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2015年07月06日10:06

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「表裏の間」(詩と小説)

新しい風

新しい光

新しい蒼

産まれたての空を見上げて

微かな産声に耳を傾ける

新しいものに満ちた世界は
僕の心まで新しいものにしてしまう

「おはよう」

近くに人はいない

この言葉は誰かに向けた訳じゃない

僕自身に向けた

新しい言葉だ。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「と、学生の頃の初心なトシは帰らないのでした」

口角を釣り上げた友人第一号
沢渡 優は
笑うように言った

「まるで今の僕が汚れているみたいな言い方止めてくれるかな?」

「社会の荒波に揺らされた人の心は初心でいられるのでしょうか?
否、私は見たこと無いですね〜
ええ、きっと大和撫子が日本からいなくなったと同じ理由でしょう」

喉が渇いたのだろうか…
ガストのドリンクバーで
淹れてきた烏龍茶を一口つけてから
言葉を続ける

「そう、日本の気候に照らし合わすかのように、ジメジメとしているからなのです!
湿気が多い日本は、きっと人々の性格も陰湿になってしまったのですよ!」

「そんなユウが一番汚れているよ」

一般のコメンテーターより喋る彼相手に気力が持たない…

呆れたように、そう返事を吐いた。

現在午後23時を迎えた
仕事帰りに寄った
24時間営業のファミリーレストラン
同僚と一緒に食事をするにしても
マシンガントークの嵐を凌いだ先には
光が乏しくなった街並みが
窓の外に広がっていた

携帯に綴った詩を
勝手に見られた事なんて
どうでも良かった

取り敢えず帰りたい…

「そろそろ帰ろうよ、疲れた」

「えー、まだこの店から元をとれる程、ドリンクバーを利用していないのですが!?」

「ユウは何と戦っているの?そんなことしてたら、時間の元が損しちゃうよ」

あ、こいつ、上手いこと言ったな
と少々にやけた顔で
こっちを見るのを止めて欲しかった


店から出ると
6月末にしては冷たい風が頬を撫でた

「じゃあ、帰るね。おつかれ」

彼に簡素な別れ言葉を告げる

「ええ、また三日後に仕事場で会いましょうね、その時はまたポエ…」

最後まで聞いていると
朝を迎えそうだったので
聞き流しながら車内に滑り込んだ

ここまでが一連の作業なので
彼も分かってくれるだろう

ふて腐れた振りをしながら彼も
自分の車へ向かっていった。




青いスイフトで夜中を走る
街のネオンが通り過ぎ
車体に流星が流れる

ふいに、
この風景を眺めていたら
感傷的になった


この夜には古いものばかり

新しいものは時間が経つ程
色褪せていく
やがて炭よりも黒く
この夜のように
真っ暗になっていく。

だけど古いというのは
悪いことではない

それは新しいものへ変わる前…

積み重ねた経験が古い物になり

明日によって新しくなる

まるで脱皮する蛇のように

私達は日々成長していく…。



「まだ時間はあるか…」

時刻は深夜に入る前の23時45分

明日は休日だから
時間は無駄にしても良い

それにこのドライブも時間潰し
気分を晴らしたかったからかも知れない…
これから始まる事に対して…

僕には秘密がある

誰にも伝えられない秘密がある

そう、”彼”にも。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「連続殺人事件exclamation ×2今月で3人目、犯人は未だ行方知れず」

全国区に発行された
新聞の見出しには
こう書かれていた。




7月の始まり

古びたマンションの一室

目覚めたばかりの光は
寝惚けた脳へ入り込んでいく

少々ふらつきながらも
ベットから抜け出した

いつもの日課として
新聞広げる

「3人目ねぇ…」

縦に並んだ字列を読み進める
そして辿り着いた

「6月末、滋賀県近江八幡市大杉町で〜〜
被害者は
OO会社社員 沢渡 優(23)」


死が訪れた物は
新しさも
古さも
全ての意味を失い

ただの無になる…。






















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