先に書いておきますが、私は「頒布規制の目的は支持するが、明確な基準なき頒布規制には反対」の立場です。
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さて、いかなる自由も公共の福祉に著しく反するのであれば権利として認めるべきではありません。だから「創作物に関する諸行為のどれがどれだけ公共の福祉に反するかあるいは反しないか」を具体的に考えなければなりません。
★表現の自由と公共の福祉
実写と異なりマンガ&アニメにおいては撮影対象となる青少年は実在しません(ただしモデルが実在する場合は実写に準ずるものとして考えます)。すなわち創作段階においては公共の福祉に反するとは言えませんので、公共の福祉を理由として表現の自由を制限するのは不当でしょう。「改正青少年健全育成条例」が創作そのものを禁じてないのは正当だと思います。
★頒布の自由と公共の福祉
頒布段階においては実写であろうとマンガ&アニメであろうと同じタイプの影響を及ぼします(実写の影響力の方がより大きいです)。この影響には「ガス抜きによって違法な性行為が減少するプラス面」と「偏った知識によって違法な性行為が増加するマイナス面」があります。このマイナス面は有意に大きいので、適切な頒布規制は正当だと思います。 < ついでに言えば、同様にプラス面も有意に大きいです。
青少年への頒布にはプラス面だけでなくマイナス面もあるのですから、利害調整によって規制範囲を具体的に定める必要があります(余談だけど、実写はより厳しく定めるべき)。もしも規制範囲を具体的に定められなければ、ザル法となるかあるいは過剰規制になるだけでなく将来の恣意的な運用を招きかねません。 < ちなみに、具体的基準はやや緩めに作成する必要があります。なぜならば、将来にこの基準を適正に緩めるのはあまりに困難だからです(要するに、ガス抜き効果を立証するのはあまりに困難だからです)。
★賛成者と反対者
この「青少年健全育成条例改正案」の賛成派は、現場の保護者や教育者だけではありません(もちろん彼らの中には彼らの利権のために賛成している人たちもいるでしょう。都知事さんはまた別の理由だろうけど)。彼らは「オタク」レッテルを利用して主権者や政治家に頒布規制をアピールしています。具体的なマイナス面しか想像できない主権者も少なからずいるでしょう。
一方、反対派は直接に経済的不利益を被るマンガ出版業界です。そして、出版業界が「改正案は頒布の規制ではなく表現の規制だ」と誇張して創作者らを煽る構図になってます。< だから創作者たちは実際の改正案の条文を読んで自分で判断しなければなりません。もちろん、読んだ上で頒布規制に反対するのは正当なことだと思いますし、具体的基準を定めて頒布規制に賛成するのも正当なことだと思います。
なお、賛成派も反対派も具体的基準を作成することには消極的でした。双方とも過剰に危機感を煽ることでそれぞれの支持者を得ていたからです。
結果的にザル法あるいは過剰規制のリスクだけでなく将来の恣意的運用を招きかねなくなったことは、すべての国民が覚悟しておくべきでしょう。
★明確な規制範囲はどのように決定できるか
「明確な規制範囲」は必ずしも条文の形にしなければならないものでもありません(というか、完全に条文で定義することなど不可能です)。だから、実例を示して「これはダメでこれはOK」のように示すしかないだろうと思います。< 「条文でないこと」で反対している人はそもそも条文化が可能か否かを考えるべき。
・情勢改正案の質問回答集
http://www.metro.tokyo.jp/INET/OSHIRASE/2010/04/20k4q500.htm
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次の日記に続きます。
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