実は『MR.BRAIN』の“九十九龍介”もお気に入りのキャラでして、ずっと前からコラボが出来ないかと考えていたのですか。
そんな訳で全然関係ないコラボショートストーリーなんぞ
神戸君は顔認証システム開発の主任だったので、多分科警研にも出入りしていたのでは?と、言う事でコラボして書いてみました
ただ、問題はどれくらいの人が分かるか。ですが・・・
▽ ▽
登場人物
警視庁特命係: 杉下右京 神戸尊
警察庁科学警察研究所:九十九龍介 由里和音
『神戸君、科警研へ』
九十九「杉下警部?んーー名前だけは聞いたことあるかもしれません。貴方がここに来たと言う事は、いつか僕の研究材料になるかもしれませんね」
そう言ってその人物は、彼に診断を扇ぐためのファイルから顔を上げると、妙に無邪気な笑みを浮かべ「食べますか?」と尊にバナナを差し出した。
尊「はあ、じゃあいただきます・・・」
この一風変わった学者は、初対面の人物を差し出したバナナに対する反応で人を見るらしい。との話は聞いていた。
が、それは単なるリアクションだけの話で、そこに醸し出された雰囲気は、非常に右京とよく似たものを感じる。
ここは警察庁管轄の科学警察研究所。通称:科警研。
科警研じたいは尊も官僚時代に顔認証システムの件で何度か訪れているが、犯罪心理学に順ずる脳科学に関してのセクションには初めて足を踏み入れる。
科警研所属の脳科学者九十九龍介(つくも・りゅうすけ)は、元ホストと言う異色の経歴を持つ。
背は尊と同じくらい。歳は捜査一課の芹沢と同じくらいか。
元人気ホストクラブのイケメンホストとして有名だったと言う話だけあり、その顔立ちは非常に整っている。
しかし、上着の下に着たクラシックなデザインのシャツは皺くちゃなまま、そして櫛も入れてなさそうな無造作に伸び放題な髪を、今は後ろで束ねているが、最近までそのままであったと言うほど、身だしなみには無頓着のようだった。
右京「科警研には君も警察庁にいたのなら、行ったことありますよね?」
尊「ええ、ありますけど。何か?」
右京「君のその夢について、調べられるような人がいるようですから、君、行ってみてはいかがですか?」
そう言って、特命係の我らが変わり者警部が何処から仕入れてきたのか、この人物の事を教えてくれたのは丸きり興味本意であると思う。
科警研のロビーで彼を待っていたのは、九十九の助手であると言う由里(ゆり)と言う研究員だった。
彼女が話すには、九十九は数年前、とあるビルの解体現場に囲まれた金属製の塀の下敷きなると言う事故に遭い脳を損傷、もう生きて目を覚ますことはない。とまで言われていたが奇跡的に脳が修復し覚醒。しかも同時に天才的頭脳を身に付けていたという。
しかし、その影響からか美的感覚があべこべになっており、身だしなみに無頓着なのはおそらくそのせいだろう。との事だった。
「神戸警部補だったら絶対『見かけが不自由な人』と言われますよ」と、彼女は拗ねたように尊に話す。
ああ、つまり彼女は彼に気があるんだな。と、その表情を見ながら彼は思った。
由里「九十九先生入りますよ」
と、言って通された九十九のラボは、一見二重のガラス張りのように見えるが、手前の半透明のパネルは2D、3Dの映像や画像を写し出す事のできるモニタになっていた。
九十九「あれ?警視庁からって言ったけど、リンダ君の事じゃなかったの?」
由里の声に青い色に染めた白衣を着た九十九はバナナを頬張りながら、見知らぬ警視庁の刑事の姿を興味深そうに見つめる。
その反応に彼女は「はあ」と、一つため息をついた。
由里「先生、林田(はやしだ)警部補はもう警視庁にはいませんよ。聞いていなかったんですか?」
尊「リンダ君?」
由里「ああ、林田さんと言う九十九先生が仲良くしていた捜査一課の若い刑事の事です。この前あることがきっかけで異動になりましたが」
と、尊の質問に彼女は答えてくれた。どうやら彼にとっては『警視庁の刑事=リンダ君』らしい。
そんな人いたんだ。まあ、捜査一課に行くとしたらもっぱら7係しかないから、知らないのも当然かも。
尊「先ほど連絡しました警視庁特命係の神戸です。初めまして」
そう気をとり直して尊は目の前の空気の読めない科学者に挨拶すると、九十九は突然「きゃははは」と奇声を上げた。
九十九「ごめんなさい人違いしてました」
尊「はあ・・・」
突然笑われた戸惑いから尊はすっかり硬直し、間の抜けた返事しか返せない。
そんな尊を九十九は面白そうに見ると、彼の手にある右京が書き出した彼のファイルをひょいっとつまみ上げる。
九十九「申し遅れました。わたくし漢数字の『九十九(きゅうじゅうきゅう)』と書いて、つくもと言います」
▽
九十九のラボのあるフロアは、女性職員を中心に不思議そうにこちらを覗き込む視線を感じる。
それもそうだろう。科警研代表のイケメン科学者が、警視庁で有名なイケメン刑事をガラス張りの部屋に閉じ込めているのだから、画的には何事かと言うような状況になる。
しかし当然九十九はそのような反応もどこ吹く風で、向かいに座るいま手渡されたバナナを口にする尊の様子をじっと見ている。
九十九「ソン君って」
尊「え!!」
ふいに出たその言葉に、尊は思わず表情を固くする。捜査一課7係の連中や陣川ならともかく、初対面の彼がなぜその呼び名を。しかもこいつは俺より年下だぞ。
その反応に、当然ながら九十九は面白そうににこにこと笑っている。
九十九「あ!やっぱりあなたは『ソン君』って呼ばれているんですね」
尊「何で・・・。あ!さっきの『リンダ君』と同じですか」
九十九「人にニックネームをつけるとき、まずは姓名のどちらかの短縮しやすい方を選びますよね?」
尊「はあ」
九十九「貴方は、名字が“かんべ”名前は“たける”だから略せる部分は“かん”と“たけ”。普通なら“かんちゃん”とか“たけちゃん”とかになるのでしょうけれど、貴方の場合は名前に使われた文字が面白かった。そうなった場合、人は面白い方を選びますからね」
その説明の仕方に、まるで右京の蘊蓄を聞いているようだと尊は思った。
九十九「そう、貴方の言うとおり僕の脳内の『仲の良い警視庁の刑事』のイメージが未だに抜けないリンダ君と同じ法則です。でも貴方は“ソン君”と呼ばれるのは嫌そうなので年上で僭越ながら“神戸君”と呼ばせていただきます」
尊『なんか杉下さんみたいな人だな・・・』
と、尊の独り言をかき消すように、九十九は“神戸君”と言ってバナナの柄で尊を指す。
普段から聞きなれたその呼び名に、尊はすぐにつき出されたバナナの柄を見る。
九十九「今の反応も、ちゃんと脳は素直に反応しているんです。貴方は先ほど僕に“ソン君”と呼ばれた時には、半ば諦めのような表情が見てとれました。悩み事がある場合、ネガティブな気分になれば何の解決も見いだせないものです。しかし“神戸君”と呼ばれた時、貴方は僕にすぐに反応しました。杉下さんと言う方は、常にこの呼び方で貴方の事を呼んでいるようですね。それに、先ほどと脳の反応の位置も違いました」
と、九十九は昔のゲームセンターにあったような、ゲーム画面のようなテーブルを軽くタップする。
すると、そこから脳の3D画像が浮き上がった。
九十九「もちろんこれは神戸さんのものではありませんが、人体と言うものは無意識に最善の方法を取っているものなんです。ですから、貴方の目や仕草を見ていれば、脳のどこが働いているのか、だいたい分かります」
そう言いながら、九十九は尊の脳が今働いているであろう位置を、立体画面に映し出された脳にレーザーで示した。
尊「あの・・・」
バナナを食べ終え、小さく挙手をしながら彼は一人で喋る九十九に質問する。
尊「それと僕の夢の話とどのような関係が・・・」
九十九「いい質問です」
尊「え・・・」
尊の質問に、九十九はぐいっと彼に顔を近づける。当然ながら尊は椅子の背に仰け反る形になった。
ガラス張りのこの部屋では、あまり周りからは見られたくない姿ではある。
九十九「僕にも分かりません」
尊「ええ!」
じゃあこのリアクションは一体何なんだ。と、思いながら、尊は九十九の次の言葉を待った。
九十九「夢と言うものは脳の世界でも秘境のうちに入ります。何しろ本人の脳内にしか見えず、無意識のうちに見るものですからね」
尊「でも先ほどあなたは無意識のうちの反応は、最善のものが多いと・・・」
九十九「ええそのとおり。貴方が頼まれた押収品の古いビデオテープの中身を見て以来、何故か時々見ると言う脚色のない忠実に過去を再現したと言う夢」
そう言って九十九は興奮ぎみに25年前の出来事そのままだと言う、尊が今までに見たという夢の内容が事細かに記載されたファイルをペラペラとめくり、確信に満ちた声で尊にそれを告げる。
九十九「それは貴方が刑事だからです」
尊「・・・」
その言葉に、尊はしばし言葉を失った。
尊「何なんですか?その答え」
九十九「僕はいたって真面目ですが」
『やっぱりこの人杉下さんのまんまだよ・・・』
やはり変人は変人を呼ぶものなのか?いや実際は呼んではいないけど、引き合わせるものなのか?と、尊は苦笑する。
その表情を見ながら、九十九はまた尊のそれよりも幼げな笑みを浮かべた。
九十九「僕はですね。神戸さん。刑事の勘というものに興味があるんです。だってそうでしょう。僕は脳を研究しているのに、結局はその脳に翻弄されるんですよ。そしてその最たるものが人の勘なんですよ。全ての脳の部分が連結して。若しくは未知の部分が働いているものが“勘”というものに思えてならない」
そう言って「くくく」と笑う。
九十九「つまりそれも、あなたが関わっている事件。若しくはこれから関わるであろう事件の重要な証拠である可能性がその中に含まれている可能性がある訳です」
そしてジェスチャーをくわえながら興奮気味に話す九十九の姿は、まさに推理を展開する右京そのものに見える。
尊「しかしですよ。夢は証拠にはなりません」
九十九「おっしゃるとおり。ですから、その夢を素直に見つめて動けばいいんですよ」
まさにそれは『同年代の右京』の答えだった。しかし、当然ながら尊は未だその答えに躊躇したままであった。
尊「・・・。それって、科学を否定する事にもなりませんか?」
その問いに九十九はにこりと微笑んだ。
九十九「でしたらあなたは何故、刑事をやっているのです?官僚には戻らずに。その時点で、あなたは僕と同じ答えを出しているんですよ」
ああ、そうか。考えてみればそう言うことだ。
つまり、今回のこの件は何も迷うことも無かったのかもしれない。要は気味が悪かったと言う一言に尽きる。
分かりやすく言えば『第六感』と言うことなのだろう。
『何だか昔流行った超常現象ばかり取り扱うFBIものみたいだけど、まあ。いいか・・・』
考えてみれば、あの部署も“特命係”みたいなもんだよな。
そう思うと、何だかおかしかった。
▽
そして警視庁の特命係に戻る頃日は既にずいぶんと傾き、日没の様相を呈していた。
秋の日は釣瓶落としである。
尊「ただ今戻りました」
右京「おやお帰りなさい」
尊「杉下さんお土産です」
尊が大きな紙袋に入れて持ってきたのは、スーパーではなかなかお見かけしないようなバナナの房だった。
右京「おや、これは一体?」
当然ながら右京は不思議そうな声を上げる。
尊「科警研の九十九さんが『杉下警部へ』とのことです」
右京「おやおや、どういう風の吹き回しでしょ?」
そう言って右京は面白そうにティーカップをデスクに置くと、置かれた紙袋の口に手をかける。
尊「杉下さんってもしかして、九十九さんの事ご存知なんですか?」
右京「いいえ、話を聞いただけでご本人の事は存じあげませんよ」
そう答えながら、まるで野球のグローブのような形のバナナの房を持ち上げてしげしげと眺めている。
右京「で、このバナナは?」
尊「バナナは脳への栄養補給に完璧な食品。だそうです。僕も挨拶がわりに渡されましたよ」
右京「なるほど。挑戦状ですか」
尊「え?」
どうやらこの変人の烙印を押された天才は、同じく変人の烙印を押された天才の意図をしっかりと汲み取ったらしい。
彼らが果たして対決する日が来るのかどうかは、それは誰も知ることはない。
終わり
▽ ▽
コラボした『MR.BRAIN』の本編中の科警研は『IPS』表記でしたが、ただの『IPS』は科捜研の事なので、挿絵では正確に『NRIPS』の表記で描きました。
ところで、考えてみたら『MR.BRAIN』には大河内さんと同じ顔の警察官が殺されていますので、実際のコラボは絶対に無理なのでした(ノ∀`)
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