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2011年11月10日16:47

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勝手に小説:第2話『志願者』 第五章:真実.4

第五章.3
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                       ▽

米沢「おやおや、これはこれは・・・」

重要参考人の逃走と言う事でやって来た鑑識と、他の複数の刑事が聞き込みやら、証拠品の採取をしているところで、米沢がPCから何かを見つけた。
それは何かを説明しているような文書ファイルだった。その何かとは例えば殺人を犯す際の順序だて。殺害方法が自殺に見せかけた転落死となれば、文章上も一見そうではなさそうに見せかける事は可能である。

右京「これは、金と一緒に実行犯に渡されたものかもしれませんねぇ〜」

米沢「と、言う事は警部。何処かの求人サイトに実行犯を募る文章がある。と?」

右京「闇サイトですか?まあ、その手のものは今や多くの人に知られてしまいましたからねぇ。もっと確実な、安全なものがあるでしょう。例えば・・・」

米沢「ああ」

そしてその会話の後ろで尊もその事に反応する。今となっては、それはこの件に関わった誰もが思い浮かべる事が出来るだろう。
犯行に使われたと思われる、この会社が推薦状を売って作ったペーパーカンパニー名義の携帯電話はここからは見つかってはいない。
おそらく、電波をシャットアウトする箱か何かに入れているのだろうが、違う場所に保管して感づかれてヘマをするよりも、一番安全な場所と言えばここだろう。
とは言え、逃げたとなれば今更捨てるなどと言う事はしないだろうから、当然その携帯電話も持って逃げるだろう。しかし、逃走用に使った車もおそらく本人名義の物を使ったとも思えない。
なにしろ、架空のものでなく生きたご本人が何人もいるのだ。

右京「米沢さん、念のため例の番号の、携帯電話の位置を特定出来ませんか?」

米沢「位置情報ですか?」

右京「ええ。念のためお願いします」

米沢「承知いたしました」

そして、ひとまず証拠物品となるようなものをまとめ、鑑識と刑事は日山を連れてその場を去って行く。
今回はものがものだけに、かなりの量となっている。
どちらにしろ、この事件は捜査一課、二課だけでなく、かなり大掛かりなものになる事には違いなかった。
そして肝心の通報の声であるが、ボイスチェンジャーの音を抜いたところ、実際の木下雅史の声とよく似た声質を持つ人物。と言う事が分かった。

尊「木下は見つかるんでしょうか?まあ、有名人ですからね。目撃証言くらいすぐに出てくると思いますが」

尊は警視庁の特命係の部屋に戻るなり、ミネラルウォーターのペットボトルを口にしながら、先ほど伊丹たちから聞いた捜査一課の話をぽつりとつぶやく。
赤坂や日山は、おそらく木下が捕まるまで出し子と呼ばれる人物たちに金を運んだ事実も、それをどこへ運んだと言うことも認めようとはしないだろう。
その社員やバイト全員がそこに集まっているような形になっているようだから、アリバイ確認も無駄である。

尊「しかし、実行犯が未だに出て来ないなんて・・・?まあ、あの中にいた全員が容疑者だし、荷物と一緒に逃げたんだから仕方がないか。五嶋さんも結局あれ以上は知らないようでしたし」

右京「まだ時間がさほど経っていませんし、聞き込みに回ってもどこに行ったのか分からないと言う事ですからねぇ。しかし、こちらには確実な証拠がありますから、焦らない事です」

そう言ってゆったりと紅茶を口にする。
しかし、この上司は何故携帯の位置情報の確認なんてさせたのか?確かにいわゆるIT系の人だから、ネットに繋がらない時間と言うものが、我慢が出来ないという事なのだろうか?と、尊も可能性を考えてみる。

右京「さて、木下の居場所が分かったところで、松田さんを君はどうするつもりなんでしょう?危険だと判断したら、連れて行かなくても構わないんですよ?」

尊「・・・そうですね」

まるで今日明日で居場所が分かるような言い方であるが、確かにそれは大事な事ではある。
おそらく亜弥加は無実が証明され、この事件の被疑者が送検されたと同時に元の部署に戻されるに違いない。
最後に遠巻きではなく、捕り物を直に見せておくのも良い勉強にはなるだろう。陣川さんのような懲りない性格でもなさそうだし・・・。
と、尊はそんな事を思い、大人しく椅子に座る亜弥加を見る。
尊に見つめられ、亜弥加は少し緊張ぎみに身を固くしている。

尊「松田さん、一度応援による捕り物も見ていたほうがいいと思うんだけれど、どうかな?」

亜弥加「え?!犯人捕まりそうなんですか?」

右京「ええ、その場で逮捕とは行かないかもしれませんが、近いうちに身動きの取れない状況になると思います」

と、尊の代わりに丁寧な言葉で右京が答える。

尊「どうする?まあ、急がなくてもいいけど」

その言葉に、亜弥加は口をつむいだ。そして少しだけ間を置いたあと、彼の質問に答える。

亜弥加「是非連れて行って下さい」

                     ▽

木下が持っていると思われる携帯電話の数々は、あっさりその日の夜に確認が出来た。
とは言え、それが確認できたのは短い時間でそれ以外はノートPCでのフリーメールらしい。
そのフリーメールを送っている者を確認する事は難しいが、その電波やGPSが確認できた場所、無線LANのある近くで車内でパソコンを覗いている木下雅史の乗る、車両のナンバープレートを確認すれば良い。
そうなれば、その番号は即座に都内の所轄や交番に連絡が行き、いつでも確保の用意が出来るということだ。

木下はおそらく自分が持つ物件の中で、一番人通りの多い場所を選ぶつもりだろう。しかし、あの場所はあまりに事件に使いすぎた。と、なれば人が既に忘れているような場所。と、言う事になるだろう。
選択肢はそんなに多くはない。ひょっとしたら用心棒を囲うかもしれない。金には困らないのだから。

伊丹「失礼しますよーーーーーーっと」

尊「伊丹さん」

右京「お待ちしておりました」

まるで居酒屋の暖簾でもくぐるかのように、その長身をくの字に曲げた伊丹が特命係の入り口からひょっこりと顔を出した。
しかし椿の手入れをしていた亜弥加は、未だこの鬼の形相をした刑事を快くは思っていないようで、顔を見るなり慌てて視線をそらす。

尊「ほら、松田さんも挨拶はしないと。まあ、ご覧のとおり恐い顔をしているけど、とてもいい人だから。伊丹さんは」

亜弥加「すみません。分かっていますが、般若みたいなんで・・・」

右京「松田さん、般若と言うのは間違っています。般若とは嫉妬に狂い、鬼と化した女性なんですから」

亜弥加「へえ・・・。知りませんでした」

伊丹「えーーーー警部殿。いちいち私の顔に関しての説明はいりませんので」

と、伊丹はクソ真面目に答える右京をやれやれと言う感じに見ると、一言本題を付け加える。

伊丹「木下の乗る車両が見つかりました」

右京「確認できましたか!」

伊丹「ええ、下手に有名なのが災いしたようでしてねぇ。車両は例の如く他人名義なんですが。今、管轄が追跡しているようですよ」

そう言うと、伊丹はにやりと片方の口元を上げる。が、すぐに奥にいる亜弥加を見ると尊に「で、お嬢ちゃんはどうするんです?」と質問する。
そして亜弥加は尊が答えるよりも先にしっかりとした口調で返事をした。

亜弥加「一緒に行きます!!」

その返事を待っていたように、右京はカップをデスクに置くとハンガーにかけてあった上着を羽織っている。そしてそれを横目に、伊丹はふっと尊に向かって鼻で笑う。

伊丹「一緒に連れて行ってもいいですけどねえ。くれぐれもこの前のように足手まといのにならないでいただきたいですねぇ。保護者の警部補殿」

尊「ええ、勝手な行動はさせませんから」

にこりと尊が微笑んだあと、「では」と、言い残し伊丹は踵を返した。

右京「我々も行きましょうか」

尊「はい」

そして2人は亜弥加を見る。
その視線に亜弥加は昨日のように少し戸惑ったような様子を見せたが、しかし意を決したように返した。

亜弥加「はい」

                          クローバー

第五章.5に続く
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