先日、古代ローマ最大の詩人ウェルギリウスの『アエネーイス』を読み終わりましてん。
ダンテの『神曲』に、地獄と煉獄の道案内でウェルギリウス(作中名はトスカーナ方言でヴィルジリオ)が登場するのですが、まことにカッコ良いんですよねえ。
『アエネーイス』は、古代ギリシャのホメロスの二大叙事詩『イーリアス』と『オデュッセウス』を参考に作られていて、作品の舞台も同じトロイヤ戦争の時代です。
主人公アエネアスが陥落したトロイからギリシア軍に追われてイタリア半島に辿り着くまでの前半の遍歴が『オデュッセイア』に、イタリアで宿敵トゥルヌスと戦いローマ帝国の祖となる後半部分が『イーリアス』に似ています。
『イーリアス』、『オデュッセイア』との違いは、この二作が盲目の吟遊詩人ホメロスの作と言われていますが実際は不明で、それに対して『イーリアス』は本当にウェルギリウスが書いた作品です。
また『イーリアス』、『オデュッセイア』は細部がけっこうてきとーでやたら繰り返しが多くて笑いを誘うのですが、見せ場になると信じられないほど力技で盛り上がるのに対して、『アエネーイス』は筆致にブレが少なくて非常に理知的な構成です。
これはたぶん前者がアオイドス(吟遊詩人)が聴衆に聞かせる語り部の物語が元になっているのに対して、後者は初めから紙にペンで書かれた叙事詩なので、双方の成り立ちの違いが影響していると推測されまする。
でもどっちが好きかと問われたら、ダイナミックなホメロスかなあ。
と、今は読み終わったのでチャンドラーの『さらば愛しき人よ』を読んでます。
フィリップ・マーロウね。
プロットも推理も相変わらずいーかげんですが、文章は都会のリリシズムがあって楽しめる。
清水俊二さんの訳は良いんだけど、ところどころ古さを感じるなあ、残念。
あと、去年はトマス・ピンチョンの『逆光』を読んだ。
長さは長い長い作品が多いピンチョンの長編の中でも最長なのですが、内容は彼の代表作『重力の虹』のほうがイカしてるかな。
『逆光』は、19世紀から20世紀の変わり目が舞台で、反体制のテロリストのトラヴァース一家と資本家のバイブ一族の息がつまる怨念の応酬と並行して、荒唐無稽な空想科学小説やタブロイド誌から抜け出てきたような、少年団「偶然の仲間たち」が乗った飛行船<不都号>の冒険譚が語られます。
ラストは、テロリスト一家と資本家一族がカタルシスも解決もなんもないぐちゃぐちゃのドロドロで終わるのに、<不都号>の仲間たちは巨大な飛行船を幾つも繋いで、現在のネット社会を彷彿とさせるような国家も人種もない大空中都市を作る、という救いのある終わり方をします。
なんか、示唆的よね。
あと、現在ドン・デリーロ『アンダーワールド』も読んでます。
もうすぐ、読み終わるよ。
あまり笑えるところの少ない作品なのですが、今日読んだ箇所にカトリックの小学校でシスターにアダムとイブの絵を見せられて、「この二人は誰でしょう?」と質問された男の子の答えが、「ターザンとジェーン」。
シスターに黒板に叩きつけられ、教室のみんなが震え上がる場面があってはじめて、爆笑。
いやあ、読書ってホントに良いものですね。
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