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2015年10月01日17:20

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【短編小説】無題〜猫の一族と人魚族の話

★プロローグ

むかしむかし
人魚を食べる事でとても長命な猫一族が居ました

1人の猫族の青年が身重の人魚を匿います

青年は子供が産まれたら母親を食べ子供が成長したら子供を

食べ長老を出し抜くつもりでした


しかし猫一族の青年は母親を食べることで子供を自分で育っ

てるうちに情が生まれ海に返してしまいます

小さな人魚は恐れている猫一族からも愛された稀なる愛しい

人魚として長の元で大切に育てられました

そして少女になると人魚をもう狩らないよう猫一族へお願い

する使者として送りだされました


物語はこれから始まります


★貴方はだれ?

猫の一族の元に魚を沢山抱えて人魚は向かいます

広かった海はだんだん狭い川になり心細いことないのです
それでも少女は頑張って進みました

(人魚の一族の運命が私にかかってるんだ!)

狭い川が開けた湖にが見えました

あそこまで行けば身動きが自由になると思った瞬間

猫一族の攻撃の槍が飛んできます


お魚を抱えに抱えていた人魚は川に体を沈めるだけで
難を逃れましたが
このままでは話し合いもできません

槍の攻撃は困っているとすぐ止みました


人魚の耳は聞き洩らしません
静かで落ち着いた声が一声でその場を沈めてしまいました


「出ておいで若き人魚よ」
静かな声の持ち主がいいます

まだ少女の人魚が顔をだし陸に上がります
下半身は魚のそれですから
人魚の歩きは匍匐前進です

ですが水圧で鍛えられた人魚の歩みはけして遅くはありません

静かな男の前までくると人魚なりの綺麗な正式な座りと言え

るのでしょう座り方で恭しくお辞儀します

「助けの声を下さり誠に感謝します。私は猫一族の長に会っ

て人魚族との和解を求めに参りました。どうか長の元まで案

内連れて行って貰えないでしょうか?」

「この私が確実に長の元に届けよう誰何人たりともお前を食

わせたりしない。例え長老でもだ」

そう言われると急に抱きすくめられ耳のいい猫族でも人魚族

でもやっと聞こえるほどの声で男が言いました

「お前を食べるのは私しか許さない」

少女はそう言われても怖くないその男を不思議に見やると

「あなたはだれ?」

男の眼が優しく細まるののでした



★長の元へ

大勢の者たちを遠巻きに引き連れて人魚は
長の元へ行きました

そして人魚は言います
猫の一族は人魚の肉など食べなくても本来長命なのだと

長は首を横に振ります
我の娘は人魚の肉を食うのを拒絶して早死にした
人魚の肉は長命だけでなく力も与えてくれると

人魚は悲しい声でいいます
「猫の一族は人魚の肉で借り物の長命と力を得ました
でもその代償は大きかったのです
本当の長命と多大なる魔力を失ってしまいました

それを証明説明できるのは…闇の森に居る魔女だけです
姿をみればわかると思いますが
彼女らは猫の一族の祖先になります

本来の魔力と長命さで永遠に等しい命を抱えています
そして彼女たちだけは人魚の相談にも
ずっとのってくれてました

人魚を大量に食べれば再び大きな力と魔力を得ますが
命は短くなってしまうのです」

ざわざわと周りの者たちが騒ぎたてます
猫の一族にとって闇の森は長い間鬼門の地とされ
入りいる事もしなかったのです

そこに自分たちの一族がいて人魚たちも助けられて
いるとは信じがたい事でした

★幽閉

長老が決断したことは
人魚を大きな透明の壺に幽閉することでした

それは昔に人魚の母親が男に匿われていた時に使われてたのです

男が人魚を一人で食べてしまったことと
少女を幼少のころ逃がしたことを
許して貰う為に男が長に差し出したものでした

長老は人魚を閉じ込めて
人魚たちを探りを入れるように仲間に言います
しかし一向に人魚は闇の森に入る様子無く
長老は少女のたわごとと決めつけ
少女を長老衆で分け合い食べることに決めました

少女は嘘はついてなかったのです
人魚たちは魔女の住む近くの泉と海が繋がっていて
水の回廊を泳いで移動していただけでした
泉は塩水でできています
悲しいことにそれを訴えても信じて貰えず
少女は死を覚悟するのでした


★決断


「人魚……私に食べられる気はあるか…」
出会った時と違いそれは男の苦渋の声でした
少女は男を見やります

「それで何かが変わりますか?」
「その水槽はもともとお前の母親が入っていたものだ
抜ける事は一人ではかなわぬが俺の力があれば別だ
逃がしてやってもいいがそれではお前も戻って
一族の汚れとなるだろう
私が食べればお前に罪は無くなる
そしてお前を食べれば私は長老の力を超える
長としてお前の持ってきた最大の望みをかなえよう」

「母を…一人で食いつくしているのですよね?
私も食いつくすことが意味することは長老に話すとき
聞いてましたよね」

「短命で構わない…もう1000年は生きているお前の50年を
考えたら長すぎるくらいだ
人魚の一族に手をださないように一族がなるだけ生きられればいい」

少女の涙がほろりと落ちる
「せめて最後に口づけを」

男はその願いをかなえた
そして涙をぼろぼろこぼしながら少女の肉を口にした

力がどんどん溢れていき長老を凌ぐのがわかる
半分も食べた頃残った上半身で少女が抱きついてくる
魚の部分が無くなり随分と軽くなった



★魔女の元へ

そこまでだった…
軽くなり命の雫をたゆまなく流す人魚の少女を抱きなおし
立ち上がると誰も通らぬ不気味な森の中を走る



そして辿りついたのは一軒の大きな屋敷だった
でもどこか闇の森に見事に溶け込んでいる
荒れた城内で男が叫ぶ

「古き魔女猫よ!私の願いをかなえてくれ
この少女を生かしてくれ!!」

その声は涙に交じってるだけでなく悲痛な声だった

一匹の黒猫がやってきて人に変わる

「人魚か…食えば美味。そして長命になる」

いつの間にか後ろに居た白猫が人に変わる

「人魚か…それは猫一族の罪の証」

そして最後に階段の上に現れた金色の猫が人に変わる

「我らは人魚の肉など口にしたことはない
なのに見よ。この長命、この魔力、この美しさ
滅ばぬものと恐れられ闇の森に身を置いてるが
誰もかなうものなどいやしない」

次に黒猫だったものが再び声をだす
「命がほとんど溶けている白猫早く魔法を手遅れになる」

白猫だったものが何やら訳のわからぬ言葉を紡ぐ
みるみると人魚の傷口は収まり日本の足が生えた

男が目を見張る元の姿に戻ると思いや足がある
でも猫の耳はない。これは何に変わったのだか首をかしげる

金猫だったものがそれに答えた
「遠い遠い地方に居る人間という生き物よ。命の欠片がそれ

くらいしか残っていなかった。歳をとるのも早いぞ死ぬのも

早い。お前はどちらにしろその人魚だったものを失う羽目に

なる」

人魚だったものが聞く
「どれくらい生きられるのですか?」

金色の猫が答える
「ほんの残り60年くらいのものだろう…」

人魚が男を見る
男は人魚だったものを見る

「歳をとる私をみるのは辛いですか?」
男は首を横に振った
「辛くないと言えば嘘になる。
だがお前に人魚と猫一族の和解を見せるには十分だ
まずは長と戦う勝ってから統治を始めよう」

金色の猫がいう
「急いだ方がいいと思うぞ
猫族の新たなる長となる者よ
お前の寿命も60年ほどしかないからな
老化こそ来ないがその命はその女の再生に使われた」


★エピローグ

激しい戦いも終わった

一族の反対も人魚族を食べる危険を説いて説得した

もともと長命だった猫の一族が

その美味に心奪われ短命になることを覚悟で食べ始めた

そして食べないことには長生きできない体になった

呪いを解くには和解しかなかった

しばらくは短命な命の中で新たな命を紡ぎ繰り返すしかない

だが人魚の血と呪いが解ける頃

猫の一族はまた長命な命を得るようになる

それはまだまだ先の話
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コメント

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