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2015年09月29日01:00

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怪しい夜を待って、月の囁きを寝所で聞こうか

昔、昔のお話は、年に一度の月の晩に始まる。

風を撫でるススキ穂は、狐の忘れたしっぽではないの?

赤いべべ着た ちいさこべ

泣いて、泣いて、お月さまを困らせた。

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〜ととさま、あのお月さまは、私を呼んでるの?

年を重ねてから人の親になったととさまは、こう言った。

『赤いべべ来た小さな我が子、あの月はお前を呼んだりはしないよ』

〜では、ととさま、どうしてあんなに輝くの?

『小さな童、ととさまの話を聞いてみるか?』


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昔、昔

やたらと雨の多いときがあった。

田畑は水浸し、川は 今にもあふれんばかり。

里人は、息を殺して雨のやむのを待つばかり

『龍神様のお怒りじゃ』誰かが叫び、その声を追って また 雨は降る

川は決壊、家も水に浸る

『わずかばかりの残ったコメは、すべて年貢。我らの口には入らぬ』

『神も仏もあるものか』

『もう、なんの力も出ぬわ』

やっと 雨は止み、様変わりした情景があるばかり

人は、我を失い、力もなくし、希望も見えぬまま。


『それでも、誰のせいでもないのじゃろ』

『そうじゃ、誰も悪うない』



ふいに、目の前の者の顔が輝き始めた。

『なんじゃ?』


今日は、年に一度の月夜

上がった雨は、雲も連れ去った

そして、闇夜に浮かぶ 満月


『顔をあげよう』

『そうじゃ、わしらは 物をなくしたが いのちはあるじゃないか』

『あの月に、わしらの顔を見せてやろ』

『八百万の神々よ、龍神様よ、こうやって いつも お月さんにわしらの顔をみせてやる。』

『明日、また 野良に出て働き、疲れた夜に、また わしらの顔をみてくだせぇ』



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ちいさこべ、ととさまの話は ここまでじゃ

あの お月さんはな 人の笑う顔が好き

今日一日、つこうた いのちを有り難く思い 

その 笑うお顔を お月さんにみせておあげ


〜 ととさま、お月さまは・・・

わしら 人に 力を与えてくださるのだよ





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遠い 遠い昔

まんまる月の晩に 父と子の声は風に乗り

あなたの元へ そろそろ たどり着く頃でしょう




今宵 中秋の月夜に 痛んだ心へ届けます。
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