時折、 に、追い掛けられる。
いや、待ち伏せされる、という方が適当か。
道ばたでひょいと蹴躓いた小石の裏や、
立ち寄った本屋の棚の真ん中に何気なく差さっている。
日々はあれこれと忙しく、
何とは無しに生きていると。
そうした過去は、目に留まらなくなる。
そう思っていると。
全然違っていた事に気づかされる。
消え去るのではなく、薄い大気と混じり合い。
この世界に満遍なく染み通っているだけ、
という事なのだ、と。
そして、その大気は。
時折、目の前でひょいと固形となる。
小石や、本などの形に。
それは、出会い頭は驚くが。
やがて奇妙な安堵を感じる。
ああ、「それはまだ生きている」と。
空気に溶け、目には見えない粒子となって。
漂い流れているだけなのだ。
気付くと、掌に粘る汗を感じる。
それは、きっと。
大気に溶けていた、
「あの粒子」なのだろう。
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