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2015年04月17日16:33

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中国主導AIIBがはらむユーロ危機再現の恐れ…習近平のエサに食いつく欧州勢の愚、静観こそ得策だ

 下記は、2015.4.17付の産経ニュース【日本千思万考】です。

                        記

 習近平の狙いは世界帝国建設、アジアからの米国追い出し

 中国・習近平政権の狙いは、数々の主席発言を要約すれば「世界帝国建設をめざし、アジアへの米国関与を排除したい」ことにあります。今話題となっている「アジアインフラ投資銀行(AIIB)」設立の趣意もその路線上にあることは否定できません。中国は、一方でアジア開銀の総裁ポストを長年求めて得られず、IMF特別引き出し権SDRをめぐって活用拡大を提唱するも採用されず、米国主導の国際金融界への不満を募らせてきましたので、その面当てもあるのかもしれません。

 元来、国際金融機関には、世銀(グループに国債開発協会や金融公社を含む)、アジア開銀(ADB)、欧州復興開銀、アフリカ開銀、米州開銀のほか、多国間の北欧開銀、OPEC機関、イスラム開銀、国際農業開発基金など、準地域的金融機関として、アンデス、中米、カリブ、東西アフリカなどがあります。いずれも世界的環境配慮や公平性にも配慮し、総務会、理事会を通じ、民主的な運用を図っております。

 中でもアジア開銀は67カ国の加盟を得て、高所得開発途上国への融資「通常資本財源」と低所得向けに緩和条件付き融資「特別基金」という財源を備え、加盟国からの出資金、準備金、民間資本借入金で運用しています。日本は最大出資・債権国であり、基金の最大拠出国でもあり、歴代の総裁を務め、総勢100人を超えるスタッフを出しております。

 一方で、世銀の姉妹機関としてのIMFは、国際通貨安定を旨とし、188の加盟国の世界金融セクターの強化と規制改善に取り組んでいます。日本は第二出資国で、円が第三の基軸通貨となって「自由利用可能通貨」認定を受けております。こうした旧来の国際金融秩序に対する反目と挑戦こそ、オバマ米国の弱腰を突くパワーゲームとも見られます。

 はけ口を海外進出に求めざるを得ない中国の事情

 中国指導部が、昨夏合意されたBRICS銀行(新開発銀行)に続いて、AIIBを通じた更なる海外戦略を急がざるを得ない要因は、内政事情・自国の窮状打破にもあったようです。

 ご存じのように中国経済は「新常態」と称する事実上の成長鈍化容認と過剰投資依存の苦境にあります。国有企業群による資源エネルギー、鉄鋼、化学金属、通信、鉄道、建設、自動車産業などの過剰生産・過剰在庫や国有金融業と地方政府による過剰なインフラ・不動産投資と銀行融資がシャドウバンキング問題を引き起こし、資本ストック調整という反動不況リスクを高めております。併せて環境劣悪化、所得分配の失敗=格差拡大と失業増による国内消費の低迷、過剰労働力を含め、はけ口を海外進出に求めざるを得なかったというのが真相でしょう。

 つまり、インフラ投資ブームを演出することで、必要資金を国際金融市場から調達しAIIB名義の下、中国主導の経済圏をアジア一帯に拡大することを通じて、余剰労働力、過剰生産能力、過剰在庫を生かす需要の創出を図ろうというのが狙いなのです。

 すでに50を超える参加国表明を受けているようですが、欧州勢に関しては出資金を低くできるなど、「極秘裏に特別招待を受けている」との噂も聞こえてきます。いずれもが経済苦境に陥っている諸国の「溺れる者、藁(わら)をもつかむ」現象かと案じられ、中国共産党支配が実態の“国家資本主義(軍産共同体)の歩む危険な進路の行方”に目を閉ざしているやに思えます。以下に、重大な問題点を挙げておきます。 

 外貨準備高4兆ドルは張り子の虎、大半は借金

 まず、中国の外貨準備高が4兆ドル弱もあるという、世評あるいは“妄信”があるようですが、実体は大半が負債であり、見せ金というか、張り子の虎の虚勢とみるべきではないでしょうか。

 このところの景気低迷、不動産バブル崩壊や不正蓄財のマネーロンダリングなどにより、大枚の資金流出が累増し続け、人民元システムを維持するため国際金融市場からの借り入れが急増し、このままでは、アジアインフラ投資に回す金などが底をついてしまう、というのが実情のようです。

 一説に、中国は実質2兆ドルの負債を抱えているとささやかれております。しかも、人民元はドルペッグ(自国の為替レートを米国 ドルと連動させること)制で、米国債を容易に売れません。いずれAIIB宗主としては、人民元のSDR通貨採用、基軸通貨化が避けられず、変動相場制へ移行せざるを得なくなるので、その際の為替差損が膨大になるといわれているのです。

 いまだに日本からのODAを受け続けている中国が、資力の出し惜しみをしそうなことが目に見えているとも言えましょう。

肝心なポイントはブラックボックス

 これまで国際金融機関の主要出資国として、幹事国として、それらの運営実績を長年積み上げてきた米国や日本からのAIIBに関する問い合わせに対して、中国は、参加国間の利害調整機関や組織の透明性などの肝心なポイントになると明言を避けており、初代総裁を中国が握ることで共産党独裁方式での管理運営を狙っているのでは−という疑いが晴らされていません。

 特に総務会、理事会などの組織体制、決議方式も不案内の上、資本送金の自由化度、融資投資の審査体制や基準が全く不明で、乱開発・環境破壊とか返済能力の問題解決方式がブラックボックスの状態です。このままでは、ギリシャ問題を誘発したユーロ危機の再現の恐れさえあります。バスに乗り遅れるな、とばかりに急いで参加表明した諸国の場合、経済優先、実利主義に走り、地道な損得勘定や中国共産党政権の意を受けたかじ取りに対する疑念を二の次としたようで、特に経済先進国の独仏英などはいずれ過剰な出資を求められ、割の合わない利権の現実にさいなまされるのでは−と危惧を抱かなかったのか、不思議に思います。

 平和なインフラ融資と経済圏共有といった美辞令句の表看板の裏に、第二シルクロードというユーラシア大陸支配と、西太平洋からインド洋に至る港湾と海洋支配をもくろむ安保・覇権の目的を隠さない習主席の発言や、西側諸国のまだるっこい民主主義ルールでなく、共産党独裁方式によるAIIB設営方式を示唆する財務省首脳の強弁などを警戒する経験値を持つのは、どうも日米(と今のところカナダも)しかいないようです。もっとも日本にも、平和ボケの経済至上主義者がかなりいるらしく、財界、学界、ジャーナリズム界などから、AIIB加盟を迫っているようで、外交下手、諜報・情報力の弱さを露呈しています。

 そう思惑通りに運ぶか

 目下判明している情報に基づき、AIIBを既存のADPと対比してみますと、資本金は当初500億ドルとADB(1531億ドル)の3分の1でスタートするようですが、出資率で中国が最大50%(最小でも40%)を握って議決権を抑え、本部を北京に置くほか、総裁も中国から出すことも決めているようで、意思決定権を一手に握る算段が明白です。一方、ADRの場合、最大出資国は日本と米国が等分の15%強を担っておりますが、本部をフィリピンのマニラに置き、その議決権は、出資率の高い国には相対的に少なく割り振り、出資割合の少ない国にも議決権を多く割り当てすることで、恣意的な判断がなされないよう、極めて公平無私な観点で調整されています。

 AIIBは、近日中に創設メンバー国の承認作業を終え、6月をめどに、中国以外の諸国の出資比率や組織運営法、融資制度、入札制度、評価法などを取り決めるようですが、審査基準の不透明さ、乱開発の歯止めを欠くなどといった懸念、多くの矛盾と公平性を欠く諸条件が取り除かれなければ、ADBからの協調融資や補完の実行は到底不可能というほかありません。

 いずれにせよ、いかな中国とて、世銀、IMFやADBを完全無視して国際社会にエゴを無理強いすることは許されませんし、日米安保、TPPの進捗具合も絡む日米(加)にとって、ここは静観を決め込むことこそ、得策ではなかろうかと思量する次第です。   (上田和男)

                        ◇

【プロフィル】上田和男(こうだ・かずお) 昭和14(1939)年、兵庫県淡路島生まれ。37年、慶応大経済学部卒業後、住友金属工業(鋼管部門)に入社。米シラキュース経営大学院(MBA)に留学後、45年に大手電子部品メーカー、TDKに転職。米国支社総支配人としてカセット世界一達成に貢献し、57年、同社の米ウォールストリート上場を支援した。その後、ジョンソン常務などを経て、平成8(1996)年カナダへ亘り、住宅製造販売会社の社長を勤め、25年7月に引退、帰国。現在、コンサルティング会社、EKKの特別顧問。

 http://www.sankei.com/west/news/150417/wst1504170004-n1.html
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