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2015年04月14日17:22

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女性票がヒラリーの命運を左右する理由

 下記は、2015.4.14付のJBpressに掲載された、 Financial Times の記事です。

                       記

 投票率が高く、米国経済の未来のカギを握る女性を取り込め

 女性にとって、サウジアラビアよりもひどい国はほとんどない。だが、この王国が有給の出産休暇を4週間とする制度を先日導入したことは、出産休暇・給付の面では今や、サウジの女性の方が米国の女性よりも恵まれていることを意味している。

 米国の働く女性に与えられる給付が驚くほど貧弱であることに、遅まきながら注目が集まっている。

 ヒラリー・クリントン氏の米大統領選挙出馬の取り組みが軌道に乗るまでには、長い時間がかかった。

 しかし、同氏が選挙戦で女性票を狙い通りに掘り起こすことができれば、次の大統領はクリントン氏でほぼ決まりだろう。

 投票する人の数は男性よりも女性の方が多い。そして、米国経済の未来のカギを握っているのも女性なのだ。

 潜在的な金鉱脈でもあり落とし穴でもある女性票
 
 クリントン氏は2008年の選挙戦で、自分が女性であることをほぼ無視していた。米国初の黒人大統領が誕生するかもしれないという見通しのために、もう1つの大きなガラスの天井は影が薄くなってしまった。

 クリントン氏はすでに名前が広く知られているため、2016年の選挙では女性の有権者をわくわくさせることができないと見られがちだ。

 米国では、黒人男性の投票権獲得は女性のそれより半世紀以上も早かった。オバマ氏の2008年の地滑り的な勝利では、黒人票の獲得が大きな勝因になっている。

 クリントン氏の場合は、女性票が大きな勝因になる可能性がある。すでに、投票率では大きな差が見られる(2012年の大統領選挙では、女性の投票率が63.7%で男性の59.8%を上回った)。

 もしクリントン氏がこの差をあと2、3ポイント広げることができれば、選挙での計算は決定的なものになるだろう。

 女性票はクリントン氏にとって宝の山になり得るが、実は落とし穴でもある。

 一部の有権者層に迎合しているとの印象をひとたび持たれれば――たとえその一部が有権者の半分以上を占めていようと――裏目に出る恐れがあるのだ。

 多くの女性(そして男性)はクリントン氏について、夫のおかげで出世してきた、人を操るのに長けた人物だと悪口を言っている。女性は共和党よりも民主党を支持する傾向があるが、誰に投票するかを候補者の性別で決めることはほとんどない。

 「米国初の女性大統領」の意義を訴えるだけでは不十分

 また、67歳になるクリントン氏は世代間ギャップにも苦しんでいる。

 2008年の民主党予備選挙でクリントン氏はオバマ氏よりも女性票を若干多く獲得したものの、若い女性に限ればオバマ氏の得票数の方が多かった。女性が大統領に選ばれれば歴史的な偉業になると強調するだけでは、この若い世代のジェンダーギャップ*1を変えることは望めない。

 クリントン氏は、男性有権者を疎外することなく女性有権者の希望をかきたてていく必要があるだろう。折しも、男性有権者と女性有権者の過半数は、米国で苦しむ中間層に属している。

 以前なら、米国製造業の再生を約束すれば、すべてがうまくいくこともあった。しかし今日、有権者のほとんどは「リショアリング(製造拠点の国内回帰)」が――少なくとも雇用については――無根拠な幻想であることに気づいている。

 また、クリントン氏は2008年の選挙でこの路線を試みて敗れているし、消えてしまったブルーカラーの雇用のほとんどは男性のものだった。

*1=ここでは男女間で見られる投票行動の違いのこと

 金融メルトダウンを経た今日、クリントン氏の試練はかつてのそれとはかなり異なる。女性は今日、常勤雇用から臨時雇用へというトレンドの荒波をかぶっている。ほとんどの先進国のそれに比べてはるかに不公平な条件を強いられている。

 裕福な民主主義国の中で見るなら、有給の出産休暇を取る権利を持っていないのは、保育所への連邦政府の援助を得ていないのは、そして妊娠した時に保護をほとんど受けられずにいるのは米国の女性だけだ。

 ビル・クリントン氏が大統領になった1年目に成立した法律により、米国人は12週間の無給の育児休暇を得る権利を手にしたが、その後の追加は一切ない。

 そして首都ワシントンにあるシンクタンク、米国進歩センター(CAP)によれば、この育児休暇を利用する男性はほとんどいない。恐らく、それなりの額の給与が出れば利用するようになるだろう。

 しかし、本当のスキャンダルは、働く米国人女性の割合が低下していることである。

 女性の労働参加率が低下している理由

 2000年までは、米国人女性の労働参加率はほかの国々とともに上昇軌道を描いていた。ところがそれ以降は、ほかの国々が改善し続ける一方で米国だけが低下している。米国では現在、25〜54歳の女性の75%が働いているに過ぎず、ほかの先進国22カ国の平均値79%を下回っている。

 その主な理由の1つは、女性が受け取る給付が貧弱なことに求められる。ドイツやカナダといった国々での男性と女性の給与格差は、米国のそれよりもはるかに小さい。それは育児休暇を取得する男性がはるかに多いためでもある。

 またもう1つの理由として、米国の保育施設への支援がはるかに貧弱なことも挙げられる。米国ではほぼ半分の州で、子供2人を保育施設に預ける費用が家賃の平均値を上回るのだ。これでは、あれほど多くの女性が職場を離れていっても不思議はない。

 この点から見れば、クリントン氏は実にぴったりのタイミングで立候補することになる。

 米国最大の経済問題は、中間層の低迷だ。恐らく2016年の大統領選挙では、この問題が最大の争点になるだろう。そしてその最も明白な改善策は、より多くの女性に働いてもらえるように、そして働き続けてもらえるようにすることだ。

 労働者の数が多くなればなるほど、米連邦準備理事会(FRB)がインフレを引き起こさずに低金利を維持できる期間も長くなる。

 女性がもっと安心して働けるようになれば、従業員の入れ替わりに伴う企業のコストも軽減される。

 新しい従業員を見つけて訓練するよりも、既存の従業員に相応な給付を提供して長く働いてもらう方がずっと安く済むからだ。

 この経済問題にかかわる主張は簡単で、誰でも理解できる。米国は30年遅れているのだ。しかし、政治的な問題にかかわる主張を売り込むのは、経済問題のそれに比べると難しいかもしれない。

 経済問題に的を絞れ

 民主党はここ数年、クリントン氏も含めて、共和党の「女性との戦い」に照準を合わせてきた。共和党が支配する州は、人工妊娠中絶を難しくする施策をせっせと進めており、避妊手段の利用も制限している。

 クリントン氏は恐らく、このテーマを重要な争点にしたいと思うことだろう。しかし、それは間違った戦術だ。共和党の方から争点にしてくるからだ。

 クリントン氏は米国経済に的を絞るべきである。女性の問題はもう女性だけの問題ではない。仮に昔はそうだったとしても、だ。女性の経済状態を高めることは、米国の長期的な経済成長率を底上げするカギの1つなのだ。

 このテーマについて有権者にもっと考えてもらうこと。それができるようになればなるほど、クリントン氏が自分の望む方向に話題を持って行くことも多くなるだろう。

By Edward Luceコピーライト The Financial Times Limited 2015. All Rights Reserved. Please do not cut andpaste FT articles and redistribute by email or post to the web.

 http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/43526
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