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2015年03月11日01:17

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■『ジョーカー・ゲーム』■(映画)

柳広司の原作を映画化。
とはいえ、僕はこの原作についてはまったく知らなかったわけで。

そもそも、作者の柳広司って名前を見て、
「ああ、吉本新喜劇の・・・」
って思ったのは僕だけじゃないはずだ(お前だけだろ)。

「ちゃーすぞ! ちゃーすぞ!」

の、やなぎ浩二はかなり芸歴の長い方で、関西人の僕のような者にはお馴染みだが、そんな彼が作家としても活躍しているんだと、ほんとに真面目に思ったものだった。
よくよく確認すれば、まったくの別人だったわけだが・・・。


閑話休題。
第二次大戦前夜の時代背景。
D機関なる特務機関が登場するスパイ映画、ということで、こういうジャンルの作品はなかなかなかったよなぁ・・・と思い、レトロ趣味でもある身としてはけっこう期待した映画でもある。
かつての『陸軍中野学校』(66)みたいな映画を、いまの俳優やクリエイターでどう作るのか、興味津々でもあった。

ただ、D機関といえば、ヨーロッパの変態俳優、ラース・フォン・トリアー御用達でもあるウド・キアも出演した(ロバート・ヴォーンも出てたけど)『アナザーウェイ D機関情報』(88)のような、ちっとも面白くもなんともなかった映画を思い出してしまう。
映画音楽ファンにとっては、スコアをジョルジォ・モロダーが担当したということでもかなり期待したわけだが、あえなく撃沈してしまった、すこぶる印象の悪い映画でもあった。

ひょっとしたら、その二の舞になるのでは・・・なんて懸念がよぎったわけだが・・・。


物語はまったくの『陸軍中野学校』の二番煎じだった。
原作の忠実な映画化というわけではなく、原作にある幾つかのエピソードをピックアップして、一つの物語に脚色したとのこと。
亀梨くん演じる主人公が、伊勢谷雄介演じる将校からD機関にスカウトされ、スパイとしていろんな訓練を重ねていくという前半は、けっこう面白かった。
スパイ映画はこうでなくっちゃ、と思えるようなカッコいいオープニング・クレジットには、お、これは何かやってくれそうな・・・という期待感もあった。

が、主人公がいよいよスパイとなって、初任務として架空のアジアの某国へ潜入するあたりから、テンションが下がってくる。
かの地で表向きは写真屋を経営しつつ、アメリカ大使が持つという「ブラックノート」を強奪すべく活動するというのがメインの物語。
アメリカ大使に囲われている中国女リン(フカキョン)を巻き込んで、物語は進んでいくわけだが、このリンという女性、敵か味方か主人公の任務の前にチョロチョロ登場しては、彼を翻弄していく。

「あれ? これってどこかで観たような・・・」

そう、このシチュエーション、まるで『ルパン三世』なのである。

なるほど、クリエイターは『ルパン三世』をやりたかったんだな。
昨年の「あれ」に比べりゃ、アクションもテンポも断然こちらのほうがマシではある。
ただ、アクションについては、海外のそれに比べりゃかなり見劣りしてしまうわけで、編集とカメラワークでかなり誤魔化している感たっぷりだ。
でも、同じ東宝で、こうも同じような映画を連続して作るというのも、なんだかなぁ・・・。


結局、D機関云々としての活躍というか、スキルを発揮するのは「料亭での盗聴」くらいしかない(しかも、主人公はまったくこれに絡まない)というのはあまりにお粗末すぎる。
まぁ、ファンにとっちゃ、亀梨くんがあれこれ動き回るのを観るのが楽しいのかもしれないが、部外者には無理矢理アイドル映画に付き合わされたような、どうも居心地のよくない映画であった。


良くないといえば、フカキョンの拷問シーンだ。
これ、今回の映画で、ひそかに(めっちゃ)楽しみにしていたのだが、なんともまぁ、熱のこもっていない拷問シーンに思わず苦笑。
熱のこもった拷問シーンってどんなのだ? と問われると困るんだけど、学芸会じゃないんだから、そこはある程度の緊迫感(拷問シーンだけに)は醸し出してもらわないと・・・ねぇ。
エロティシズムの微塵もないシチュエーションは、観ていてシラけるだけだ。

あ、そうか、アイドル映画だからなぁ、あまり多くは望むべくもないということなんだろうが、せっかくいい逸材(フカキョンのことね)を使っているのに、あれは勿体ない。


まぁ、このシチュエーションもそうだが、総じて人間がまったく描けていない、まるで紙芝居のような印象が強く残る映画だった。
テンポのいい映画って、紙芝居じゃないと思うんだけどなぁ。
なにかが違う感が終始離れない映画でもあった。


そういうところもみんなひっくるめて、今回の監督は明らかに人選ミスだったように思う。
監督した入江悠は、これまで『SR サイタマノラッパー』(09)や『劇場版 神聖かまってちゃん ロックンロールは鳴り止まないっ』(11)、『日々ロック』(14)といった、いわゆる「音楽映画」を手掛けてきた人。
どういういきさつで今回のような、どう考えても畑違いな作品の監督に抜擢されたのかが、よくわからない。
製作サイドが「新しい血」みたいなものを求めたのだろうか。
それは一つの賭けでもあり冒険でもあったのだろうが、完成した映画みる限り、それが正しかったとは言い難い。



スコア担当は岩崎太整。
入江監督とはずっとコラボレーションを組んでいる。
監督もそうだが、この岩崎氏も正直、荷が重すぎたのでは・・・? という印象が残る。

スパイ映画=「007」あるいは「スパイ大作戦」という、じつにわかりやすいコンセプトのスコアになっており、どことなく「グリーン・ホ―ネット」を思わせるメインテーマはとりあえずかっこいい。
岩崎氏もこのあたりのジャンルに思い入れがあるのだろう.。
だが、そこからもう一歩踏み込んだものがないのも事実。
それだけじゃ上っ面をなぞるだけの印象しか残らない。

やっぱり、演出同様、深みに欠けるのだ。
じつに惜しいスコア。

なお、サントラにはエンドクレジットに流れる、ジャニ系のナンバーは収録されていない。
まぁ、そんなナンバーが流れるところが、この映画のアイドル映画たるところなのだろう。



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