私にとって何か特別だったわけではない、それどころか休日ですらなかった。
1年365日のうちの、ありきたりな、ある日。
今日は、文字通りの意味で「日記」を書こうと思う。特にオチはないので暇人だけ読むがいい。
仕事から帰り、一休みしたのち、こんどは私用で再び出かける。
用件はふたつ。
知り合いが持ち物のいくつかを嫁に出すことにした。
そのひとつを私が貰い受けることに。
その授受がひとつ。
もうひとつは、一昨年の”忘れ物”の回収。
処分してくれと伝えてあったのだが、家主夫妻はその後一年保管してくれていた。
このままでは延々迷惑をかけるので、早々に引き取りに行くことに。
秋葉原の駅構内で”嫁”の授受を終えると、電車を乗り換え渋谷へ向かう。
渋谷は相変わらずアウェーの空気が満ちてやがった。
秋葉原を歩くと街に溶け込んでる自信があるが、渋谷では浮いてる自信がある。
「いま渋谷、もうすぐ着く」との旨のメールを打っておく。
もう一本乗り継ぎ、さらに徒歩数分。
目的の家が見えてきた。
明かりはついていた。
ノックする。
返事がない。
ノックする。
返事がない。
ただの留守のようだ。
って、マジかよ!!w
そういえば芝居見に行くとか云ってたっけ。芝居が押してるんだろうと見当をつける。
仕方ない、待つか……。
しかし、辺りは閑静な住宅街。鍵のかかった玄関の前で待ってるのも絵ヅラが怪しすぎる。
とはいえ、近くには店もない。
おまけに寒い。
やれやれ困ったな。と、そこまで思ったとき携帯が鳴った。きっと家主だろう。
だが、発信者は別の友人だった。
その名前を見て、気持ちを切替え電話に出る。用件には心当たりがある…。
その心あたりは的中した。
臥せっていた彼の母親の訃報だった。
看病する彼を陣中見舞いしたのが去年。この冬は越えられないかもしれない。そう言っていた。
最期の様子を聞き、それはせめてもの幸いだったと、思ったままを口にする。
眠るように逝ったらしい。
すぐに駆けつけようかと申し出たが、当日だからとそれは辞された。
しばらく、ただただ話を聞き、大変だったなと背をさすった。
実際に手は届かないが…
電話を切ると、間髪入れずにまた鳴った。
こんどは家主だった。
やはり芝居の開演が遅れ、そのまま押したらしい。ちいさな劇団にはままあることである。
ほどなくして、家主が走ってきた。いや、なにも走らなくても…
荷物を受け取り、
カレーを頂き、豆をもらって(その豆食いながらこれ書いてる)
五分余りでおいとまする。
そのわずかな間、その場にいない奥方様がいかにこわ、じゃなくて、いかに偉大な存在か。
そんな話になったのは内緒である。
帰り道、荷物がずっしり重かった。
てか、こんなに思ったっけ……? 中身のない、空の容器だけでこれか…。
あの時とれだけ気合を入れたか、この重みが語っている。一昨年のおれを褒めてやりたい。
重くかさばる荷物を抱え、帰路に着く。
ターミナル駅の人ゴミの多さが、ちょっとつらかった。
ホームで電車を待つ間、あたりを見ると誰も彼も端末片手に下を向いている。
おれは部屋にいる時は、中途半端にだらだらネットして時間を無為に過ごしたりもするけど
外にいる時は、なるべく外を見ることにしている。
見る。それは、視界に入れている、って意味じゃない。意識に入ってなきゃだめだ。
電車から見える風景が流れていく。
かつて住んでいた船橋が近づいてくる。先述の旧い友人もここに住んでいる。
彼の母親とは直接の面識はなかった。どんな人生だったのだろう。
おれたちの高校は給食も購買もなく、昼食は弁当だった。
彼とは共に弁当を食ったこともある。
おそらくはその弁当を作った人。どんな気持ちで作っていたのだろう。朝がつらい時もあったろう。
でも、おかげで彼とは楽しい高校生活を共に出来ました。あの思い出は俺たちの宝物です。
ありがとうございました。
しばし目を瞑る。
地元駅へ降り立つと、空気が冷たかった。
やはり、田舎は寒い。見上げると星がよく見えた。
そして、荷物は相変わらず重かった。往復6時間の小旅行。
でも、もう少しで我が家だ。
何の変哲もない、とある日常。
良いことも悪いことも区別なく綯い交ぜにして、星は今日も巡る。
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