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2015年09月13日21:41

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実像に反する大国意識(再掲載)

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「安保法、原発、多額の海外支援、そして国威発揚型の巨大オリンピック大会。
推進者たちはそれぞれの「仕事」で権力と富と名声を得るが、そこにこの国の「リアル」はない。
日本の実像は国の借金1千兆円を超える世界の借金王であり、これから本格的な人口減少に苦しむ衰退しつつある国なのだ。」

11日の道新「各自核論」より
作家 藤原智美さん
「この国の設計図 実像に反する大国意識」

いつの間にか、東京の都心は超高層ビルが林立する街になった。今も少しの隙間でもできれば、たちどころに新しいビルが建つ。
広く整備された車道で目につくのは、磨きあげられた最高級の乗用車だ。ガラス張りの商店の中には、高級ブランドの衣服や宝飾品がずらりと並ぶ。

この街を歩くと、私は日々抱えている憂鬱な気分が一瞬消える。
高齢化が進み介護の重圧に悲鳴を上げている故郷の町のこと、
以前取材で出会ったネットカフェでその日暮らしをしている若者のこと(彼女は今も睡眠剤を常用しているだろうか)、
保険適用できない最新のガン治療をあきらめた知人のこと、
今も垂れ流されている放射能汚染水のこと、
そんな心配事などつい忘れてしまうのだ。

しかしこの都心部を包む豊かさは私とは無関係なのだ。目前の交差点に停車しているドイツ製の最高級車に、私は生涯乗ることはないだろう。

この一極集中的に繁栄する街で、国の将来を議論し設計図を描いているのが政治家や官僚たちだ。
彼らはほかの誰よりもこの国を熟知し、全体を客観的に鳥瞰(ちょうかん)していると信じている。

疑問を投げかけると、たちまちデータと数字に還元しその証拠をみせる。
たとえば「(新国立競技場に)2500億円くらいだせないんですかね」といった元首相のように。
彼らの中では2500億円は「くらい」という言葉でくくられる金額なのだ。

今年の1月、安倍首相は中東を訪問して総額約3千億円の支援を約束した。
4月、首相は米国議会でスピーチして喝采を浴びたが、直後に米国から輸送機オスプレイを3600億円で購入することが判明。
5月にはアジア開発銀行と連携し、約13兆円をアジアのインフラ整備に投じると表明した。

8月には川内原発が再稼動した。原発の安全対策には今後3兆円近くが必要だというが、もう誰も「絶対安全」とはいわない。
しかもこの額には、これからも発生し続ける福島第1原発の事故処理費用は含まれていないし、今後、原発が廃炉になって、出てくる廃棄物の保管にいったいどれくらいかかるのか、その試算すら明らかになっていない。

そもそも日本の原発は「これから電力は足りなくなる」「原油は枯渇する」という思いこみのもとに出発した。
その背景には経済成長神話があった。しかしやがて日本の人口は1億人をきり、電力需要は縮小することは明らかだ。
にもかかわらず新しい原発の建設が今も進む。

安保法が成立しようとしている。
この法律には多くの賛否の声があがっているが、それが今までできなかった軍事行動を可能にするためのものであることは誰もが認めている。
行動範囲が広がれば当然、新たな兵力、資金が必要となり、場合によっては多くの人命をも差し出すことになる。

安保法、原発、多額の海外支援、そして国威発揚型の巨大オリンピック大会。
私にはそのどれもが、一つの妄想=大国意識によってできあがっているように見える。
推進者たちはそれぞれの「仕事」で権力と富と名声を得るが、そこにこの国の「リアル」はない。

日本の実像は国の借金1千兆円を超える世界のバンスキング(借金王)であり、これから本格的な人口減少に苦しむ衰退しつつある国なのだ。
東北の復興は遅々として進まない。それが私たちのリアルである。

弱った体に、霞が関や永田町という都心部の主たちは、今までにない豪華で思い鎧(よろい)をまとわせようとする。
気がついたときには、肝心の肉体が鎧におしつぶされているかもしれないというのにだ。

■「原発は環境汚染産業」 小泉元首相、再稼働を批判
(朝日新聞デジタル - 09月12日 22:07)
http://news.mixi.jp/view_news.pl?media_id=168&from=diary&id=3613270
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