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2013年01月13日04:32

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【追悼上映】シネマ歌舞伎『法界坊』

http://mixi.jp/view_item.pl?reviewer_id=1833905&id=1317032

1月12日、「中村勘三郎 追悼上映」にて鑑賞。客入りは多かった。
シネマ歌舞伎でこんなに客が入っていたのは『ふるあめりか』以来だ。



生で観ることは遂に叶わなかった平成中村座の舞台。
2008年11月、浅草寺境内にて上演された記録だった。

http://www.shochiku.co.jp/cinemakabuki/lineup/11/

『法界坊』は通称で、正式名は『隅田川続俤』(スミダガワゴニチノオモカゲ)。
江戸時代に成立した作品で、十七代目勘三郎の当り役だった。
バレエのような珍妙な演技や縄跳びの入れ事は十七代目が工夫した型。
串田和美の新演出で、鮮度のいい大衆演劇に生まれ変わった。



エロ、グロ、ナンセンス、ホラー、舞踊、荒事、何でもござれ。
これぞ江戸歌舞伎のショーケース、てんこ盛りの内容だ。
なので話がとっちらかり、前半(2h10m)はやや長いと感じた。

勘三郎の法界坊は、PRのため拵えをして界隈を練り歩いたとき、
通行人のおばあさんから210円を恵んでもらったそうな。 (笑)
きったない生臭坊主だが、立っているだけで愛嬌たっぷりだ。
一方、勘太郎と七之助は、役柄上か、お堅い優等生風だった。
脇では、嫌らしい番頭を演じた亀蔵の存在感が光っていた。


前半の十八代目は、いつも通り「エロい欽ちゃん」風の演技。
天衣無縫の明るさと、エネルギッシュなくどさで全力疾走。
息を切らせ、汗を流しながら、軽妙にしゃべり続けていた。
最も腹をよじったのは、いきなり台詞が飛んで出てこなくなった
十八代目が、橋之助と延々アドリブでしのぐシーン。(笑)
客いじりも多く、役者と客が同じ目線でやりとりする楽しさが
この舞台の魅力だった。十八代目のアドリブ力には感心した。

ぐだぐだな楽屋オチばかりではない、勘三郎は橋之助との殺陣で
何度も見得を切ってみせるのだが、10円ハゲの乞食坊主なのに、
やたらカッコいい。男前の橋之助といい勝負しているのが凄い。

しかし、女の奪い合いと掛け軸すり替えのドタバタ喜劇から一転、
凄惨な殺しが続いた上に、野分姫と法界坊が怨霊となって幕切れ、
という展開には驚いた。この話、どうやって収拾するの??と。



15分休憩を挟んで再開した第2幕は、前半とは打って変わって
様式美の世界。30分間、正統派の所作事尽くしだった。
(客の意識を切り換えるため、残り時間30分での休憩だろう)

前半の下世話なくすぐりでさんざん大笑していたお客さん達が、
果たして(綺麗だが少々退屈な)このノリについてくるかしら?
野分姫の霊と法界坊の霊とが入れ替わるのを踊り分ける趣向では
平生よりかなり痩せている、たおやかな扇雀と並んで踊るため、
衣裳を重ね着した勘三郎は一回り以上大きく、いかつく見える。
確かに踊りは上手いのだが…と気になった。

けれど、お組に変化した怨霊が正体を見破られて以降の展開は、
非常にスピーディーかつパワフルで、一気に興奮した。
怨霊がどんどん早変わりして、強大化していく様が面白い。
桜尽くしの舞台はとても華やか、捕手集団がいい動きをしていた。
背景が目まぐるしく位置を替え、戦闘の激しさを表現するうち、
舞台の奥がどんどん深くなり、やがてバーンと外壁が解放される。

そのカタルシス。

浅草寺境内の青々した杉林が、強い風に煽られながら輝いていた。
光と風が、熱気のこもった芝居小屋の中へ、爽やかに流れ込んだ。

捕り手に追い詰められた怨霊が、現代を後光のように背負っている。
江戸時代の怪異な世界と21世紀の広々した屋外がつながる奇跡。
そのシュールな光景を観た瞬間、思わず感動して涙がこみ上げた。

ストーリーとしては収拾不能、もはやハチャメチャではあるが、
細けぇことは、どうだっていいじゃあねぇか!と捻じ伏せるような
魅惑の異次元が、目の前に現出していた。

捕り手たちが編んで構えた紅い大縄へ、怨霊がドーンとダイブする。
そしてラストは、舞台正面に持ち出された台の上で大見得を切り、
傍役たちが美しいシンメトリーで花を添える。 猛烈な桜吹雪。



観客たちはスタオベの嵐、思い切り両手を振り回して大興奮だ。
勘三郎は眉の上に両手をかざし、満足そうに客席を見渡しては
何度もお辞儀した。カーテンコールは2回、熱狂の舞台だった。



      かわいい      かわいい      かわいい      かわいい



おまけ・『大江戸りびんぐでっど』

  https://www.shochiku.co.jp/cinemakabuki/lineup/1799/


3時間の『法界坊』を観終わって、首肩は凝ったが気分は高揚していた。
そこで、勢いで『大江戸りびんぐでっど』も見ることにする。
終演後チケット売場へ回る客は他にもいた。席は『法界坊』よりも埋まっていた。


前回 http://mixi.jp/view_diary.pl?id=1604925821&owner_id=1833905 観た時と
かなり印象が変わった。クドカンは、よくも悪くもインテリでシリアスだった。

続けて観比べると、『法界坊』の破天荒パワーは桁違いだった。
歌舞伎座でかける芝居には、やはりある程度の洗練味が求められたのを確認した。



新しい歌舞伎座に、あの愛すべき十八代目は戻ってこない。

ショックは少しずつ薄れてきたが、やはり、寂しくて仕方がない。



【INDEX】歌舞伎関連日記
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