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2014年01月11日20:50
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1/9 湯川潮音＠横浜開港記念会館
『濡れない音符 発売記念 演奏会』
open 18:00 start 19:00
vo,/ag：湯川潮音 piano： 藤原真人 cello： 徳澤青弦 violin :中島久美 flute,sax,clarinet :武嶋聡 percussion : 菅沼雄太
チケット前売 4200円（税込）
2010年の11月に出したアルバム「クレッシェンド」は多彩なゲストを迎え、サウンド的にもバラエティに富んだ意欲作だった。
その後2011年4月、湯川潮音は直前に起きた震災による逡巡を抱えつつも単身ニューヨークへ向かう。かの地に滞在した約半年の間、ストリートで演奏したりライブハウスに飛び入りで参加したり。言葉の通じない国で、改めて言葉の持つ意味を考えた。もっとも彼女は以前にもロンドンやアイルランドに滞在したことがあるそうで、見た目とは裏腹にかなりアクティブな人ではある。
帰国した彼女は、まず家造りから始める。かつておばあさんが住んでいて長らく空き家だった築50年くらいになる家を、大工さんと二人三脚で造り直す。コンクリートを打ち直し、屋根を張り替え、風呂場を新しくする。大工さんから臭いが染み付いた（笑）ニッカポッカをもらったり、「お嬢（湯川潮音のこと）と俺の仕事は似ているな。何も無いところからこつこつと作っていくんだものな」と言われたりしたというエピソードが僕は大好きだ。
そして完成した家にピアノを持ち込んで曲作りを始める。
行き詰った時は、大分の山の中で楽器の工房をしている松本舞香の所で楽器をいじったり夜は焼酎を呑んだり、佐渡へ行って現地で知り合った人たちと(おそらく)呑んだりして気分転換を図る。
難産の末に昨年の11月に発売されたアルバム「濡れない音符」には、そんな湯川潮音の3年間がぎっしり詰まっている。そしてこの日見たライブには、そのアルバムの世界が100％、いや150％、200％…数字では表せないほど表現されていたと思う。
会場は大正6年に竣工された歴史的建造物で国の重要文化財でもある横浜開港記念会館。本当にいい雰囲気のホールで、湯川潮音の声と紡ぎ出される音の世界にぴったり合っていた。今回のツアーではデビュー11周年にちなんで全国11箇所を回るそうであるが、会場にライブハウスはひとつもなく、歴史的建造物や教会や蔵、果ては佐渡島の廃校までというこだわりぶりが彼女らしい。
バックのメンバーはドラムの人以外はみんなアルバムに参加した人たち。ピアノの藤原マヒトがサウンドを引っ張り、弦楽器や管楽器が色を添える。ドラムやパーカッションの音は控え目。でもこの菅沼健太という人、曲によってコーラスしたりピアノの連弾にはいったりギターも弾いたりと大活躍でした。
ワンマンで見る湯川潮音もバンドを従えた湯川潮音も見るのは初めて。まずその声に魅了される。繊細で澄んだ声がよく通る。綺麗なだけではなく、とても力強い声。そう、今回一番感じたのは声の力強さ。会場の高い天井の隅々まで響き渡っていた。そして、観客一人一人の心にもしっかり届いていたはずだ。その声の熱がバンドのメンバーにも伝わり、演奏もどんどん熱を帯びていく。客席からは歓声も上がらないような静かなライブなんだけど、ステージからは物凄い熱量が伝わってくる。
オープニングの「りゆう」の出だしで泣きそうになり、「にじみ」や「笛吹きの少年」では歌の世界に引きずり込まれた。バックの演奏もダイナミックだった「ロンリー」ではアコースティックギターの弦をスティックのような物でこすって音を出すような芸当もやってのけた。途中うとうとしそうになる所もあったけれども、深い感動と多幸感を味わった夜だった。ちょっと想像していた以上に素晴らしく忘れがたいライブだった。
何度か見たインストアライブで感じた「ゆるさ」が感じられなかったのは、ツアー初日での緊張感からと思っていたが、数日前におばあさまが亡くなった影響もあったかもしれない。この日のライブ後にお通夜に駆けつけると言っていた。
アルバムのラストの曲であり、アンコール前の最後に歌われた「その日わたしは」の最後の箇所、「その日わたしは なくても生きていけるものに生かされていた」という歌詞がとりわけ心に残っている。音楽、絵画、映画、そして愛。確かに無くても生きていける。でもこれらのものが無かったら、おそらく自分も生きていないだろうと思う。
会場を出るととても冷たい北風が肌を刺す。
でも、心の中はぽかぽかだった。
※湯川潮音本人によるＭＣ、オフィシャルＨＰ及び下記のインタビューを参考にしました。
http://
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open 18:00 start 19:00
vo,/ag：湯川潮音 piano： 藤原真人 cello： 徳澤青弦 violin :中島久美 flute,sax,clarinet :武嶋聡 percussion : 菅沼雄太
チケット前売 4200円（税込）
2010年の11月に出したアルバム「クレッシェンド」は多彩なゲストを迎え、サウンド的にもバラエティに富んだ意欲作だった。
その後2011年4月、湯川潮音は直前に起きた震災による逡巡を抱えつつも単身ニューヨークへ向かう。かの地に滞在した約半年の間、ストリートで演奏したりライブハウスに飛び入りで参加したり。言葉の通じない国で、改めて言葉の持つ意味を考えた。もっとも彼女は以前にもロンドンやアイルランドに滞在したことがあるそうで、見た目とは裏腹にかなりアクティブな人ではある。
帰国した彼女は、まず家造りから始める。かつておばあさんが住んでいて長らく空き家だった築50年くらいになる家を、大工さんと二人三脚で造り直す。コンクリートを打ち直し、屋根を張り替え、風呂場を新しくする。大工さんから臭いが染み付いた（笑）ニッカポッカをもらったり、「お嬢（湯川潮音のこと）と俺の仕事は似ているな。何も無いところからこつこつと作っていくんだものな」と言われたりしたというエピソードが僕は大好きだ。
そして完成した家にピアノを持ち込んで曲作りを始める。
行き詰った時は、大分の山の中で楽器の工房をしている松本舞香の所で楽器をいじったり夜は焼酎を呑んだり、佐渡へ行って現地で知り合った人たちと(おそらく)呑んだりして気分転換を図る。
難産の末に昨年の11月に発売されたアルバム「濡れない音符」には、そんな湯川潮音の3年間がぎっしり詰まっている。そしてこの日見たライブには、そのアルバムの世界が100％、いや150％、200％…数字では表せないほど表現されていたと思う。
会場は大正6年に竣工された歴史的建造物で国の重要文化財でもある横浜開港記念会館。本当にいい雰囲気のホールで、湯川潮音の声と紡ぎ出される音の世界にぴったり合っていた。今回のツアーではデビュー11周年にちなんで全国11箇所を回るそうであるが、会場にライブハウスはひとつもなく、歴史的建造物や教会や蔵、果ては佐渡島の廃校までというこだわりぶりが彼女らしい。
バックのメンバーはドラムの人以外はみんなアルバムに参加した人たち。ピアノの藤原マヒトがサウンドを引っ張り、弦楽器や管楽器が色を添える。ドラムやパーカッションの音は控え目。でもこの菅沼健太という人、曲によってコーラスしたりピアノの連弾にはいったりギターも弾いたりと大活躍でした。
ワンマンで見る湯川潮音もバンドを従えた湯川潮音も見るのは初めて。まずその声に魅了される。繊細で澄んだ声がよく通る。綺麗なだけではなく、とても力強い声。そう、今回一番感じたのは声の力強さ。会場の高い天井の隅々まで響き渡っていた。そして、観客一人一人の心にもしっかり届いていたはずだ。その声の熱がバンドのメンバーにも伝わり、演奏もどんどん熱を帯びていく。客席からは歓声も上がらないような静かなライブなんだけど、ステージからは物凄い熱量が伝わってくる。
オープニングの「りゆう」の出だしで泣きそうになり、「にじみ」や「笛吹きの少年」では歌の世界に引きずり込まれた。バックの演奏もダイナミックだった「ロンリー」ではアコースティックギターの弦をスティックのような物でこすって音を出すような芸当もやってのけた。途中うとうとしそうになる所もあったけれども、深い感動と多幸感を味わった夜だった。ちょっと想像していた以上に素晴らしく忘れがたいライブだった。
何度か見たインストアライブで感じた「ゆるさ」が感じられなかったのは、ツアー初日での緊張感からと思っていたが、数日前におばあさまが亡くなった影響もあったかもしれない。この日のライブ後にお通夜に駆けつけると言っていた。
アルバムのラストの曲であり、アンコール前の最後に歌われた「その日わたしは」の最後の箇所、「その日わたしは なくても生きていけるものに生かされていた」という歌詞がとりわけ心に残っている。音楽、絵画、映画、そして愛。確かに無くても生きていける。でもこれらのものが無かったら、おそらく自分も生きていないだろうと思う。
会場を出るととても冷たい北風が肌を刺す。
でも、心の中はぽかぽかだった。
※湯川潮音本人によるＭＣ、オフィシャルＨＰ及び下記のインタビューを参考にしました。
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