下記は、2015.9.24 付の【産経抄】です。
記
「領土の代わりに、死んだロバの耳をくれてやる」。10年前の対独戦勝60周年記念式典後の記者会見で、ロシアのプーチン大統領の口から出た、罵(ののし)りの言葉である。
▼バルト三国のラトビアが、ロシア領となっている隣接地域を「固有の領土」として、返還要求していることについて、質問が出たときだった。当時時事通信のモスクワ支局長として、現場を取材していた名越健郎(けんろう)さんは、カッとしたときにプーチン氏が発する、独特のスラングだという。
▼発言はこう続く。「固有の領土と言うのなら、クリミア半島(ウクライナ)はどうなる。ロシアの固有の領土を返してくれ」(『独裁者プーチン』文春新書)。その言葉通り、ロシアは昨年3月、クリミアを一方的に併合した。
▼ならば、日本の固有領土であり、70年前に旧ソ連が不法に占拠した、北方四島については、どうか。どうやら「死んだロバの耳」しか、渡すつもりはないようだ。モスクワで開かれた日露外相会談では、ロシアの強硬姿勢が目立った。
▼「北方領土の話はしていない。議題となったのは、平和条約締結問題だ」。ラブロフ外相の発言は、領土問題の存在さえ否定するものだ。メドベージェフ首相は先月、日本側の強い制止を無視して、択捉(えとろふ)島への訪問を強行した。ロシア側からは、北方領土の不法占拠を「第二次大戦の結果」と正当化する発言も相次いでいる。すべて、プーチン氏の意向に沿っていることは言うまでもない。
▼柔道を愛する親日家というプーチン氏のイメージは、大いなる幻想だった。名越さんによれば、問題の解決には、「正義の外交を実行し得る政権の登場を待たねばならない」。その通り。ましてプーチン氏の年内訪日など、とんでもない。
http://www.sankei.com/column/news/150924/clm1509240004-n1.html
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