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2015年02月04日19:00

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予習して行かなくてちょうど良かったと思った宝塚観劇「白夜の誓い─グスタフ三世、誇り高き王の戦い─」

宝塚歌劇は、実在の人物を主人公にしたストーリーの場合、実際に近い人物像は、あくまで題材です。
宝塚歌劇と実際とでは、食材と料理くらいの違いがあります。
実在の題材が活気があり混沌とした市場であるなら、宝塚歌劇はテーブルに出された料理なのです。
でもちゃんと市場で手に入れた食材が使われているのです。

って思いながら、見るものですね、宝塚歌劇は。
ということを改めてつくづく思いました。

でも、そのギャップも面白いです。
あらかじめ下調べをして行かなければ、あるいはその実在の人物像にこだわりがなければ、美しいメロドラマとして楽しめます。

それになんといってもわざわざ宝塚で見たい理由は、その夢のような現実ばなれした華やかな世界です。
歌や踊り、豪華な衣裳や舞台装置も見たいのです。
それに、女性が男性を演じる中性的なものに対するあこがれは、男女問わずあると思います。
つまり、逆に歌舞伎で男性が女性を演じる美しさと通じるわけです。
異性が演じることによって理想が全面的に出てきますから。

今回観劇したのは、スウェーデン王グスタフ三世の生涯を題材にした宝塚歌劇でした。
フランス革命前後の時代で、このあたりのヨーロッパ史には関心の高い私ですが、北欧のことは詳しく知らないです。
フィンランドがロシア/ソ連の属国と化していた印象は強いですが、スウェーデン対デンマークだと、どっちが強いんだっけ?
というレベルになってしまいます。
このグスタフ王の時代は、まだデンマークの方が大国でスウェーデンを属国扱いしていた時代の記憶が強いようです。
私にしてみれば、ヨーロッパ史の表舞台では、西欧列強との確執はスウェーデンの方が印象に残っていたので、そうなんだーと混乱しそうになったものです。
おそらく、このグスタフ三世以降に今度はスウェーデンの方が力をつけたのかも。
あれ、でもロシア史でいうと、グスタフ三世時代はエカテリーナ女帝時代と重なるけれど、ロシアが対スウェーデンで意識していたのは、それより前のピョートル大帝だったなぁ?
そう考えると北欧史も東欧史以上に私の中で空白なので、それが旅行の動機になりうるかもしれません。
今年海外旅行に行けるか分からないけれど。

今回の宝塚歌劇はグスタフ三世の生涯だと分かっていても、グスタフ三世のことを全然知らなくても、予習して行きませんでした。
それが幸いしたようで、完全なるフィクションのごとく、楽しめました(笑)。

見終わったあと、次のレビューが始まるまでの休憩時間中、スマフォでウィキペディアで調べましたが、そこにあった内容だけでも、宝塚歌劇上の人物像とのギャップに驚いたものです。
そのギャップは面白かったですけどね。

ただ、観劇前に下調べしていたら、オペラ座のこけらおとしの舞踏会で暗殺されて若くして命を落とすというラストは、最初から分かっていたと思います。
宝塚歌劇での印象は、役者は若いままで、壮年くらいであればその年齢にあったメイクにしないですが、30代くらいで亡くなったかと思いましたが、享年46才でした。
いや、でも十分若かったです。46才ではねぇ。
いろんな改革をすすめたり、スウェーデンを大国にしたてる外交や戦争を勝利したり、一方でまだまだ国内をまとめきれていなかった王としては、まだまだこれからだったはずです。

それにしても、宝塚歌劇でのラストはきれいすぎでした@
いや、それこそが宝塚だからいいんですけどネ。

実際のグスタフ三世も、民の悲惨な生活を気にかけていた啓蒙的な王様だったかもしれません。
しかしあの時代の列強の王様同様、啓蒙思想に理解は示しても、フランス革命の影響もあり、啓蒙君主というよりは、絶対専制君主でした。
ウィキペディアでは、グスタフ三世が即位するまでの時代を、貴族の意志が政治に反映された「自由な時代」と称していましたが、宝塚では分かりやすく、力のある貴族が私腹を肥やし、ロシアに国を売り渡すようなマネをしても自分の利益しか追求せずに民を苦しめていた、ということにしていました。
だからこそ、グスタフ三世自らがクーデターの形で貴族をおさえこんだ、ということになっていて、分かりやすい勧善懲悪劇でした。

ところで宝塚歌劇では、スパイと化していた近衛隊長の裏切りにより、計画したクーデターははじめ失敗し、親ロシア派の貴族に側近たちがとらわれ、味方をもぎとられた状態で王は幽閉されてしまいます。
ところが、そこから脱して、悪役の親ロシア派の貴族のボスをとらえ、無血クーデターを成功させるに至るまでの段取り部分は、思いっきりカットされていました(苦笑)。
幽閉中に、アーサー王のエクスカリバーのごとく伝説の剣を見つけたというゲームソフトみたいなエピソードは美しくぼやかされたままでもいいと思いました。
でも、そこから敵役の貴族に「どうやって脱出できたんだ!」というセリフを言わせた経緯───自身が脱出をはかり、とらわれた味方をとりもどして、秘密裏に反撃できたいきさつには興味津々だったのですが、すっぱりスルーされてしまいました@
どうやって絶体絶命の危機を脱するのか、ものすごくわくわく楽しみにしながら見ていたのですが……ま、しょーがないですね。

ラストに暗殺されて亡くなる直前、宝塚では、グスタフ三世は、政略結婚のデンマーク王女だった王妃とは、少しずつ心を開き合って、これから信頼関係を結べそう、というかんじの惜しいところで亡くなったように見えます。
でも、ウィキペディアくらいでざっくり調べた程度でも、ちゃんと子供はいたけれど、王妃との仲は冷めていたままだった様に読めますし、フランスから呼び寄せた伯爵夫人は、宝塚では「大切な恩人」などときれいごとを言っていたけれど、やはり愛人説が強いようです。
とはいえ、このあたりは王のプライベート。
恋愛事の当事者の心の機微・真意や肉体関係の有無なんて、ほんとのところはどうよ、ということで、まわりの憶測や世間一般に言われている方が的外れで、ちょっと考えにくい美しいプラトニックの方が真実ってことは、とってもありえますけどネ。

また、宝塚歌劇のグスタフ王は、国民思いでありつつ、腹心の臣下にも良い王様、というかんじでしたから、絶対専制君主ときいて、こりゃびっくり、と思ったものです。
でも、よく思い出せば、歌劇の方でも、専制君主の言動はちゃんとありました。
それが、宝塚では、おのれが良いと思った信じる道を突き進む、とか、進歩的な思想の持ち主であり、間違っていると思ったら長年の慣例を破ることも厭わない、とか、対する臣下の方が現代人からして間違っている進言して平行線となったから、王の権限で退けた、というかんじに、あくまでグスタフ王にとってきれいに処理されていたので、気付きにくかっただけです。

もっとも、王は国民に人気があったのは確かなようです。
でも、やはり内部の政治改革などで、王に不満を抱いていた貴族たちがいたのも確かなようです。
また、宝塚では、民や軍の犠牲をはらってまで戦争を展開したり、軍事力の強化をすべきではない、という思想を持っていた王ですが、実在の王の方は、宝塚で題材にされた戦いには勝利して、列強にスウェーデンの力を印象づけたものの、たくさんの戦死者を出し、相当な国費を費やしたようです。
宝塚では、王はこれからは軍事力=国力の時代ではなく、平和な時代が来ると信じて、その象徴として大金をつぎこんでもオペラ座を完成させたい、としていましたが、うーん、世界史を見る限り、これからどんどん世界戦争の時代へ突入するので、ほんとに王様がそんな考えでいたとしたら、当時としては確かに無謀だったはずです。
それにオペラ座を平和の時代への象徴としたい、というのも分かる気がした一方で、そこに大金をつぎ込んだのであれば、やっぱり大半は本人の道楽で、いくら宝塚の世界に酔っていた私でも、ていのいい言い訳にしか思えませんでした(苦笑)。

ウィキペディアには暗殺者の名前も明記されていましたが、宝塚ではその人物はグスタフ三世の幼友達で、無二の親友という設定でした。
現実はどうか知りませんでしたが、こういう思い切ったドラマ化は、定番かも知れませんが、宝塚歌劇のような昼メロの世界としては良い設定だと思いました。
もし観劇前に下調べをしていたら、その親友が王を暗殺する、という哀しいラストに早くに気付いていたかもしれません。
でも、その伏線がでるまで気付かずにはらはらしながら鑑賞していられたのは、それはそれでかえって良かった気がします。
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