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2015年04月17日17:02

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すべてのシルクロードが行き着く先

 下記は、2015.4.17付のJBpressに掲載された The Economist の記事です。

                    (英エコノミスト誌 2015年4月11日号)

                        記

 習近平国家主席が抱く夢、チャイナ・アズ・ナンバーワン?

 ぼんやりしたスローガンの霧を通して中国のアジア構想の輪郭が見えてくる。

 中国の習近平国家主席は、自身が率いる中国共産党を浄化することと自国を改革することに飽き足らず、アジアの経済的、政治的秩序も作り直したいと思っている。

 中国の指導者たちが共有する、簡潔だが、どこか不可解な表現を生み出す天賦の才能によって、習氏の大陸構想は「一帯一路」という公式用語に要約されている。

 習氏の説明によれば――直近では、先月、ダボスのスキー場を真似た中国の熱帯ビーチ版「ボアオ・フォーラム」で説明した――、この一帯一路構想は「地域的、世界的な協調を求める我々の時代の要求に応える」ものだ。

 誰もが納得しているわけではない。これをただの空虚なスローガンと見る人もいれば、アジアの支配的大国として米国に取って代わろうとする見え透いた策略と見る人もいる。

 どちらの批判も的外れのように思える。習氏はこの構想に真剣に取り組んでいる。そして、これは「策略」というより公のマニフェストだ。

 「一帯一路」の本気度

 習氏は2013年、カザフスタンで初めてこの構想を口にした。その際、何世紀も前に絹商人などが、中国から中央アジア、ロシアを通って北部欧州やアドリア海のベニスへ、そしてこれらの地域から中国へ商品を運ぶために使った陸路のネットワークだったものの主要部分に沿って、整備されたインフラの「シルクロード経済ベルト」構築を提案した。

 インドネシアでは、「21世紀の海のシルクロード」を提案した。こちらは、中国南東部沿岸の都市からベトナム、インドネシア自身、インド、スリランカ、東アフリカ、スエズ運河を通って海路で欧州に至る輸送回廊だ。

 これらの提案は当時、フワフワしたもののように聞こえた。外国訪問中の指導者が、友好的だったとされる遠い昔の交易を回顧しながら、よく持ち出す類のものだ。

 だが、過去数カ月間、この構想は大きな後押しを受けている。中国は、口で言うだけでなく行動で証明する方向に向かってさらに進んだ。

 中国は新たなアジアインフラ投資銀行(AIIB)に500億ドルの出資を約束。AIIBは米国の反対にもかかわらず、47カ国が創設メンバーの出資者として参加を申請したレースに火をつけた。

 中国は、陸路、海路沿いのインフラに投資する「シルクロード基金」のために、さらに400億ドルの資金を確保している。

 このような巨額の投資の1つの動機は、自国の国益だ。中国企業は新たな「接続性」で必要になる土木プロジェクト――道路、鉄道、港、パイプライン――の多くを勝ち取りたいと思っている。輸送網が改善すれば、中国の輸出業者も恩恵を受ける。そして、近隣諸国の発展を助けることで新たな市場が生まれる。

 中国版マーシャルプランの声

 中国がこれを理解したように見えることから、シルクロード計画は第2次世界大戦後に欧州の復興を助けるために米国が行った援助計画マーシャルプランと比較されるようになった。

 中国はこの比較が好きではない。マーシャルプランを米国のソ連封じ込めの一環と見なしているためだ。中国は、自国の取り組みは人類全体のためであり、「ウィンウィン」――お気に入りのキャッチフレーズ――だと主張する。だが、同国は明らかに、お金と投資が友人を買えることを期待している。

 中国の著名な国際関係専門家、閻学通氏は、中国は近隣諸国との友好関係を「購入する」必要があると主張している。

 原油安やロシアへの出稼ぎ労働者からの仕送り減少に苦しめられている中央アジアでは、中国の関与拡大の見通しは歓迎されている。ロシア自身は、この地域の旧ソ連諸国における自国の影響力が中国によって徐々に浸食されることを警戒ながらも、今は中国の善意に過度に依存しているため、応援することしかできない。

 海のシルクロードには疑念も

 だが、海上ルートでは、中国の意図に対する疑念が広がっている。

 中国が係争中の岩礁を係争中の島に変えるために建設ラッシュに従事している南シナ海での尊大な振る舞いは、中国が自国より小さな隣国を簡単にいじめられると思っているとの印象を与えている。

 そのため、東南アジアでは、一帯一路構想に対する当初の反応は懐疑的だった。マレーシアでは通常、中国からの提案に対しては、政府はまず称賛し、後で質問するが、今回、ヒシャムディン・フセイン防衛相は、海上シルクロードは「疑問を提起」しており、それは中国単独の取り組みではなく、共同の(つまり地域的な)取り組みとして理解されなければならないと述べた。

 自国を「海洋の世界的支柱」に変えたいと話すインドネシアのジョコ・ウィドド大統領は、最初は疑いを抱いていた。だが、今は支援する方向に傾いているように見える。ウィドド氏自身の計画が港湾その他のインフラへの巨額の投資を想定し、インフラ投資への中国の貢献を期待していることを考えれば、それも意外ではない。

 先月の中国訪問では、インドネシアと中国の「海洋パートナーシップ」を約束し、ジョコ氏と習氏の構想を「補完的」と表現する共同声明が出された。だが、ジョコ氏は北京に到着する前、インドネシアは、東南アジアの海域における中国の領有権の主張を受け入れていないことも明確にした。

 インドでは、やはり新しい指導者であるナレンドラ・モディ首相がこれらの問題に独自のアプローチを取っている。モディ氏は先月、スリランカ、モーリシャス、セイシェルを訪問し、これらインド洋3カ国に対して協力拡大を約束するとともに、海洋国家としてのインド自身の利益を詳しく説明した。

 これは、中国の計画に対する反撃として提示されたものではなかった。だが、1月には、モディ氏とバラク・オバマ米大統領が共同「戦略的ビジョン」を打ち出した。中国の海上の野心に対するインドの暗黙の反応は、小さな隣国との関係を再強化し、米国との距離を縮めることだったわけだ。

 チャイナ・アズ・ナンバーワン?

 来月中国を訪問するモディ氏は、海上シルクロードに批判的になる可能性は低い。ジョコ氏と同様、モディ氏はインフラに対する中国の投資を歓迎するだろう。

 だが、恐らく両首脳とも、アジアの将来に対する習氏のビジョンについては疑いを抱いている。習氏の描くアジアとは、中国がその中心となり、中国主導の機関がアジア諸国でこれまで以上に大きな役割を演じ、急成長する中国海軍が自国の海岸から遠く離れたところでこれまで以上に目に見える形で部隊を展開する地域だ。

 習氏は、地域覇権の夢、すなわち、韓国や日本といった国々が自らの意志で米国の戦略的軌道から離れ、中国――復活を遂げ、歴史的な生得権と見なしているものを取り戻しつつある大国――の軌道に入るという夢に導かれているように見える。

 これは策略などではない。それは他のアジア諸国を鼓舞する役にはほとんど立たないとはいえ、長期的な――そして確かとさえ言える――計画だ。

コピーライト 2015 The Economist Newspaper Limited. All rights reserved.英エコノミスト誌の記事は、JBプレスがライセンス契約 に基づき翻訳したものです。

 http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/43549
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