ベルギーは、人口１１００万人の小国ながら、歴史のある王国であり、また、ＥＵ本部が所在するために、ＥＵの首都とも称される。
シンフォニック・ロックは盛んというほどではないが、１９７０年代からの伝統があり、様式美を重んじたメロディアスなものが多い。
・ 曲 バンド アルバム
�� Gimme a light / Madelgaire [ (Im)Patience 2010 ]
マデルゲールは、ドミニク・ロシノルをヴォーカリストとする５人組。ジョン・アンダーソン似の爽快なハイトーン・ヴォーカルであり、コーラスも交えて次々と拍子変化して行く楽曲は、イエス・タイプの様式美そのもの。メロトロンも流麗で、フルートが加わり、更に生ギターの清らかな爪弾きなど、小曲が数珠つなぎになっていて、起承転結がある。まるでクラシックの交響曲のようだ。最近のイエス以上にプログレの醍醐味を味わわせてくれる。幻想世界の長い冒険の旅。伝統的シンフォを最高度に昇華している。ヨッシー様の推薦。
�� The benefit of anxiety / Mindgames [ Actorrs in a play 2006 ]
マインドゲームズは、バート・シュラムをヴォーカリストとする５人組。この人は、長髪、髭のイケメンである。サウンドは、ジェネシスタイプであろうし、ヴォーカリストもそのつもりか様々な歌い方をするのだが、何しろ声がハイトーンできれいなのだ。メロディアスなヴォーカルで、やや力強く歌い上げて行く。演奏も緻密で、拍子変化も多彩。そして、朝焼けのように清涼なのだ。チェロが登場する曲もある。ヨッシー様の推薦。
�� After the crop / Machiavel [ Mechanical moonbeams 1978 ]
７０年代から現在も存続するマキャベルは、５人編成でヴォーカルのマリオ・グシオがフルート、サックス、クラリネットも吹く。生ギターから始まる曲はジェネシスに似ているが、しかしメロディアスなサウンドが、途中、劇的に盛り上がる。かつてベルギーのプログレと言えば、「マキャベルかイソポダ」と言われたのだという。それだけに本格シンフォであり、しかも夢見るような情感に満ちている。つるみん様の推薦。
�� Talking about my love / Banzai [ Hora nata 1974 ]
バンザイも、７０年代のバンド。５人編成で、ドラマーが吹くアルトサックスがポイントになっている。優しくキャッチ―な曲。メロディーが良くて、コーラスが柔和。ポップな小曲だが、愛すべき可憐さだ。メンバー５人は、色とりどりの中世風コスチュームを着ていた。
�� Godspeed / Fish On Friday [ Godspeed 2014 ]
新鋭の現代バンド、フィッシュ・オン・フライデー。５人編成のダブル・キーボード・スタイル。キーボードにコーラスが絡んで進行する。ヴォーカルよりも、コーラスが中心だ。割と似た声質のコーラスのためか、靄がかかったような乳白色のシンフォニックな音響だ。イエス・タイプを志向しているが、ややへヴィネス不足か。
�� Considering / Isopoda [ Acrostichon 1978 ]
イソポダは、７０年代を代表するシンフォ・バンド。ベルギーのバンドは、基本編成の５人組が多いが、これはマキャベルやイソポダの影響かもしれない。ベーシストがフルートも吹く。優しく語りかけるようなヴォーカルに地を這うようなストリング・キーボード。決して派手ではないが、静と動を繰り返し、よく構成されたシンフォだ。フルートやビブラフォンも色彩感を増している。
�� The eclectic measure / Hypnos 69 [ The eclectic measure 2007 ]
ヒプノス６９は、４人編成で、メロトロン・サックス・クラリネット奏者がいる。ともかくメロトロンへのこだわりが強い。延々とバックに流れていて、そこにひねった感じのヴォーカルやコーラスが乗って行く。間奏で延々と弾きまくるギターが、サイケデリック。シンフォにサイケ感覚が加味されて、意外に新しいサウンドだ。 メロトロンとギターの絡みとなって、極めつけの快感が持続する。
�� Meet again / Waterloo [ First battle 1970 ]
１９７０年というベルギー・プログレの黎明期を飾るワーテルロー。これって、ナポレオンの戦場として有名。ジャケット絵もナポレオンだ。ＥＬＰのようなハモンド・オルガンを使ったオルガン・ロックを展開する。コーラスのテンポも良くて、キャッチ―で気持ちの良い小曲。５人編成で、やや男性的な響きのヴォーカリストは、フルートも吹く。ヨッシー様の推薦。
�� Gone in the wind / Dragon [ Dragon 1976 ]
ドラゴンも７０年代のバンド。メンバーは５人だが、楽器は多彩で、トロンボーン、サックス、フルートを３人のメンバーが担当している。しかし、特別に凝った音というわけではない。ハモンド・オルガン主体のアート・ロックという感じ。サイケ感覚であり、さすがに古めかしい。ポップなノリで、聴きやすい。
�� Down and mood for change / Phylter [ Phylter 1978 ]
これも７０年代のフィルターは、４人のメンバー中３人がヴォーカルを担当。したがって、コーラスが連続する形で進行するが、強烈なヴォーカリストがいない。オルガンに乗せた哀愁のギターが展開する本格シンフォ。拍子変化も多い。このバンドもややへヴィネス不足。
[次点] Impuissance / Julverne [ Le retour du Captain Nemo 1992 ]
ジュルヴェルヌは、フルートとサックスのピエール・クーロンを中心とする、クラシック楽器のアコースティック・バンド。これはもう純粋にクラシックかと思ってしまう。ヴァイオリン、チェロ、コントラバスなどの弦楽器に、フルート、クラリネット、サックス、トロンボーン、バスーンといった管楽器。ドラムスはなし。反体派ロックに属しているが、透明感があって優雅で、あくまでシンフォニックだ。ときとしてヴォーカルも入っているが、それも中世古楽のよう。サルマシスの泉様の推薦。
[番外１] Images of childhood / Super's Ready [ Listen to the pictures 2000 Luxenburg ]
お隣ルクセンブルグは、４４万人と更に小国だが、国民の富裕さでは世界トップ。サパーズ・レディは、大好きなバンドなので番外に登場してもらおう。６人編成で、ポル・フェルテスは、ジョン・ウェットンに似た力強くメロディアスなヴォーカル・スタイル。ジェネシスの曲名がバンド名になっているが、それほどジェネシスには似ていなくて、より親しみやすいメロディック・シンフォとなっている。荘重なキーボードに、泣きのギターも力強い。
[番外２] Warrior / Univers Zero [ Clivages 2010 ]
ベルギーで一番有名なプログレ・バンドは、ユニヴェル・ゼロだろう。ダニエル・ドゥニを中心に６人程度のメンバーで、室内楽編成の暗黒ロックを展開。作品は、１９７７年のファーストから、２０１４年まで１０枚。この曲も、いきなり強烈な不安を駆り立てられる。このテンションの高さを、４０年近く維持し続けているとは、マグマに匹敵する強靭な精神力だ。ベルギーの亡霊にして、地獄絵図。緊張のあまり、金縛り状態になって動けない。サックスが泣き叫ぶ。１秒の弛緩もない。ゆぅ様の推薦。
[番外３] Eddies / X-Legged Sally [ Killed by charity 1993 ]
すみません。番外をもう１つ。エックス・レッグド・サリーは、７人編成のアヴァンギャルド・バンド。基本の４人のほかは、サックス、トランペット、クラリネットだ。それだけに音響はジャズ・ロックのようでもあるが、そこを突き抜けてしまっている。急迫を告げるニワトリ。リズムの衝撃力。超高速で手に汗握るスリリングさ。そして、強烈なへヴィネス。狂気が爆発しているみたいだ。ユーロロックプレス６４のこの作品の紹介記事には、「変態、変態、また変態」と書いてあった。
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