約半世紀、掃除の道を貫いてこられたイエローハット創業者の鍵山秀三郎氏のお話です。
「人生を分ける2文字の差」
私は二十歳でカー用品の業界に入った時、なんと質の悪い業界だろうかと思ったんですね。
業界全体が実にあくどい、質の悪い仕事をしていました。
自分の人生を捧げるに当たって、このままではいけないと思いましたね。
自分の会社の収益だけを考えていては駄目だと。
業界全体の悪しき習慣を変えたいと思って、それを実践してきました。
例えば、職場が汚い、接客が乱暴、雪が降ったらタイヤチェーンの価格を10倍、20倍にする、手形商売でいつも支払いが遅い、・・・・・・・・そういったことを一つひとつ潰していきました。
その頃、同業者はよく倒産しました。原因は何か? 過剰在庫です。
大量に仕入れれば安く買えるというので販売能力を超えた量を買うわけですね。
手形の期限をいくら延ばしても落とせない。だとしたら在庫を適正にしよう。
それには適正に配給できる施設を造らなくてはならないというので全国に4カ所、物流センターを造りました。
ケース単位だった納入は個数単位に変えました。
こういうことを業界全体の改善のために一つひとつやってきたんです。
念業界全体から悪い評判を立てられてメーカーが商品を引き揚げに来たり、暴力団に監禁されたり、さんざんな目にも遭いました。
でも、私はこの考えを通したからこそ、危険はあったけれども会社は存続できたと思っています。
もし私が業界の悪しき習慣に流されて、業界全体がこうだから仕方がない、こんなことは変えることができないと思ってきたとしたら、私はつまらない人生を送ったと思います。
そこで簡単な言葉ですが、
「やっておいてよかった」
「やっておけばよかった」
僅か二文字の違いだけれども、その差はどこまでも大きい。
私は幸いに「やっておいてよかった」と思うことが多いんです。
ところが、いろいろな人を見ると、
手遅れになってから「やっておけばよかった」と言って悔いを残す人が多いですね。
私は皆さんには
「やっておいてよかった」
「言っておいてよかった」
「会っておいてよかった」
という道を歩んでいただきたいと思っております。
以上、『致知』(2013年7月号)より。
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