学者・洪自誠によって書かれた処世訓です。日本には江戸時代末期に伝わり、これまで非常に多くの人から愛読されてきました。中国よりも日本でよく読まれているといわれるほどです。

すぐれた「人生の書」として、昔からから多くの人に読みつがれ、日本でも、先人たちはこれを「心の糧」とされてきました。
特に経営者や政治家、文化人に座右の書としている人たちが多く、東急グループの創業者・後藤慶太、元首相・田中角栄、小説家・吉川英治、元巨人監督・川上哲也、東北楽天を経て現在野球解説者の野村克也など、そうそうたる顔ぶれが愛読者だと知られています。

菜根は、堅くて筋が多い。これを噛みしめてこそ、ものの真の味がわかる。400年前、中国明代の末期に儒・仏・道の三教を修めた洪自誠が簡潔な語録の形でまとめたのが『菜根譚』で、短い文章であるが、含蓄ある言葉です。




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