先日亡くなった作家の船戸与一さん。
そのヘビーな作風はけっして好みではなかったけれども、結構読んでました。
どの作品にも共通しているのが、常にマイノリティーを書いていること、そして正史でなく外史あるいは叛史に徹していること、だと思う。
支配者のもとで抑圧される人々がいる。
そこへよそ者(たいがい日本人)がやってきて引っかきまわす。
たまっていた不満や怨みが爆発し、彼らは蜂起する。
大量の血が流れ、おびただしい死体が残る。
その後は…結局何も変わらない。
さわやかな読後感とは無縁の、こんな感じの話が多い。
それはまるで、世の中のシビアな現実をつきつけられているかのよう。
中でも、江戸時代のアイヌによる「国後・目梨の戦い」を題材とした「蝦夷地別件」は、どうしようもなく救いのない物語だった。そりゃ史実をベースにしているので、ハッピーエンドにはなりようもないのだけれど、そこまでやるかと。しかし、それだけずしりとくる物語でもあった。
でも、フィリピン人の少年を主人公とした直木賞受賞作「虹の谷の五月」は、少し希望の見えるラストだった。
1977年に豊浦志朗名義で書かれたドキュメンタリー「叛アメリカ史」という本もあった。アメリカの裏の部分、インディアン・日系人・チカーノ・黒人などの現場をレポしたものだったと思うのだけど、正直よく覚えていない。
読み返したいと思い、本棚を探したけど見つからなかった。
一貫して姿勢は変わらなかったという事でしょうね。
ご冥福をお祈りします。
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