ムーディー・ブルースは、１９７０年、自分たちのレーベル「スレッショルド」を設立して、「子どもたちの子どもたちの子どもたちへ」を第１弾として世に送り出した。その後、このレーベルから、新人バンドをデビューさせたり、自分たちのソロ・アルバムを出したりして行く。
いずれも透明感と清涼感のある優しくてメロディアスなサウンドを身上としている。
・ 曲 ミュージシャン アルバム
�� Marie / Justin Hayward [ Songwriter 1977 ]
ジャスティン・ヘイワードは、ムーディーズのフロント・ヴォーカリストというだけでなく、「サテンの夜」をはじめ代表曲のほとんどを作った。８０年代以降は、数の上でも大部分の曲を書いている。一方で、ソロ・アルバムも７枚と、創作意欲と才能にあふれた人だ。この曲も、彼の持ち味に満ちて、メロディーが繊細で美しく、声に透明感がある。「月光の中で、朝陽を待っている、マリーと僕。僕たちは、強くなることができるだろう」彼にしては珍しく希望に満ちたラブ・ソングだが、私は、これは娘への子守歌ではないかと思って聴いて来た。
�� Carry me / John Lodge [ Natural avenue 1977 ]
ジョン・ロッジは、ジャスティンと並ぶフロントマンだったが、一時期、曲が書けなくて苦しんだらしい。しかし、この曲は、明るくてムーディー・ブルースらしい曲だ。声質がジャスティンに似て、清涼感に溢れているが、もう少し力強い。ジャケットは、まるでロジャー・ディーンのような幻想世界を描いている。曲調は、オーケストラと生ギターで進行するポップなものだ。
�� The last dream / Ray Thomas [ Hopes, wishes & dreams 1976 ]
レイ・トーマスは、フルート奏者で、２枚のソロ・アルバムを残している。ジャケットは、子供の頃、海の彼方に憧れた夢。曲も「ラスト・ドリーム」と、遠くを見たがるムーディーズらしい曲だ。ピアノに続く男性的なヴォーカル。オーボエ、オーケストラ。そして、ブラス、男女合唱と続き、劇的に盛り上がって行く。実は、この曲がムーディーズ関連のソロ・アルバム群の中で、最もプログレッシブでシンフォニックだったかもしれない。
�� I only want to love you / Michael Pinder [The promise 1976 ]
マイケル・ピンダーは、メロトロンの魔術師と言われた。ムーディーズのサウンドを壮大なものとし、プログレッシブな革新性を持たせたのは、彼の功績が大きい。彼も２枚のソロ・アルバムを出しているが、ムーディーズ時代と異なり、やや個人的な内容の曲ばかり。しかしこの曲など、ピンダーらしい声とメロディーで、ゆったりとした牧歌的な曲だ。派手ではないが、メロトロンも流れている。
�� Have you ever wondered / Graeme Edge Band [ Kick off your Muddy Boots 1976 ]
グレアム・エッジは、ムーディーズのドラマー。哲学的な詩を朗読する曲が多かった。ソロ・アルバムではなくて、バンドを組んで、エイドリアン・カーヴィッツの協力を得ている。「アメリカンなブルース・ロック」と評された。タイトルも「マッディ・ブーツ（泥だらけの靴）を脱ぎ捨てろ」と、まるでムーディーズに喧嘩を売っているかのようなタイトルだ。エッジの曲は、２曲だけだが、この曲など、ストリング・キーボードに泣きのギターが入って、ムーディーズらしさ全開だと思う。
�� Blue guitar / Justin Hayward & John Lodge [ Blue Jays 1975 ]
２人の盟友、ジャスティン・ヘイワードとジョン・ロッジの共作で作ったアルバム。このデュオのことをアルバム名から、ブルー・ジェイズと呼んでいた時期もある。 ジャケットは、廃墟に立つ２人の青年が遠い山を遠望している。アルバムは、ヘイワードが６曲、ロッジが３曲、２人の共作が２曲。この曲はヘイワードの曲だが、さすがにメロディーが良い。曲名の通り、哀感のあるギターで始まって、オーケストラが続く。
�� In the realm of Asgard / Asgard [ In the realm of Asgard 1972 ]
アスガードは、ギターとヴォーカルのロドニー・ハドソンを中心とする６人組。ヴァイオリン奏者がいる。特徴的なのは、それだけではなくて、専任のヴォーカリストがほかに２人もいるということ。このため、ヴォーカル部は、ほとんどが３人のコーラスで進行する。ヴァイオリンが弾きまくり、そしてコーラスが盛り上がる。キーボードはない。ムーディーズとは別の表現法を取ったが、イメージは似ている。
�� Send me no more letters / Trapeze [ Trapeze 1970 ]
ムーディーズのレーベルから、新人第１号として世に送り出されたトラピーズ。ジョン・ロッジがプロデュースしている。５人編成で、ヴォーカルのグレン・ヒューズは、ベース、ピアノ、トロンボーンも演奏する。また、トランペット奏者がいるし、キーボード奏者はフルートも演奏する。音は多彩だが、サウンドはあくまでポップでキャッチ―。コーラスはやや粗いが、それがまた元気溌剌とした印象を与えて悪くない。ジョン・ロッジの全盛期の曲に「センド・ミー・ノー・ワイン」という曲があるが、なんとなくそれを思い出させる。
�� Mountain / Providence [ Ever sense the dawn 1972 USA ]
プロヴィデンスは、透明感あふれるブリティッシュなサウンドだが、アメリカのバンド。６人編成で、ヴォーカルのバーソロミュー・ビショップは、ハープとハープシコードを弾く。また、ドラマーはリコーダーもできる。チェロ、ヴァイオリン、ヴィオラ、ハープシコードなどの室内楽的な音響を取り入れて、田園的でのどかなサウンドとしている。ヴォーカリストは、ジャスティン・ヘイワードの歌い方そっくりなところがある。
�� Dawn of a new day / Mandalaband [ The eye of wendor 1978 ]
マンダラバンドは、エンジニアだったデヴィッド・ロールが、様々なミュージシャンの協力を得て、３年がかりで作り上げた作品のプロジェクト名。バークレイ・ジェームズ・ハーヴェスト、１０ｃｃ、マディ・プライヤー、ジャスティン・ヘイワードなどが参加。ジャスティンの歌うこの曲では、なんとＢＪＨの「メロトロンの魔術師」ウーリーが弾いている。この２人が共演した作品は、この曲だけではないか。透明なジャスティンの声に続いて、バグパイプの音響。そして、夜明けを告げるメロトロン。ほとんどがボランティア参加だったということにデヴィッド・ロールの人格者ぶりを感じる。
[次点] Passing years / Mainhorse [ Mainhorse 1971 ]
ムーディーズの歴史を語る上で、欠かしてはならないのは、パトリック・モラーツの存在だ。メインホースから、レフュジーを経て、イエスで活躍。そして、ムーディーズに移籍して、８０年代ムーディーズの爽やかな明快さを演出した。ぴょんぴょん跳ねながら多彩なキーボードを駆使する姿は、前任者のマイク・ピンダーが髭を蓄え、じっとメロトロンを弾いていたのとは対照的。しかし、７１年当時、メインホースのこの曲では、オルガンとストリング・キーボードで、まるでムーディーズの初期のような静寂なサウンドとなっている。
[番外] Another day / Paul McCartney & Wings [ Single 1971 ]
ムーディーズの最初期のヴォーカリストは、デニー・レイン。「ゴー・ナウ」というヒットを飛ばして、バンドを去って行った。その後、デニー・レインは、ポール・マッカート二―の良きパートナーとなって、ウィングスのギターとバック・ヴォーカルを務めた。この曲は、私が１４歳のときにラジオのヒット・チャートで長く第１位になっていた曲。ポール、リンダのコーラスがみごとで、メロディーが優美なポップ・ロックだ。リンダ・マッカートニーは、キーボードを弾いている。
○ジャスティン・ヘイワードの追憶の曲１０選（２０１４年１１月２日）
http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1934595943&owner_id=9666295
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