mixiユーザー(id:295366)

2015年06月03日22:45

247 view

文学部出身者推薦法学書

絶版になっていますが、わりと手に入りやすい(らしい)日本の刑法史の本。
何よりもオススメにしたい、というか絶版が勿体無いとおもうのが、
 長 谷 川 平 蔵
に関する短いながらも密度が極めて濃い記事。
彼の父祖・少年時代(小説同様かなり遊んでいたらしい)・火付盗賊改方への抜擢・人足寄場の設置献言などが簡潔ながら迫力ある文章で書かれており、チャンバラ役者※ではない、本物の「江戸の人物」を目の当たりにしたような気分になれる。
 ※中村吉右衛門版の「鬼平犯科帳」も大好きです(と慌ててフォロー)

日本行刑史 (1961年)
http://mixi.jp/view_item.pl?reviewer_id=295366&id=1235293

ちなみに池波正太郎が「鬼平犯科帳」第1話「唖の十蔵」を出したのは1968年のことなので、絶対に本書を参考にしている筈!とWikipediaを覗いたら、全く出ていなかった…
連載続けているうちに気がついて、参考にはしたとは思うのだけれど。

ちなみに老中・松平定信の認可の下、人足寄場の創設で無宿人(犯罪予備軍および二軍)の教化・更生をはかったという、現代からみても非常に先端的な人権思想の持ち主であったことは間違いなく、冤罪者への賠償まで個人的に行っている(これが制度化されるのは何と昭和6年のこと)。
その一方で本業の火付盗賊改方の方でも冴えまくっており、若い時代の遊蕩で人を見る目を鍛えたのか、一瞬で犯罪者を見抜く特殊能力があったと同時代人が何人も証言している。能力が高すぎて生前に後任が定められず、病死の3日前まで解任してもらえなかった程。
(「犯科帳」のように元盗賊の密偵を使用したとの記録はない。事実あったとしても、性質上記録にはしてもらえなかっただろうが)

これほど大活躍した長谷川平蔵だが、子孫には恵まれず(「鬼平」では長男辰蔵が遊び人から更生してそれなりに活躍するが)、幕末の動乱で家自体が散開してしまい、今となっては墓所すら明確で無いらしい。(菩提寺はあるが、何度か移転してしまっている)
やはり人間は血筋より能力であり、供養よりも記憶/記録されるべきものだと思った次第であります。

その他、田沼意知(意次の長男)を殿中で斬り殺した佐野政言の切腹に至るまでの記録もあったりして、江戸時代ばかりではないが時代劇の考証が好きな人には是非是非。
7 2

コメント

mixiユーザー

ログインしてコメントを確認・投稿する

<2015年06月>
 123456
78910111213
14151617181920
21222324252627
282930