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2011年08月14日14:43

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【解説】プジョー905

プジョー・タルボ・スポールがSWC参戦に向けて開発した3.5リッター規定のグループCカーが「プジョー905」です。

905は本格的に新規定が施行される前の1990年のWSPCカナダで賞典外のマシンとしてデビューしました。

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F1的な構造を持つカーボンファイバー製のシャシーに流麗なデザインのボディカウルを被せた905は後にトヨタTS020をデザインしたアンドレ・デ・コルタンツの設計によるもので、この初期型905はカッコ良さでは当時ダントツのマシンでした。

サイドミラーは車体外部ではなく、室内のAピラーに取り付けられていました。
エンジン冷却用のラジエターはサイドシルに設けられていましたが、カウル表面には一切インテークダクトを設けておらず、フロントカウルの前端、ダミーグリルの下に設けられたインテークからダクトを引いて冷却する構造となっていましたが、あまり効率的とはいえないと思います。

モノコックのサイドシルが高く設計されていたことと、元々430kmのスプリントレース用であるためドアは無く、サイドウインドウのみがガルウィング式に開く方式でした。

エンジンは後のF1エンジンとは全く異なる「SA10型」で、ショートストロークの3499ccV型10気筒でした。
ギヤボックスは自社製の縦置き6速を搭載。

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1991年のSWC開幕戦鈴鹿で勝利を挙げた905でしたが、このレースでデビューしたジャガーのXJR−14を目の当たりにしたジャン・トッドは905には絶対的な速さが足りないことを痛感し、早速エボリューションモデルの開発を指示します。

これによりプジョーらしいデザインを持つオリジナルの905はSWCの第4戦に組み込まれていたルマン24時間が最後のレースとなりました。

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メルセデスやジャガーはそれぞれ3.5リッターマシンのC291、XJR−14を持ち込んだものの、C291は1度も走行せず、XJR−14は予選でポールタイムを記録しただけで本戦には出場せず、メルセデスは5リッターターボのC11を、ジャガーは12気筒のXJR−12を、それぞれ走らせました。

この年本戦に出場した3.5リッターのファクトリーカーは905だけであり、他はプライベーターのコントロールするスパイスのみとなりました。

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本当のポールポジションはメルセデスC11でしたが、この年は新規定マシンが先頭からスタートするように決められていたため、905やスパイスSE90Cを先頭にレースが始まります。

しかしチーム関係者ですら「もって日没まで」と言っているような状況であり、レースが6時間を経過する前に2台とも戦列を去っていました。

続く第5戦ニュルブルクリンクで予定していたエボリューション1を投入しました。

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個人的に「これはレギュレーション的にどうなんだ?」と思う“ほぼ”独立したフロントウイングや低く抑えられたフロントカウル、大きなリヤウイングが特徴ですが、ジャガーXJR−14の影響を受けているのは一目瞭然でした。

905EV1は第6戦マニクールでポールトゥウイン(1−2フィニッシュ)を飾り、続くメキシコでも1−2フィニッシュを果たし、一躍トップコンテンダーに躍り出ました。

92年は実質的なライバルはトヨタTS010のみで、開幕戦こそトヨタに優勝を奪われましたが、残りのレースは全て勝利しSWC最後のチャンピオンカーとなりました。

この92年の最終戦では「史上最も醜いCカー」と比喩されたエボリューション2がフリー走行に登場しました。

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何といってもこのフロントセクションが特徴なのですが、後々考えれば如何にもコルタンツの作品らしいデザインであることが分かります。
このデザインの中にもTS020や今日でも活躍を続けているクラージュC60〜C65に通じるものがあります。

ギヤボックスがセミオートマチック化されていたのもこのマシンの特徴です。

話が少し前後しますが92年のルマンにはルマン専用のデザインを施したEV1Bが投入されました。

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フロントウイングのないシンプルなデザインが好ましい905EV1Bは耐久性の面でも非常に優れており、危なげない走りで見事優勝を飾りました。

SWC終焉後の93年のルマンが905、そしてプジョー・タルボ・スポールにとっての最後のレースとなりました。

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最後のレースに投入された905EV1Cは横置きギヤボックスに変更されるなどさらにモディファイされ、1−2−3フィニッシュで有終の美を飾りました。

☆車両諸元☆プジョー905(1991年)
全長:4800mm
全幅:1960mm
全高:1080mm
ホイールベース:2800mm
トレッド(F/R):1630/1550mm
車両重量:750〜830kg

エンジン型式:SA10
エンジン形式:水冷80°V型10気筒40バルブ
ボア×ストローク:91×53.8mm
総排気量:3499cc

ギヤボックス:プジョー製6速

サスペンション:プッシュロッド式インボードタイプ・ダブルウィッシュボーン

ブレーキ:ブレンボ製カーボン・ベンチレーテッドディスク

ホイール:スピードライン製
フロント:13×17
リヤ:14.5×18

タイヤ:ミシュラン製
フロント:32/63−17
リヤ:37/70−18


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