下記は、2015.7.29 付の【産経抄】です。
記
幕末の開港によって、外国から馬車が持ち込まれた。福岡藩士だった和泉(いずみ)要助は、「馬の代わりに人に引かせたら便利だろう」と考えた。
▼知り合いの八百屋の鈴木徳治郎と車大工の高山幸助と協力して、明治3(1870)年に発明したのが、人力車である。明治新政府の支持もあって、数年後には全国に普及する(『日本史再発見』板倉聖宣(きよのぶ)著)。
▼米サンフランシスコでは、タクシーがなかなかつかまらない。業を煮やしたトラビス・カラニックさんが、思いついた新しいビジネスだという。スマートフォンを使って、ハイヤーを配車するシステムだ。6年前に創業したベンチャー企業「ウーバー」の事業は、今や世界58カ国に広がっている。
▼さらに、客が近くを走る一般の車を見つけて利用するサービスも、展開している。客にとっては安い料金、ドライバーにとっては、手軽な小遣い稼ぎが魅力である。もっとも仕事を奪われるタクシー運転手は、猛反発している。フランスでは先月、各地で大規模なデモが起こり、一部が暴徒化した。
▼ウーバーが福岡市などで試験的に行ってきた同様のサービスは、国土交通省から中止を求められた。無許可営業の「白タク」にあたるというのだ。本場米国でも、論議を呼んでいる。民主党のクリントン前国務長官が、懸念を示すのに対して、共和党のブッシュ元フロリダ州知事らは、ウーバー支持にまわる。大統領選の争点のひとつにもなりそうだ。
▼人力車が出現するまで、人を乗せて運ぶ仕事は、駕籠(かご)かきが担ってきた。人力車の利用が増えると、「商売のさわりになる」と、けんかをふっかけることもあったらしい。ただ、車夫への転職が進むと、収まった。ウーバー問題の決着は、いかに。
http://www.sankei.com/column/news/150729/clm1507290003-n1.html
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