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2015年05月24日21:02

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山登りはじめました＃126「エスケープフロム丹沢」その①

続きました。

ここからは真面目に書きます。そしてものすごーく長いです。長文上等！

※事故後パーティーのメンバーで情報を出し合い、ポイントごとの時刻などを類推しました。

※また、同時間帯に各人が何をしていたのか。これも情報を集めて検証したので、時系列でまとめました。

※一見右腕を痛めた程度で大したことなさそうですが、この時は脳内麻薬ヒタヒタ状態だったため動くことができたようです。実際は脱臼ではなく右肩を3箇所骨折、右手首も骨折、首も第五頚椎を骨折しており、全治3ヶ月の重傷でした。

【滑落】

おそらく15:45前後だと思う。ラペリングで降下、木の根などを掴みながら何とか正面の斜面を登り、次のルンゼ状に抉れた部分へ降りようとした時、足元の地盤が一気に崩れて両足とも持っていかれた。正確に言うとモコモコした土の部分があり、一歩一歩踏み固めながら降りるような場所なのだが、二歩目を踏み固める時に力が強すぎて足場が一気に崩れてしまったのだ。慎重さを欠いた実に初歩的なミスである。バランスを取る間もなく、両足を伸ばした状態で尻餅をつきV字型(正確にはレの字型)の底まで滑り落ちた(この泥の斜面を滑った距離は2～3mくらい)。そしてそのまま滑落。わかりやすく言うと尻餅をついて、V字型の滑り台を滑り始めた要領だ。

手当たり次第に両腕を動かすが、周りにつかめる物が何もない。腰を上に反らせ、ザックの下部分を地面に押し当て摩擦係数アップを図る。靴の踵部分のエッジを立て、地面にめり込ませて滑落停止を試みるも、全く停止しない。というのも泥の部分はV字の底に落ちるまでの数メートルだけで、基底部は泥の上にザレや落ち葉が堆積しているからだ。摩擦がどうこうとかではない。泥の上を滑っているのではなく泥の上の堆積物と一緒に自分も流れ落ちているのだ。止まるわけがない。左手の長い方のポールを手放し、必死につかめそうな物に手を伸ばす。何度も岩を触るが、岩も一緒に崩れ落ちてしまう。右手は短いポールを持ったまま、滑り落ちてる斜面を引っ掻く。

「止まれ、クソ！止まれ！！」

心の中で何度も叫んだ。しかし止まるどころか斜度は更に急になり、スピードが増す。次の瞬間、視界に白いモノが飛び込んできた。

「うわ、マジか！？」

恐怖した。

落石が堆積したガレ場エリアだった。全身を大の字にして突っ張ったまま、ほとんど減速できないままガレ場に突入した。足の裏に衝撃が来た後はもう、何がどうなったのかさっぱりわからない。身体が浮いて、落ちた。雪山で滑落した時、うつぶせになってピッケルを雪面に押し当てで滑落を止めるが、その時足は伸ばさず膝を曲げないといけない。アイゼンの前爪が引っかかると体が浮き上がってピッケルが抜けてしまうからだ。また、スピードが出た状態だと足を骨折することもあるという。おそらくはそれと同じ状況だったのだろう。仰向けで滑り落ちてきて岩に足がぶつかり、体が起き上がる。あとはガレ場をバウンドしながら転がり落ちる。これぞ正に「転落」なり。こうなるともう何も出来ない。受身も取れない。岩の上をただただ、転がり落ちる。ヘルメット越しに何度も衝撃がくる。ぶつかる感じよりも擦れる感じの方が多かった気がする。全身に衝撃が走る。どこに何をぶつけているのか全くわからない。何回転したのかもわからない。前歯に岩が当たった。折れたか？舌をかんだ。バウンドして岩に当たるたびに「ウッ」と声が出る。圧迫されて息が吐き出されたためだろうか？

「止まれ、止まれ、止まれ！！」

祈る以外に何もできない。

「これは死ぬかもしれない」

そう思った。

！！・・・止まった。が、しかし！

予想通り、来た！パラパラとヘルメットに砂の当たる音の後に、ゴッゴッゴッという転がり音。そして頭と首に物凄い衝撃がきた。次の瞬間、自分の足先を岩が落ちていった。30cmくらいはあっただろうか、ティッシュペーパーの箱くらいある岩。続いて2発目。今度は拳大のサイズ。ザレエリアを滑落中、手当たり次第に掴もうとして、埋まっていた岩をいくつも自分で崩したのだ。それが自分と一緒に斜面を転がり落ち、後追いの落石として頭に直撃した。目が回っているのだろうか？どんな姿勢で止まっているのかもよくわからない。上から自分を呼ぶ声がするのだが、声が出ない。というより、全身に衝撃を受けたせいか深呼吸ができず、大声が出せない。

【負傷】

5分くらい経っただろうか、いや、10分か？やっと頭の中からモヤが晴れてきた。死ぬような目に会うと、人間はおかしな行動をするようである。滑落後、自分が真っ先に取った行動は「時計をしまう」だった。右腕を下にした姿勢で倒れていた。右腕が全く動かない。首も動かない。左手は動くようだ。目だけで辺りを見回すと、胸の先にプロトレックが落ちていた。左手でこれを拾うと指先に激痛が走った。確認すると左手の親指・人差し指・中指の3本のツメが割れたり剥がれたりしている。人差し指の第二関節辺りの皮がめくれ血がボタボタ垂れている。同じく人差し指のつま先も、よくわからないが円形に皮がめくれている。血はさほどでもないが、ここが一番痛い。痺れた感じがする。この痛みで正気が戻った気がする。

プロトレックはチタンのリストバンドがちぎれていた。その他の傷は確認する余裕などなく、とにかく摘み上げてチェストバッグにこれをしまう。時間の確認も、時計が動いているのか止まっているのか、なぜかこの時は何も確認をしなかった。チェストバッグのジッパーを開け閉めする左手の指が猛烈に痛い。人差し指の傷からは血が垂れ続けている。これを何度も山ズボンで拭う。地図読みのコンパス操作を想定して、指貫のトレッキンググローブをしてきたのが仇となった。せめて山神経路からは軍手などに付け替えるべきだったと後悔する。いや、そもそも一旦はしまったポールをまた出したのが間違いだった。そのまま出さずに軍手をして両手両足で行動するべきだった。岩場なら間違いなくそうしていただろう。しかし脆い地盤を確認したり急斜面でバランスを取ったり、その時はポールがあった方が有利だと思ってしまったのである。

そう言えばさっきからお腹の辺りから声が聞こえる。

「あ、無線！」

ザックのウェストベルトにつけているトラシーバーを左手で外そうとしたら、痛みで反射的に手を跳ね上げた。しかし一刻も早く生存報告をしなくては！痛いのを気合で我慢してトランシーバーを外し、急ぎ「生きている」旨、「右腕が全く動かない」旨を伝える。すぐレスが来た。トランシーバーは液晶にヒビが入りバックライトが点灯しなかった。

【救助】

「そこから動けますか？」

コータロくんからだ。起き上がろうとして腰に力を入れた時だった。ガレが崩れ出し、足を突っ張ろうとしたら足元のガレも崩れ落ち、自分が横たわっているガレごと滑落が再開した！もがいて足を動かすと、足周りの岩が先に落ちて、そこに自分が乗ってる岩が入り込もうと更に崩れてしまう。滑る速度はさほどではないがズルズルとルンゼを滑って行く。目線を上げるとガレ場の先が何も見えない！これはヤバイ、切れ落ちている可能性大だ。このままだと滑落⇒転落ときて最後に墜落だ！顧問の「ええとね、岩場は自由落下3mのグラウンドフォールで概ね死にますからねえ」って言葉が頭をよぎり、青ざめる。

もがくのを止め、じっとする。10mくらい滑った所で右側に岩盤が露出している場所がある。体を真っ直ぐに突っ張り、足先を岩盤に当ててルンゼ内でつっかえ棒のようにすることでようやく2度目の滑落が止まった。すかさず無線で状況を知らせる。先の情報に加え、身動きが取れないこと。下手に動くと更に滑落し、そのまま墜落の可能性があること。

「わかりました！僕が助けに行きます、そのままじっとしていて下さい！！」

コータロくんだ。この時の位置関係は自分がスリップした場所の直ぐ裏手にHGさん、その正面、隣のルンゼ内にOG原さんだが、コータロくんはそこから更に下という以外わからない。少なくともOG原さんよりも先の崖を下降中のはずだ。そして上にいる3名の誰からも自分を目視できないとのこと。相当な距離を滑落したようだ。

「ちなみにザイルは誰が持ってますか？HGさん、ありますか？」

すかさず無線でロープ類は全て自分が持ったまま滑落した旨を伝える。

「了解です。自分が今一番下にいるので、沢まで降りて下から救助に向かいます！！」

「ありがとう、自力でここからの脱出は無理だわ。待ってる、すまねえ。。」

救助を待つ間、怪我のチェックを行う。一番おかしなことになっているのは右腕だ。肩が猛烈に痛い。脱臼だろうか？とにかく動かない。そして肘も痛いし、手首も痛い。右手は指は何とか動くが、どうもおかしい。左腕は動くが指先の怪我が深刻だ。痛くて物が触れない。左肩にも痛みがあるが、とりあえずは動く。右足も痛みはあるが、特に問題はない。で、左足。膝から脛の部分がズボンがビリビリに破け、血が染みている。打撲と後は剥けたか切れたか。左のお尻と腿の境目あたりも同じ感覚。この2箇所が猛烈に痛い。しかし右腕と違い動くので、骨は無事のようだ。そして歯。舌で触ると右上前歯が欠けている。折れた、ってほどではないが、欠けた部分が尖っていて唇の裏側に当たり、結構うっとうしい。そして首がどの方向にも動かなかった。右も左も回らないし、上も下も向けない。肩が凝った様な感じがする。

しばらくするとまたヘルメットに砂がパラパラ当たる音がして、小粒の石がポロポロと落ちて来る！

「HGさん、そこから動かないで～！」無線に怒鳴る。案の定、HGさんがOG原さんが居る側のルンゼに渡ろうとしていた。自分の滑落ラインを横切る時に落石を起こされたら堪らない。状況を説明して自分の救助が終わるまでそこを動かないようにお願いする。現在無線は自分・HGさん、コータロくんが持っている。

トランシーバー。持ってきてよかった。元々無線を使うシチュエーションなんか全く想定していなかった。4人で固まって移動するし、山の中じゃちょっと離れたら特定省電力無線の出力じゃすぐ通話なんか出来なくなる。何となく「探検」ムードを盛り上げるアイテムとして持参しただけなのに、今はそのトランシーバーに命がかかっている。こんなにみんな近いエリアにいるのに、お互いの姿を見ることが出来ないなんて。それも簡単に移動出来ない地形に閉じ込められている。普通じゃ考えられないシチュエーションだ。無線がなかったら今回のセルフレスキューは無く、救助要請をしていたかも知れない。そしてヘルメット。これも本来は「探検」ムードを盛り上げるアイテムだった。計画の当初は岩登りじゃないので、ってことで反対意見が出たのだ。でも大崩壊地は通過時に落石があるかも知れない、とみんなを説得し全員が携行することになった。そのヘルメットに今、自分は命を救われた。もしヘルメットが無ければ絶対に死んでたと確信している。それぐらい何度も岩に頭をぶつけたり擦ったりした。そして追い討ちの落石２連撃。

救助を待つ間、なぜか時間を確認するという行為を全くしなかった。理由はわからない。痛みに耐え、ひたすらじっと待つ。雨がパラパラと降ったり止んだりしている。現状、全く動けずレインウェアを着ることは出来ない。本降りになったらずぶ濡れになること必至だ。もしかしたら雨で更に上が崩れて、土砂とともに下まで押し流されてしまうかも知れない。不安が募る。コータロくんはまだか。無線が鳴った。

「今やっと沢まで下降しました。どこですか？」

どこですか？って言われたってなあ。。

ああ！そうだ！！

「音出せば大体の位置、わかるか？」

「お願いします！」

ザックの右肩に付けてる小さなポーチをまさぐった。相変わらず指先が痛い。血も出ている。このポーチはコンタクト用に手鏡とか目薬、UVカットのリップクリームなどを入れているのだが、ホイッスルも入れてあったのを思い出したのだ。オレンジ色のプラスチックの軽いホイッスル。まさかこんな状況で役に立つ時が来るとは！！ホイッスルを咥え、3度間隔を空けずに吹く。ピー、ピー、ピー。SOSを示すモールス信号だ。もう一度吹く。ピー、ピー、ピー。

「聞こえました！思ったより遠いかも知れません。無線で呼んだらまた吹いて下さい！」

「了解」

何度かこのやり取りを繰り返した。後日本人から聞いた話では、二重遭難を避けるため極力安全に下降出来るポイントを探して、相当先の方まで進んで沢に降りたそうだ。そこから経路に戻るまで、堰堤を２つ越えたとのことなので、ほとんどモチノキ沢の源頭付近までトラバースしたことになる。最初の無線連絡は経路に復帰してからだった。滑落してから40分くらい経過しただろうか。下からコータロくんが現れた。この時の安堵感を表現する術を自分は知らない。だが、そう簡単にはいかなかった。コータロくんがガレ場を上がってきた。

【脱出】

「大丈夫ですか？取りあえずザイル出しますよ！」

この先の状況を聞くと、やはり切れ落ちており、片腕で降りるのは無理だろうとのこと。

「でもここ、アンカー取れる場所が全く無いですね。かと言ってロープ無しじゃ降りられないし。」

無理はしないでくれ、自分を助けるための二重遭難だけは避けたい。場所さえ確定できれば、救助要請をするという選択肢だってあるのだ。

「ちょっと待って下さい。まず荷物を何とかしましょう。」

そう言ってコータロくんにザックを外してもらうと、ザックを持って降りて行き、しばらくすると空身で戻ってきた。

「僕の肩に左腕で体重をかけられますか？立ち上がらず座った状態で！少しずつガレを足で崩すので、ゆっくり下まで滑り落ちましょう。スピードが出そうになったら岩盤が出ている部分で足を突っ張り、全身でつっかえ棒を作って止まりますので。行きますよ！」

座って足を伸ばした姿勢のまま、二人でガレの急斜面を少しずつ崩しながらゆっくりと滑り落ちる。確かに他に方法は無いかも知れない。やっと立ち上がれる場所まで来た。肩を借りてルンゼから右側に這い出す。ほとんど引っ張り出してもらう感じだった。ここでやっと自分が滑落したガレ場を見ることが出来た。途中で曲がっているためザレのエリアまで見渡すことは出来ない。ガレエリアだけでも少なく見積もっても30mは落ちたと思う。滑落ポイントまでなら50mどころではないだろう。ほとんど尾根から沢まで滑落した計算だ。かなり上の方、長く伸ばした左用のポールが見える。グニャグニャにひしゃげている。短くした右用のポールは回収したが、左用は無理だろう。登山靴と一緒で、いつも一緒に山を歩いた身体の一部のようなLEKIのトレッキングポール。共にした山行回数は50回以上。そのポールに別れを告げる時がきた。それもこんな形で。ひしゃげている分、たとえ少しでも滑落の衝撃を吸収してくれたのだろう。

さようなら。

「ザックは僕が持ちますよ。要らない物ありますか？重量軽くするため、捨てていきます！」

コータロくんにザックを開けてもらい、プラティパスとハイドレーションの水を捨てる。彼のザックは30Lなので、自分の40Lのザックの雨蓋の間に挟んで自分のザックをコータロくんが背負う。所謂「ダブルザック」というやつだ。貴重品の入ってるパスファインダー(チェストバッグ)だけはショルダーバッグ用のストラップを出して、自分で持つことにする。

「水は僕がまだ沢山持ってるので、飲みたい時は言って下さい。とにかく安全な場所まで移動しましょう！」

ダブルザックのコータロくんが歩き出す。自分はパスファインダーを肩掛け、チェストハーネスにしているシュリンゲで右腕を吊り、後を追う。すぐに堰堤の脇に出た。左側の斜面には例の木橋とは別の木橋がある。これも2連の橋だ。

「ここが山神経路ですね。ここでルート復帰です！」

しばらく進むと大きな堰堤が出てきた。また肩を借り、堰堤の脇を降りて河原に出る。モチノキ沢だ。

「ここでOG原さんとHGさんを待ちましょう。二人とも無事降りて来てくれるといいんだけど・・・。」

コータロくんが引き続き無線を入れ、自分と合流して救助し、今は広い河原部分に居ることを伝える。

「とにかく！時間かかってもいいので、無事降りてきて下さい。極力安全なルートを探して下さい！」

「了解。OG原さんと合流できたので、これから下降ポイントを探します！」

HGさんから返答があった。

二人を待つ間、コータロくんに水をもらい、ピルケースの中に入れてあったロキソニンを飲んだ。鎮痛剤はファーストエイドキットの中にもまだ入っているが、直近を凌ぐ分としてはこれで十分だ。次に日没に備え、ヘッドランプを出してもらう。右腕が全く動かない自分は全てコータロくん頼りだ。ヘッドランプを装着するため、ここへきて初めてヘルメットを脱いだ。自分のヘルメットはブラックダイヤモンドの「ハーフドーム」だが、ブラックダイヤモンドのロゴがきれいに削り取られている。ちょうどおでこにあたる部分だが、引っかいた痕がものスゴイ。滑落中、岩に擦った所だろう。左側頭部も同様、ステッカーが破けている。頭頂部はブツブツとした細かい傷だらけだ。もしヘルメットを被っていなかったら・・・。改めてゾッとした。

【集合】

それにしても遅い。30分は経っただろうか。コータロくんが無線を飛ばす。

「今佳境です！」

HGさんからだ。あまり無闇に連絡しない方がよいかも知れない。降下中はおそらくトランシーバーを操作するのは難しいし、危険だろう。ここは待つしかない。それにしてもどこから来るか。自分達は山神経路の通っているモチノキ沢堰堤を上流側に降りた河原にいる。そこから更に源頭側まで巻いてくるのか。それとも堰堤の向こう側、つまり山神経路上のどこかに下降してくるのか。あたりを観察していると、やたらと細かい落石が続いている場所がある。堰堤を越えた直ぐの場所だ。自分が滑落したルンゼよりかなりモチノキ沢側である。しばらくするとHGさんの姿が見えた。よかった、無事みたいだ！OG原さんは？いきなり上からザックが転がり落ちてきてギョッとする。その後OG原さんが無事、空身で降りてきた。よかった、本当によかった～！

帰還してから得た情報も含まれるが、まとめると以下の通りだ。

・15:45頃、滑落。これはOG原さんの最初の発信履歴が15:56(無線がないため。コータロくん宛て。勿論不通)にあり、自分が呼びかけに答えられなかった時間を差し引いて逆算したもの。
・16:20頃、OG原さんがなぜかくりぼうさんに連絡。自分の救助が終わるまで上で待機だったが、その間、尾根に上がって電波を拾っていたとのこと。辛うじて繋がる場所があり、ここを逃したら下山するまで連絡が出来ないとの判断から、自分が滑落した旨を伝える。ただし、途中で通話が切れて伝えた情報はそれのみ、安否情報は伝えられなかった。
・16:25頃、コータロくんと接触、救助開始。同時刻、発信履歴からOG原さんはまだ尾根に上がっており通話を試みていたことを確認。
・16:30頃、HGさんがOG原さんと合流するために移動を開始。自分の滑落現場を崖の上から覗き込んで撮影した写真のタイムスタンプより確認。
・16:55頃、コータロくんと二人でモチノキ沢の堰堤に到着。
・17:30頃、HGさんがOG原さんと合流、二人は合流した後、自分が滑落した場所から2本先の崖をドライバーを使って降りてきたとのこと(キリヤマ隊長、アイデアありがとうございます！)。

※OG原さんは自分が滑落してザレエリアを落ちるところを目撃したとのこと。そして見えない所まで落ちて行ってしまった。10分近く呼びかけに応じなかったので、最悪の事態を想定して電話連絡を入れたそう(自分は死んだと思われたらしい)。
※コータロくんは自分がガレエリアを転がり落ちるところを目撃したとのこと。岩に何度も頭をぶつけて転落しているところ、特に左側頭部を岩に強打するところを見て「確実に死んだ」と思ったらしい(後日談では二人を先に下山させ、自分は死体と一晩ビバークする覚悟だったとのこと)。
※HGさんは自分がV字部分に滑り落ちるところのみ目撃。ルンゼの裏側にいたので、滑落するところは物理的に見えない。声と音だけが聞こえた、とのこと。

滑落から2時間、ようやく全員集合することができた。

【その②】に続く。

■写真解説

①これが問題の朽ちかかった木橋。指さしている奥の谷側に傾いた橋がどうしても通過できないと判断し、危険な大高巻きをすることになった。ここまで来るともう、引き返すという選択肢はない。

②青ラインを九十九折に下って谷まで降り、時計周りに山腹を行くと例の写真①の木橋に出る。大高巻きは一回ここまで登り返し、さらに赤のラインから標高を上げて尾根筋まで出ないと行けない。巻くというか、下手すると別ルートになってしまう。

③自分が滑落した場所を崖からHGさんが覗き込んで撮影。樹木のせいで分かりにくいが谷でかなりの傾斜だ。手前の石を見てわかる通り、HGさんが居る側はほとんど垂直で、正面が急斜面。正確にはV字型ではなくレの字型のルンゼである。右の青線の数メートル上が足元が崩れた部分で、泥の上を滑った。赤ラインが泥の上にザレと落ち葉が堆積した部分でここを仰向けの状態で滑り落ちる。左の青丸の部分から先が落石が堆積したガレ場で、あまりに距離が長く、この写真で全容を写すことは出来なかった模様。感覚的には青丸もう一つ分くらい、ガレ場が続いていたと思う。

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