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2015年02月21日17:55

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心が変わると・・・・人生が変わる



昨日の日記に引き続き、丸山浩路さんの「本気で生きよう! なにかが変わる」(大和書房)より感動的なお話を紹介します。

講演会を終え、楽屋で着替えしているドアが開いてひとりの若者が顔を突き出しました。細面の顔に短くカットした茶髪、そして右耳に銀色のピアス・・・・。
「ヨッ! オレのこと覚えてっかよ」
返事に窮していると
「少年院、出たんだよ」
「アッ、あのときの・・・」

以前、ある少年院でお話をさせていただく機会がありました。
「起立!」
「礼!」
「着席!」
講堂に響く教官の号令に黙々と従う80人ほどの丸坊主の若者たち。壇上に立った私を見る若者の目は冷めていました。

そんな中で語り始めた講演。
ただ時間が過ぎるのを待つだけという若者たちに、私は苛立ちを覚え、気持ちは焦るばかり。どうしようもない敗北感に打ちのめされて講演時間半ばにして絶句しました。

(この若者たちの心に出会いを残したい・・・)
そう念じ続けた私はひとつ大きく深呼吸して手話を振りつけて「二度とない人生だから」(坂村真民作)の詩を語り始めました。


二度とない人生だから
一輪の花にも
無限の愛を
そそいでゆこう
一羽の鳥の声にも
無心の耳を
かたむけてゆこう

二度とない人生だから
一匹のこおろぎでも
ふみころさないように
こころしてゆこう
どんなにか
よろこぶことだろう

二度とない人生だから
一ぺんでも多く
便りをしよう
返事は必ず
書くことにしよう

朗読が進むにつれて、若者たちに確かな変化が現れ始めました。講堂の空気が動き始めたのです。拳をギュッと握り締める若者、伏せていた眼差しをキッと見つめる若者、落としていた肩を張って背筋をピンと伸ばす若者・・・・空気がどんどん私に集中してきます。

二度とない人生だから
まず一番身近な者たちに
できるかぎりのことをしよう
貧しいけれど
こころ豊かに接してゆこう

二度とない人生だから
つゆくさのつゆにも
めぐりあいのふしぎを思い
足をとどめてみつめてゆこう

二度とない人生だから
のぼる日しずむ日
まるい月かけてゆく月
四季それぞれの
星々の光にふれて
わがこころを
あらいきよめてゆこう

(動いた! 空気が動いた!)
そんな喜びで私の目に入ってきたのは、天井を見上げたまま微動だにしない若者の姿でした。天井を見上げたままの若者の瞳から流れ落ちてくる涙でした。彼は泣いていたのです。
その若者が目の前にいる彼だったのです。
彼は強い口調で言い始めたのです。

「オレよ、院に入る前はよ、いつ死んでもいいと思っていたよ。どせオレなんか邪魔者扱いだ。死んだって誰も悲しみはしねえ。だから何でもやったよ、正真正銘のワルだったよ。少年院に入るときも、院帰りで箔がつくと思ったくらいだ。

それがよ、アンタの『二度とない・・・』なんとかってのを聞いたときだぜ。アンタ、手まねしながら泣いてしゃべってたよな。オレの父親と同じくらい年くったアンタがマジになって泣いちまってよ。それを聞いているうちに、『そうだ、死んだら終わりだ』と思っちまってよ。涙ウルウルしたよ。

あんときアンタ言ったろう、『心が変わると人生が変わる』って。やさしくなろうと心に決めれば人生変わると。オレよ、マジに信じたよ。心を変えよう、やさしくなってみよう!そうすりゃ人生も変わるって。本当にそう思って院を出たんだよ。

でも、なんにも変わらなかったぜ。コロッと信じたオレも甘かったかもしんねえけど、アンタは大嘘つきだよ。
家に戻りゃ『コイツがこうなったのはオマエのせいだ』『アンタが見てくれなかったからよ』と親父とおふくろは大喧嘩。団地のババアたちはガキを近づけようともしねえし、学校の先公はオレを見ると路地にコソコソずらかりやがる。

よう、丸山さんよ、なにも変わらなかったぜ。騙されてバカみてえ。
オレ、アンタぶっ殺すかわりに他人(ひと)さまを殺してよ、『どうして殺った』と聞かれたら、丸山という大嘘つきに騙されて頭にきて殺ったと言うよ。そうすりゃアンタ終わりだよな。それ、言いたくて来たんだよ。じゃあな―」
そう言うと彼は立ち去ろうとしました。私は慌てて彼の前に立ちはだかりました。

「ちょっと待て!」
「うるせーな。もうなんにも聞きたくねえよ」

私は言った。

「待ってくれ。あのときは時間がなくて説明できなかったんだ。『心が変わると人生が変わる』と確かに言った。でもな、すぐに変わるわけじゃないんだ。いいか、よく聞け!

心が変わると態度が変わるんだ。お前、ムカツク奴を見ると手を上げるだろう。おふくろさんをひっぱたこうとするだろう。そんなとき『やさしくなろう』と思えよ。心に言い聞かせろよ。そうすると、あげた拳が下りてくるんだ。つまり態度が変わるんだ。

そして、もっと『やさしくなろう』と思え。すると手が下りただけでなく行動が変わるんだ。『おはよう』と自分から挨拶したり、『おふくろ、肩もんでやるよ』というふうに行動が変わっていくんだ。
心が変わると、態度が変わって、行動が変わるんだ。そうして、その行動を続けていくと習慣が変わっていくんだ。

一週間、『おはよう』と言い続けてみろ。おふくろさんの肩をもみつづけてみろ。それがお前の習慣になるんだよ。そして、習慣が変わると人格が変わるんだ。

どうしてかというと、習慣が身につくと、そういう人格の持ち主に見られてくる。思われてくるからだ。
友達は言うだろう。『アイツ、変わったぜ。自分から挨拶するようになったぜ』って。おふくろさんも言うだろう。「あの子は変わりました。以前は私に手をあげていたのに、今では肩をもんでくれます。やさしい子です」と。つまり、お前は習慣にふさわしい人格の持ち主に思われてくるんだ。そして、人格が変わると出会いが変わるんだよ。

出会いというのはな、人格にふさわしい出会いしか生まれないものなんだ。シンナーやってオートバイぶっ飛ばすお前には、そういう奴しか寄ってこない。自分から挨拶して、おふくろの肩をもみ続けるお前には、それにふさわしい友達が寄ってくる。
『類は友を呼ぶ』というやつだ。

人格が変わるから出会いが変わる。そして『運命は誰と出会ったかで決まる』ということを忘れるな。お前はオレと出会ったことで必ず運命が変わる。運命が変わるから、人生が変わるんだよ。

甘ったれるな。お前は実際ワルだったじゃないか。暴走族だったじゃないか。なあ、焦るなよ。


心が変わると態度が変わる
態度が変わると行動が変わる
行動が変わると習慣が変わる
習慣が変わると人格が変わる
人格が変わると出会いが変わる
出会いが変わると運命が変わる
運命が変わると人生が変わる

『心が変わって人生が変わる』までには、これだけ変わらなきゃならないんだよ。人を殺す!?  中途半端な変わり方しかできない奴が笑わせるなよ。人を殺す前にオレを叩きのめせ。オレに騙されて頭にきたんだろう。だったらオレを相手にしろ! カッコウばかりつけてイキガッテ! お前は最低だよ。弱虫!」

拳を握り締めて震えだした彼。
(殴りかかってくる)
思わず身構えたとき、彼はうめくように言いました。
「心が変わって人生が変わるまでにそんなに手間がかかんのかよ。でもよ、そんだけ手間かけて人生を変えてなんになるんだよ。
アンタ言ったよな、やさしくなろうと心を決めれば人生が変わるって。“やさしさ”ってなんだよ。人を助けたり、困っているヤツに金をやったり、やたらニコニコすることかよ、教えてくれよ。ナァ、やさしさってなんだよ」

私はメッセージ風に手話をつけて語り始めました。
「自分がこの地球上に生まれてきて、生きていることに意義があり、自分の存在がほかの人の喜びにつながる! これが“やさしさ”だ」

「お前が生きていて良かったと思う人がいるか?
お前を必要とする人がいるか?
自分の存在がほかの人の喜びにつながる・・・そんな生き方をしてみろ。
いつ死んでもいいと思っていた?
死んだって誰も悲しみはしねぇ?
どうせオレなんか邪魔者扱いだって?
寂しいなぁ、かわいそうなヤツだなあ。
イキガッテ肩で風切っても、カッコウつけてグループのリーダー張っても、誰もお前を必要としない。お前がいなくなっても誰も困りはしない。
ひとりぽっちなんだ・・・君は。寂しいなぁ、つらいなぁ・・・」

途中からうつむいていた彼。やがて、両肩が震えだしすすりなく気配が伝わってきました。ひとしきり泣いて、ゆっくり顔をあげた彼は私の顔をジーッと見つめました。
「丸山さん、オレ、もう一度やってみるよ。
そんな手間がかかるなんて思ってもいなかったぜ。
でもよ、オレだってやり直そうとした。やさしくなろうとした。
少年院で丸山さんの話、聞いて、人生変えてぇと思って・・・。でもよ、そのたんびにワル!ツッパリ! と言われて負けちまった。
オレに本気になって怒鳴ったのは丸山さんが初めてだ。こんなにムカツクこと言われても、今は丸山さんのことを全部信じる気になっている。やさしくなろうと心に決めてよ、態度とかドータラドータラ変えてみてぇよ。
オレ・・・ひとりぽっち。
オレが生きていることを喜ぶヤツなんて一人もいねぇなあ。みっともねぇよなあ。さびしいよぉ・・・」

思いつめた表情でブツブツ途切れるように話していた彼は、フッと一息つくとズボンの後ろポケットから折り畳んだ布切れを取り出しました。
「丸山さん、そのゴチャゴチャ変わるっていうのをこれに書いてくんねぇか」
それは彼が暴走族をやっていたときのグループのフラッグ・・・彼のオートバイにつけていたリーダの証しとしての旗でした。
「笑うかも知んねぇけど、これだけは大切にしたい。オレの青春・・・オレの誇り・・・。
“変わる”ってのをここに書いて・・・書いてください」

私たちは連れ立って楽屋に戻りました。そして、私は渾身のエネルギーをこめてその旗に筆を入れました。

心が変わると
態度が
行動が
習慣が
人格が
出会いが
運命が
人生が変わる
心が変わると、人生が変わる!
二度とない人生だから!!



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