わたしはリベンジを狙っていた。直前に知り合ったばかりの女の子に助けてもらうことに。
ぽ「Ｍ先生の名刺をもらってみたくはないか」
女子「え、わたしその人知らない」
ぽ「いーから来て」
ぽ「Ｍ先生、友人の○○も先生にご挨拶したいそうです！」
Ｍ（笑顔）
Ｍ先生と歓談していた二人のおじさんは、「やれやれ、こちらにご用のようだ」と退散した。さみしそうに離れて消える。きゃあ、申し訳ないことです。
ぽ「いつも、服のコーディネートにはスタイリストさんが付いているんですか？」
Ｍ「そんなことあるもんか」
照れて笑うと思ったのにー。不機嫌になっちゃった。わたしはその日に限ってお化粧がうまく出来なかった。瞳パッチリ作戦が３０％ダウンしていた。あー残念。
Ｍ先生の横に、一人が戻ってきた。もっと有名な人らしかった。へぇ！ そちらと女の子の話が弾み、と思ったら、両者はイギリスの大学院の先輩と後輩であることがわかり（４０年差）、異様に盛り上がっている。そこにＭ先生が加わり、某タレント学者の批判なんかをしていた。まぁいっかー。話の一段落したときわたしは深々と頭を下げ、女の子と共に場所を変えた。
正直言えば、わたしはＭ先生の著作なんて、共著で森本先生と出した本の１冊しか読んだことはない。そう彼女に話した。しかも、帰って確かめるとそれはわたしの記憶違いだった。Ｍ先生の著書はうちにまったくなかった。焦って探す。なんか持ってないのか、こんなにあって！
ウィキペディアで彼の業績を調べ出す。権威ある論文集の２００５年冬号に載ったことがわかった。それは毎号買っているわけじゃない。でも嬉しいことに本棚にあった。超特急で読み、お礼および「先生のご著書はまだ論文のなになにしか拝読しておらず不勉強ですみません」という内容のメールを送ってみた。「拝読」は即席すぎたが、嘘ではないから問題なかろう。論文には当たり前のことしか書かれていない気がした。でもわたしには到底真似できぬ。彼の「産み出す力」に感嘆した。
これでわたしの仕事は済んだ。返信の有無には期待しない。わたしは有名人が好きなだけだから。Ｍ先生の冷淡な感じは思い出になった。参考にしよう。何の？
そのあと、知り合った非有名人にいちいちご挨拶メールを送りまくる。１回作った文案を、フォーマットそのままでいけたらもっと楽なのに。そしてそっちの方（非有名人）ばっかりから返事は来る。
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