今週の科学ニュース-7月19日

　皆様、こんばんは。
　関東は梅雨が明けたそうです。夏本番ですが、熱中症にはご注意。

　今週は、冥王星特集という感じです。

・米探査機、冥王星に最接近 「歓喜の瞬間」
　この度、NASAが打ち上げた探査機ニューホライズンは、9年半あまりの飛行の末に7月14日に無事冥王星に最接近することに成功し、多くの写真・データの収集に成功したと見られると発表されました。ニューホライズンが打ち上げられてまもなく、冥王星は『惑星』から『準惑星』になりましたが、それでも、太陽系外縁部のカイパーベルト帯を代表する天体としての地位に変わりはなく、今回の観測の成功は、大きな意味を持っていると思われます。
　以下、NASAのHPからいくつかの写真を紹介します。
　冥王星に接近しつつある時点で撮影された写真から、冥王星は以外とその表面にクレーターや崖などの起伏が豊富で、大きなハート型の領域も見つかりました。この領域は、NASAにより、非公式ながら、「トンボー領域」と名付けられました。トンボーは、皆様もご存じの通り、冥王星を発見した天文学者の名前です。
　また、撮影された写真から、、衛星カロンと冥王星本体の大きさが従来より大きめであることがわかりました
　最接近した際に撮影した写真では、氷で出来ていると思われる山脈が写っていましたが、その高さは、約3500m(富士山クラス)と推定されました。
　また、さっきのトンボー領域の表面の写真も撮影され、その表面はけっこうのっぺりした大平原であることがわかりました。また、その大平原を形成しているのは、一酸化炭素の氷であることもわかりました。この平原を中心に、冥王星全体にその表面のクレーターの数が少なく、冥王星規模の小さめの天体でも何らかの形で地表の変動が起こっていると考えられるとのことです。
　ナショナルジオグラフィックは、この結果を基に、冥王星表面の想像図を出しています。なかなかSFチックですばらしいのですが、実際にはこんなに明るくはないはずです。
　天文学者達が注目したのは、冥王星本星だけでなく、衛星カロンもその対象となりました。特に注目されたのが、クレーターがあまり見えない特徴的な地表の様子です。本来なら、地球の月くらいぼこぼこになっているはずなのですが、地球の月よりだいぶ小さいので、衛星自体の持つ熱による地表の更新の可能性が少ないはずなのに、何らかの理由でクレーターが消えていると考えられるとのことです。また、表面には「深い峡谷や地溝、崖、それに謎めいた暗い領域がある」とのことで、当分研究するに足る成果が出たようです。なお、この暗い領域は、非公式ながら、「指輪物語」ファンにはなじみある、「モルドール」と命名されたとのことです。
　探査機ニューホライズンと地球との間の通信速度が遅いため、ニューホライズンが収集したデータがすべて地球側にダウンロードされるまでまだあと16ヶ月もかかるとのことで、まだまだ新しいことがわかってくると思われます。次の版の地学の教科書の冥王星の項目は大きく書き直されることは間違いありません。

・恐竜：国内初の大型ティラノサウルス科　長崎で歯の化石(福井県立恐竜博物館)
　日本は火山国なので、その影響で古い地層が壊されて少ない現状があり、恐竜の化石が出にくい国として知られていますが、それでも、今まで何体かの草食恐竜を中心にした恐竜の化石が出てきていました。今回、長崎県で見つかった肉食恐竜の歯の化石を鑑定したところ、チラノサウルス科の大型肉食恐竜のものであることがわかったと発表されました。草食恐竜がいたと言うことは、当然、肉食恐竜もいたはずなので、やっぱり、と言うか、ようやく見つかったかという感じではないかと思われます。後は、歯以外の部分の発見も期待されるところです。
福井県立恐竜博物館のプレスリリースはこちら。

・不妊治療に期待…ヒトｉＰＳから精子・卵子のもと、効率よく作製(京都大学)
　iPS細胞は、マウスでもヒトでも同じように作成できますが、その応用研究に関しては、マウスを対象にしたものが多く、ヒトへの適用は(倫理的問題もあって)限られていました。今回の京都大学の研究は、ヒトの始原生殖細胞(精子や卵子の元)を人iPS細胞から作成することに世界で初めて成功したとのことで、この点でのヒトとマウスとの違いをはっきりさせるとともに、この技術の応用による不妊治療に期待できそうです。
京都大学のプレスリリースはこちらとこちら。
Cell Stem Cell誌の該当論文のAbstractはこちら。

　では、また来週。